( 327133 ) 2025/09/25 05:51:56 0 00 「金銭絡み」のトラブルで退居を通告されるのはどんなケースか(イメージ)
住み慣れた家を離れ、老人ホームへの入居が決まった。だが「これで一安心」――と安堵するのは早計だ。終の棲家として選んだホームから突然「出て行ってください」と退去通告を言い渡される事例が頻発しているのだ。
自宅での生活が困難になり、介護施設への入居を検討する際、多くの人が第一選択肢とするのが有料老人ホームだ。
厚生労働省の調査によると、全国の有料老人ホーム施設数は1万6543棟(2023年6月末)。10年で約2倍に増えた。
自立生活が可能だったり、介護認定の結果、要支援または要介護度が低いケースでは「サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)」も視野に入るが、持病や認知症の進行が不安視される場合は24時間介護の「介護付き有料老人ホーム」(2023年6月末時点の施設数4464棟。厚労省調べ)への入居が現実的な選択肢となる。
だが、たとえ希望するホームに入居できても、そこが「終の棲家」になるとは限らない。
老人ホームアドバイザーの伊藤直剛氏(N-TAKE代表取締役社長)が言う。
「近年、施設側からの『退居通告』をめぐるトラブルは増加の一途を辿っています。主な原因は代金の未払いや滞納、他の入居者や職員とのトラブル、病気の悪化など。近年は『入居一時金』が不要の施設が増え、入居者の間口が広がったことも、トラブル増加の背景にあると考えられます」
未払いや滞納という「金銭絡み」のトラブルで退居を通告されるのはどんなケースか。
「毎月納める施設利用料の未納や滞納が数か月続けば、当然、退居通告の事由となります。何らかの理由で一時的に支払いが滞った場合は、施設との話し合いで延納や分割払いに応じてもらうことも考えられますが、意外とこじれがちなのが、『オプション費用』の支払いをめぐるケースです」
施設入居後は定額利用料のほか、日々の暮らしで生じる「雑費」が毎月の支払いに加算されるが、それがトラブルの火種になることがあるという。
「居室の電球交換や買い物の代行、病院への付き添いなどは介護保険外の『個別対応費用』として加算されますが、その請求内容に納得できず支払いを渋ったりすると、トラブルに発展して退居通告の事由となり得ます。
入居者の支出が伴うサービスは施設側が本人やご家族に説明し同意を得ることが前提ですが、確認が曖昧なまま想定以上の金額を請求され問題となることがあるようです」(同前)
そもそも料金の滞納やトラブルを理由に、施設側が入居者に対し「退居通告」を出すことは可能なのか。
介護施設でのトラブルに詳しい山田大仁弁護士(ひろむ法律事務所)はこう言う。
「老人ホームにおいても、入居者が契約内容を守らない(債務不履行の)場合、また特定の条件(契約解除事由)に該当する場合は、施設からの退居通告が可能です」
ただし、施設が強制的に退居手続き(自力執行)をできるわけではないという。
「介助や介護が必要な高齢の入居者を法律の建前や契約上の取り決めだけで強制的に退居させることは容易ではありません。ご家族の協力を得ながら自治体や他施設と連携し“ソフトランディング”させるのが現実的な解決策と考えます」(同前)
もし債務不履行を理由に退居を迫られたとしても、焦らず冷静な判断で話し合うのが得策だという。
関連記事《【トラブル急増】「老人ホームから出ていってください」料金滞納、病気の悪化、暴力、ハラスメント…施設側から退去通告される具体的なケースと対応方法》では、金銭絡み以外でも施設側から退去を求められるケースを紹介するとともに、その具体的な対応方法についても解説している。
※週刊ポスト2025年10月3日号
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