( 328288 )  2025/09/30 05:17:38  
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臨床心理士の涌井美和子さん=本人提供 

 

 職場で上司や同僚から「不機嫌」な態度をぶつけられ、嫌な思いをしている人は少なくありません。どの一線を越えるとハラスメントになるのでしょうか。企業へのハラスメント研修などを担当する臨床心理士の涌井美和子さんに聞きました。 

 

 モノに当たったり、わざとらしいため息が耳に入ったりすると、嫌ですよね。周りの人が嫌な思いをしているにもかかわらず、その行為を続けているのであれば、不機嫌ハラスメント(フキハラ)に当たる可能性があります。 

 

 特定の人に対してだけ常にムスッとした態度だったり、わざと気づかないふりをしたり。ほかの人には親切なのに、その人にだけ不親切にするといった行為も、該当すると思います。 

 

 攻撃的な感情やネガティブな感情は伝染しやすく、ハラスメント行為は周囲に広がっていく傾向があります。職場のチーム内に1人でも礼節にかけた人がいると、周りの人のモチベーションが下がったり、生産性が下がったりすることが論文でも報告されています。 

 

 海外の研究では、仕事の相手や利用者などからハラスメント被害に遭いやすい職場は、従業員の間でのハラスメントの発生率も高くなることが示されています。例えば学校や介護施設、レストランなどはその一例です。 

 

 こうした職場では、利用者やお客さんからイライラをぶつけられても、そのイライラを相手にぶつけ返すことができません。そのため不愉快な感情を、職場内部の弱い立場の人にぶつけがちです。 

 

 過去または現在に加害行為の被害を受けた人は、受けたことのない人に比べて加害者になる割合が高いという報告もあります。人間は傷つけられると、無自覚なまま、今度は自分がより弱い人に対して同じような行為をしてしまうのです。 

 

 フキハラの加害者は一言でいうと、精神的に幼いタイプだと言えそうです。「僕のことをわかって」「私はこんなにつらいの」ということをアピールして構って欲しい、だだっ子なのだと思います。 

 

 ただ最近、何でも「ハラスメント」と言われかねず、管理職側が萎縮してしまうという悩みもよく聞きます。コミュニケーションが取りにくくなり、それが不機嫌という形で出てしまうパターンもあります。 

 

 相談窓口を利用したり、同僚に相談したりして、まずは自分一人で抱え込まないことが大切です。同じように悩む仲間を見つけられれば、一緒に問題提起することもできます。 

 

 つらいと感じるなら、どんどん相談していいと思います。結果的にそれがフキハラとまではいかなくても、受け手にとっては不愉快でしんどいものですし、何らかの改善策が必要でしょう。(編集委員・岡崎明子、益田暢子) 

 

       ◇ 

 

 わくい・みわこ 臨床心理士、社会保険労務士、公認心理師、1級キャリアコンサルティング技能士。合同会社オフィスプリズム代表。著書に「職場のいじめとパワハラ防止のヒント」など。 

 

朝日新聞社 

 

 

 
 

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