( 327108 )  2025/09/25 05:23:27  
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ホール店員による情報漏洩への対応が厳しくなっている事情とは(イメージ。Getty Images) 

 

 多くのパチスロ機には、各台の出玉率を調整するための「設定」という機能がある。設定は最大6段階で、基本的に設定1が最も出玉率が低く、数字が大きくなるほど出玉率が高くなる。出玉率が高ければユーザーが勝つ可能性が高くなるので、多くのパチスロユーザーは設定6を探し当てようとして台選びをするわけだが、どの台にどの設定が入っているかは不明だ。ホール側は高設定台でユーザーに還元しつつ、低設定台で利益を確保するべく、より集客につながるような設定配分をしている。だからこそ設定情報はホールにおいてトップシークレットであるはずだが、その設定情報が漏洩する事件は少なくない。 

 

 今年9月、常連客にパチスロの設定情報を教えたとして、宮崎県内のパチンコ店従業員と常連客が不正競争防止法違反の疑いで逮捕された。容疑者が勤務するパチンコ店から警察に「従業員が客に設定情報を教えているかもしれない」と相談があり、事件が発覚したという。 

 

 また、今年7月にも北海道のパチスロ店において、元従業員が店の設定情報を常連客に漏らしたとして元従業員と常連客が不正競争防止法違反の疑いで逮捕されている。こちらも宮崎県の事件と同様、パチスロ店から警察に情報漏洩に関する相談があり、逮捕に至った。 

 

 パチスロの設定情報漏洩事件について、パチンコ・パチスロ事情に詳しいジャーナリストの藤井夏樹氏はこう話す。 

 

「ホールでのパチスロの設定情報を把握しているのは、当然ながら店長や副店長レベルなど従業員の中でもごく一部。一方で、ホールの店員が常連客に設定情報を教えるという事件は、以前からある話です。単純に店員が友人や知り合いに高設定台を教えていたというケースもあれば、“軍団”と呼ばれるプロ集団に設定情報を流し、その軍団から店員が報酬を受けるケースもあったようです。 

 

 パチスロの高設定台はユーザーへのサービスであり、集客のための“餌”でもあるので、その高設定台が情報を得た一部の人に占領されては、ホールとしては意味がない。だからこそ、ホールも高設定台を同じ客が打っていないか目を光らせており、不審な点があったら警察にも相談する流れです」 

 

 近年はホールの設定情報に対する扱いがよりいっそう厳しくなっているという。 

 

「20年ほど前はホール側が“イベント”として、設定を公開することもありました。私自身、朝イチから設定6の札が刺さっている台があったり、夕方になって店長が、店内アナウンスで高設定が入っている台を明かすイベントも体験したことがあります。ただ、現在は設定を明かすような行為は、射幸性を煽るということで禁止対象。ホール側が明確に設定配分に言及するようなイベントは基本的に行われていません。そもそも設定を開示すること自体がNGで、設定情報は極秘です。だからこそ、情報漏洩があった際はバレやすくなっているとも言えます」(藤井氏) 

 

 

 かつての“緩かった時代”、設定情報漏洩の現場にニアミスしたことがあるのは、都内に住む会社員のAさん(50代男性)。20年以上前の経験を振り返る。 

 

「まだ4号機と呼ばれるパチスロ機がホールでバリバリ稼働していた頃、当時よく通っていた飲み屋に、あるパチンコホールの店長もよく来ていたんです。ある日、その飲み屋の女性店員が、『あの店長から高設定台を教えてもらった』と言うんです。どうやら店長は、その女性店員がお気に入りだったらしい。ただ女性店員はパチスロ経験者といえども高設定台に目を輝かせるほどには興味はなかったようで、話はそれで終わりでしたが、今それがバレたら事件でしょうね」 

 

 神奈川県に住む自営業のBさん(40代男性)も似たようなエピソードを明かす。 

 

「20年ぐらい前は、ホールの店員さんのほうから『今日は調子どうですか?』と聞かれることもあったし、打っていると『その台、ずっと打ったほうがいいですよ』と、高設定だと示唆するようなことを言われたこともあります。 

 

 でも今は店員さんと仲良くなっても設定の話なんか絶対に教えてくれないし、こっちもそんなことは聞かない。ヘンな動きをして要注意客だと思われるのもイヤですからね。『店員と仲良くすればいいことがあるかも』なんてことを思っていた昔が懐かしい気もしますが、設定情報の漏洩が許されない今の方が、不公平がなくていいと思います」 

 

 パチンコ・パチスロ業界の“健全化”を進めるという意味でも、設定情報漏洩に対してはホール側としてもより厳しく対応していくことになりそうだと、前出の藤井氏は語る。 

 

「パチンコ・パチスロ業界は、歴史的に“緩い”部分が多かったのも事実で、“過剰に射幸性を煽るイベント”が行われていた時代もあった。しかしそんな業界に対して、管轄官庁である警察庁が厳しい目を向けている現実もあり、イベントの告知宣伝がかなり制限されるという展開もありました。 

 

 そうしたなかで、パチンコ・パチスロ業界は独自のイベントルールを作るなどして、積極的な健全化を図っています。その結果、警察庁からの信頼も回復し、広告宣伝の規制が緩和されました。そう考えると、ホール側が店員による情報漏洩などの不正を厳しく取り締まるのは、ホールの利益を守るだけでなく、業界の健全化アピールにも繋がります。健全化が進んでいけば、警察庁からの規制の緩和に繋がり、業界全体の利益にもなっていくでしょう。ホール側の従業員教育もより整備されるのではないかと思います」(藤井氏) 

 

 近年ユーザーの減少が深刻化しているパチンコ・パチスロ業界だが、健全化や規制緩和はユーザー回復にもつながっていくと見られている。情報漏えいの撲滅も、業界復活のために必要なことだといえそうだ。 

 

 

 
 

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