( 327813 ) 2025/09/28 05:15:57 0 00 10月4日投開票の自民党総裁選では、物価高対策が争点の一つとなっている。各候補は「給付付き税額控除」の導入のほか、「日本版ユニバーサル・クレジット」や「生活支援特別地方交付金」の創設などを掲げる。耳なじみのない政策が並ぶが、先行する諸外国では成果を上げているものもある。課題は物価高対策としての即効性や、導入にかかる時間やコストだ。
■課題は所得や資産の正確な把握
給付付き税額控除は、所得税から一定額を控除するとともに、所得が低く控除しきれない人には差額を給付する仕組みだ。例えば10万円を控除する場合、納税額が15万円の人は5万円になる。納税額が5万円の人は控除しきれないため、差額の5万円を受け取れる。
控除のみだと低所得者ほど減税の恩恵を受けにくくなるため、給付と組み合わせることで公平性を保つ。総裁選では、高市早苗前経済安全保障担当相が「対象を手当てすべき人に絞り資源を集中させることが大事だ」と主張している。
導入に向けては、所得や資産の正確な把握がネックとなる。源泉徴収票は年収500万円以下の場合、提出が不要であるなど、政府が全国民の所得を簡単かつ確実に把握できる手段はない。
旧民主党政権時代の平成24年にも導入が検討されたが、見送られた。マイナンバー制度の導入で公金受取口座の登録も進むが、口座数は6300万程度にとどまっている。
■インフラ整備に時間
林芳正官房長官が提案するのは「日本版ユニバーサル・クレジット」の創設だ。複数の給付制度や税額控除を一本化し、家族構成や所得に応じて適切な金額を算出した上で給付を行う給付付き税額控除に近い仕組みで、英国で導入されている。所得が変われば給付額も調整されるため、働く動機を保ちながら生活保障を実現できるとされる。
ただ、この仕組みも所得の把握が必要になるほか、給付のためのインフラ整備に時間がかかるという課題がある。林氏は「モデル世帯を抽出する」と述べ、早期導入が可能と説明している。
■自治体ごとの行政能力差がハードル
生活支援特別地方交付金の導入は「増税ゼロ」を掲げる茂木敏充前幹事長が提唱する。数兆円規模の交付金を地方自治体に配り、地域の実情に合わせて自由に使ってもらう制度で、公共料金の引き下げや学校給食費の補助に充てることなどが想定される。
茂木氏は「課題やニーズが(各地域で)異なる。自由に使えるような新しい交付金を創設するのが有効だ」とする。
一方、自治体ごとに行政能力に差があり、的確かつ迅速に物価高対策を実行できるかは不透明だ。同様の交付金は新型コロナウイルス禍の際も配られたが、新型コロナ対策の目的から逸脱した利用例が続出した。(根本和哉)
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