( 327603 ) 2025/09/27 05:55:53 0 00 外国人との共存はどうあるべきか(写真はイメージ/時事通信フォト)
昨年、日本人人口は90万8574人も減少した。とりわけ「東京一極集中」の対極にある地方の人口減少は、さらに加速する一方だ。人手不足がますます深刻になっている中で、「外国人の大規模受け入れ」に期待する声は大きい。しかし、その外国人政策が、結果的に地方をさらに疲弊させることになりかねない──。 話題書『縮んで勝つ』の著者・河合雅司氏が解説する。【前後編の後編。前編記事から読む】
* * * 外国人の実像を理解するには、地域偏在の実態も把握することが求められる。
総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(2025年1月1日現在)によれば、外国人住民が最も多い都道府県は東京都の72万1223人だ。次いで大阪府32万8128人、愛知県32万1905人、神奈川県28万4889人、埼玉県25万7656人、千葉県22万7013人などの順である。
反対に最も少ないのは、秋田県5753人である。鳥取県6005人、高知県6661人、青森県8415人、徳島県8769人などが続く。
地方自治体単位での最多は大阪市18万9281人。2位は横浜市12万6744人、3位は名古屋市10万502人と、人口規模の大きい政令指定都市が上位に並んでいる。前年比増加数の多さで見ても大阪市(1万9889人増)、横浜市(1万790人増)、名古屋市(7744人増)の順だ。東京23区の外国人住民数のトップ3は、新宿区4万8097人、江戸川区4万7932人、足立区4万3996人だ。
外国人住民の総数に占める割合も外国人住民数の多い都道府県が上位に登場する。最多は東京都の19.6%だ。外国人の5人に1人は東京都に住んでいるということである。続いて大阪府8.9%、愛知県8.8%、神奈川県7.8%、埼玉県7.0%、千葉県6.2%である。これら三大都市圏の主要6都府県だけで約6割を占める。
次に、各都道府県の住民総数に占める外国人住民の割合でランキングしてみると、東京都が5.2%でトップだ。東京都居住者の20人に1人は外国人となっているのである。東京都の場合、観光客も多く外国人の姿をたくさん見かけるが、住民として暮らしている人も少なくないのである。東京都に続いて外国人住民の割合が多いのが愛知県と群馬県の4.3%である。両県とも大規模な工場があり、そこで働く外国人が数字を押し上げている。
反対に、外国人の割合が最も低いのは、外国人住民数も全国で一番少ない秋田県で0.6%だ。次いで青森県0.7% 岩手県、高知県、山形県が1.0%である。「外国人住民はほぼいない」といった印象を受けるような小さな数字だが、これらの県に限ったことではない。多くの地方ではそれぞれの住民総数に占める外国人住民の割は低い。
地方の外国人住民がいかに少ないかをもう少し明確にすべく、東京都の外国人住民数72万1223人を「100」として計算してみると、秋田県の5753人というのは「0.8」でしかない。鳥取県も「0.8」、高知県は「0.9」だ。
これらが極端に小さい数字であることは、東京都とこれらの県の住民総数を比較すればさらに鮮明になる。今度は東京都の住民総数1400万2534人を「100」として人口比率を計算してみよう。住民総数が全国で最も少ない53万4003人の鳥取県は「3.8」だ。3番目に少ない66万4863人の高知県は「4.7」、90万7593人の秋田県は「6.5」で、外国人住民同士の比較の数値とは大きな開きがある。人口比率を加味して考えるならば、秋田県の場合には東京都の8分の1規模しか外国人住民がいないということである。
それでも日本全体としては外国人が急増しているので、全都道府県で外国人住民数は前年より増えている。秋田県は531人増、鳥取県496人増、高知県も695人増だ。そもそもの外国人住民の少なさを考えれば、これでも大きな数字ではあるのだが、東京都(7万3807人増)、大阪府(3万1549人増)などとは比べるまでもない。
ちなみに、東京都の場合、日本人を含む住民総数は前年より9万632人増え、一極集中が続いていることが示された。だが、日本人住民の増加数は1万6825人にとどまっており、人口を押し上げた要因の81.4%は外国人住民が増えたことによるものであった。
東京都以外で社会増加が多かったのは、大阪府(3万1444人増)、埼玉県(2万5705人増)、千葉県(2万5639人増)、神奈川県(2万3360人増)、愛知県(1万8128人増)などだ。外国人が大都市圏に流れ込んでいることを示している。
外国人の中には、来日前に住みたい場所を決めてくる人も少なくないだろう。他方、いったんは地方に住んでから東京都などの大都市に移り住む人もいる。ただ、来日目的の多くは就労だ。社会増加の多かった都道府県は、いずれも多くの企業が立地する人口集積地である。収入が高くて自分の条件に合った仕事を見つけやすく、暮らすのに便利な大都市を目指す人が多いというのは、外国人も日本人も同じである。
政府は、従来の技能実習制度に代えて2027年度にスタートさせる「育成就労」制度において、一定の条件を満たせば本人の意向で転職できるようにする。都市集中を回避すべく、三大都市圏の主たる都府県への受け入れに制限をかける予定だが、抜け道が完全にふさがれているわけではない。好条件の仕事を求める流れをコントロールすることは難しく、結局のところ外国人の大都市集中は進むこととなりそうだ。
集まるのは大都市だけでない。外国人の居住地を市区部と町村部に分けると、市区部が345万5772人、町村部は22万1691人で市区部が94.0%と圧倒的に多い。地方圏に暮らす外国人も、県庁所在地などそれぞれの地域の都市に集まる傾向にある。
外国人の大規模受け入れを地方の人口減少対策のように期待する声が少なからず見受けられるが、これらの数字を見る限り、そのハードルは高い。
それどころか、いまや地方圏の自治体や政令指定都市の近隣自治体には、外国人住民までが減少に転じているところがある。
地方の人口減少を改善し進行を遅らせる手立てというのは、安定した雇用が提供されることと、暮らすのに不便すぎないという2点である。ここが崩れてしまうと、国籍を問わず若い世代は定着しない。仮に、一時的に外国人居住者が増えることがあったとしても、住み続けるメリットを感じなくなった段階で他地域に流出してしまう可能性が大きい。
こうした点を改善することなく、地方自治体がいたずらに外国人の受け入れに邁進したとしても効果はさほど上がらないだろう。
外国人の大規模受け入れは、東京一極集中を加速させ、結果として地方をさらに疲弊させることになりかねない。
繰り返すが、外国人の大規模受け入れは、国の根幹を大きく変える。その影響で社会はどのように変わるのか。その変化とは国民が許容し得るレベルのことなのか。政府は国民に“判断材料”としての「日本の未来図」をしっかり提示する必要があろう。
外国人を大規模に受け入れなくとも、日本経済が成長し、社会を機能させ得る道は残っている。私はそれを「戦略的縮小」として提唱してきた。
外国人政策は、「縮んで勝つ」という“もう1つの選択肢”も排除せずに検討を進めなければならない。狭い視野で安易に判断を下せば、国の行く末を大きく誤ることとなる。
■前編記事から読む:日本全体の外国人割合は「3%」でも「20代は10人に1人が外国人」という真実 「特定技能2号」で永住者が増えれば外国人人口はさらに増加へ
【プロフィール】 河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。小学館新書『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題。
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