( 327368 )  2025/09/26 06:03:20  
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故人のスマホのロックを解除できないと、葬儀や相続手続きに支障を来す恐れがある(画像/merydolla/stock.adobe.com) 

 

 サブスクやスマホ、クラウドに個人の資産や思い出が集約される今、もしもの時に家族が困らない備えが不可欠。電子機器のロック解除や口座照会などを想定したパスワード共有やアカウントの無効化、預貯金口座の付番など“デジタル終活”の要点をわかりやすく解説する。 

 

※日経トレンディ2025年10月号より。詳しくは本誌参照 

 

 日常的に使っている動画配信や漫画読み放題などのサブスクサービス。もし、自分自身に病気や認知症、突然死など「万が一のこと」が起きた場合、契約はどうなるのだろうか。ほったらかしのまま契約が継続されれば、思わぬ“損”をしてしまうことにもつながりかねない。 

 

 そうした重要なアカウント情報やデータを生前整理しておく「デジタル終活」が注目されている。背景には「スマホなどのデジタル機器にユーザーの経済活動の記録が蓄積されていく一方で、本人の死後には残された家族がパスワードロックを解除できず、葬儀や相続手続きに必要な情報の確認が困難となるという現状がある」とデジタル終活に詳しい弁護士の伊勢田篤史氏は話す。 

 

 故人のスマホのロックを解除できない場合、例えばサブスクの利用状況についてはクレジットカードの決済履歴を一つ一つ調べて調査する必要がある。しかし、カード利用明細がペーパーレス化されたことで、遺族はカード会社に連絡して明細を取り寄せなければならなくなった。さらに、各種サブスクの解約手続きも一筋縄ではいかないことが多い。こうした多大な負担を遺族にかけないためにも、下で説明している「スマホのスペアキー」を用意しておくなど、ログインパスワードを家族に共有しておくべきだ。 

 

【準備1】スマホ・パソコン(難易度★) 

ログインパスワードを家族と共有 緊急時に自動通知するサービスも 

 

 残された遺族が故人のスマホにログインできるかどうかで、その後の情報収集の難易度は大きく変わる。ただ、パスワードを今すぐ教えるのも気が引ける。そんなときはパスワードをメモに書き出して修正テープで隠す「スマホのスペアキー」がお薦めだ。いざという時にパスワード情報を家族に通知するサービスもある。 

 

 

【準備2】サブスク(難易度★★) 

サブスク情報を家族に共有 パスワードノートを活用 

 

 動画配信などのサブスクやスマホの通信キャリアなど、料金を毎月支払っているサービスがある場合は、この機会にリストアップしておくべきだ。市販のパスワード管理ノートなどにまとめておけば、家族の役にも立つ。 

 

【準備3】Google(難易度★★) 

写真や連絡先を大事な家族にだけ残す 

 

 Googleの「アカウント無効化管理ツール」では、アカウントを利用していない状態が一定期間続いた場合に、「フォト」や「連絡先」などのデータを受け取る第三者を指定しておくことができる。アカウントが使用されていないと判断するまでの期間は3〜18カ月から選択可能。 

 

 銀行口座も再確認しておきたい。2018年に施行された「休眠預金等活用法」によって、10年以上放置していた預金は「休眠預金」として預金保険機構に移管され、民間公益活動の促進に活用されることになっている。ただし、休眠預金となった後も、取引のあった金融機関でいつでも引き出すことができるとされるが、やや手間が発生する可能性がある。 

 

 口座のお金を家族に引き継ぐためにも、利用している金融機関名のリストをまずは作っておきたい。 

 

【準備4】銀行(難易度★★★) 

マイナンバーと銀行をひも付け 遺族が口座を一括照会できる 

 

 マイナンバーと銀行口座をひも付ける「預貯金口座の付番」を行っておくと、遺族などの相続人が一つの銀行に問い合わせるだけで、すべての預貯金口座の一括照会ができるようになる。手続きは取引銀行の一つに申請するだけ。希望すればその場で他行の口座のひも付けも可能だ。マイナポータルからも申請できる。 

 

【準備5】データ(難易度★★) 

隠したいデータは暗号化して保存 

 

 見られたくないデータがあるなら、暗号化機能搭載のストレージを使うのも手。アイ・オー・データ機器の「SSPD-SUTCシリーズ」の場合、データの読み取りにパスワード入力が必須。“家庭内情報漏えい”を防げる。 

 

【準備6】ポイント(難易度★) 

ポイントは相続不可? 生前に使い切るのが吉 

 

 ポイントは規約にもよるが、相続できないものが多いためこまめに使い切っておきたい。例えばビックカメラのポイントは相続の対象外。ただ、ヨドバシカメラのポイントは遺族でも使える(合算は不可)。また、日本航空や全日空のマイルは「相続できる」と明記されている。 

 

 

■修正履歴 

公開時、「休眠預金」については、口座からの引き出しができないという表現を記載していましたが、正しくは取引のあった金融機関でいつでも引き出すことができます。お詫びして訂正いたします。本文は修正済みです。[2025/9/25 16:30] 

 

佐々木 淳之 

 

 

 
 

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