( 328296 ) 2025/09/30 05:29:41 1 00 虎ノ門に韓国発のコーヒーチェーン「マンモスコーヒー」が2025年1月に開業し、好調な売上を記録している。 |
( 328298 ) 2025/09/30 05:29:41 0 00 虎ノ門に行列のできるカフェ
2025年1月、東京・虎ノ門に開業した韓国発のコーヒーチェーン「マンモスコーヒー」が好調だ。
広告を打たず、WebやSNSでの発信や口コミを中心に人気を集め、周辺エリアで働くビジネスパーソンが続々と訪れるようになった。ランチタイムには、テークアウト待ちの行列ができるほどの盛況ぶりだという。
同店の最大の特徴は、ブラジル産の厳選されたコーヒー豆を使用しながらも大容量・低価格で提供しているコスパの良さだ。1ミリリットル当たりの価格は、同じくテークアウト特化のコンビニカフェよりも大幅に安い(詳細はのちほど紹介)。
こうした差別化戦略が現代人のニーズにハマり、韓国では2012年の創業ながら約900店まで規模を拡大している。日本国内でも事業成長の可能性があるとみて開業したところ、期待以上の反響を得ているという。10月20日には、同じく虎ノ門に2号店の開業を予定している。
マンモスコーヒージャパンの金根佑(キム・グヌ)社長に、国内におけるマンモスコーヒーの成長戦略を取材した。
マンモスコーヒーは、韓国で2012年に創業した。当初は一般的なカフェ形態でスタートしたが、2016年以降、テークアウト特化の小型店「Mammoth Express(マンモス エクスプレス)」に事業モデルを転換。従来型の「マンモスコーヒー」と小型店の「マンモス エクスプレス」の2形態があるが、約900店舗のうち、ほとんどがエクスプレスだという。
「戦略的にエクスプレス形態を推進していますが、『小型化』を追求しているわけではありません。現在、エクスプレスは立地に合わせて店舗の広さや座席有無を柔軟に選択できるモデルへと進化しています。そのため、座席を備えたエクスプレスの店舗も多くあります」
韓国で人気を得た理由は、「コストパフォーマンス」と「スピード」だという。韓国のカフェ市場では、スターバックスのようなプレミアムブランドとマンモスコーヒーのような大容量・低価格ブランドの二極化が進んでいるが、「両者の品質面での差はほとんどない」と金社長は説明した。
「当社も含め、韓国における低価格帯のコーヒーブランドは規模の経済を確立し、高品質な原材料を安く仕入れる購買力を備えています。多くの消費者も、品質面ではプレミアムブランドとの差がほとんどないと理解しています。そのため、座席に座ってゆっくりしたい時には、広く快適な空間を提供するプレミアムブランドを選び、テークアウトしたい時には手頃な価格のブランドを選ぶのが合理的な行動になっています」
出店戦略では「流動人口(通行客)」よりも「定住人口(そのエリアに生活基盤を持つ人々)」を対象とした営業モデルに特化。流動人口よりも定住人口のほうがリピーターになりやすい傾向があるためだ。常連客を基盤にすることで顧客獲得コストを抑え、低価格ながら高品質のメリットを顧客に提供することを事業コンセプトにしているという。
韓国で順調に成長したマンモスコーヒーは、世界有数のコーヒー消費国であり、人口や市場の大きさに加え、韓国から物理的に近い利点を持つ日本市場に注目。市場調査を進める中で、事業拡大の可能性が見えてきたという。
「日本では、専門性のあるコーヒーを手頃な価格で、しかもテークアウトに特化して提供しているブランドはまだ多くないと感じました。韓国に比べてカフェの密度がそれほど高くない点も大きな魅力でした」
そうして、2025年1月、東京メトロ「虎ノ門駅」(B4出口)から徒歩1分の立地に路面店を開業。虎ノ門を選んだのは、純粋に自社のサービスや価格・品質が受け入れられるかを検証するためだ。観光客も多い渋谷や韓国ブランドが集まる新大久保などと比べて虎ノ門はノイズ(不要な情報)が少なく、サービスの本質に対するリアルな反応を得やすい立地だと考えたという。
メニューは韓国と同様ながらも、本国の約100種類から絞り込み、日本では約30種類を展開。韓国ではフードメニューも提供するが、日本ではドリンクのみとしている。
特徴的なのは、サイズ感と価格だ。サイズは「S:355」「M:470」「L:650」(ホットの場合、単位は全てミリリットル)と大容量で提供。コンビニカフェのSサイズは150~160ミリリットル、スターバックスのショートは約240ミリリットル(いずれもホット)で、他社と比較すると大容量が際立つ。
マンモスコーヒーのスタンダードメニュー「アメリカーノ」は、S:190円、M:250円、L:400円。計算すると、1ミリリットル当たりの単価はコンビニカフェの約半分、スターバックスの約3分の1だった。
コーヒー豆は主にブラジル産で高品質なものを使い、韓国同様に飲みやすく、均一な味わいを提供できるよう全自動コーヒーマシンを採用。豆を挽(ひ)く粒度や温度、抽出時間など詳細な設定が可能なため、高度な技術を持たないアルバイトスタッフでも、品質を安定して提供できるという。
約13坪の小規模な店舗には、セルフオーダー用マシンが2台設置され、顧客は店頭またはモバイルで注文できる。そのため、店頭スタッフは基本的にコーヒーを作って提供することに集中できるという。
こうした徹底した効率化により、品質を維持しつつ大容量・低価格での提供を実現している。
一定の需要は見込んでいたが、開業後は予想を上回る来客があった。
「開業から6カ月で累計10万杯の注文があり、現在は1日平均1000~1100杯の注文があります。特に出勤時間帯の午前8~9時台は順調に伸びており、最も忙しいランチタイム(12~13時)には、最大で1時間に312杯の注文がありました」
エリアの特性上、休日は閑散とするため平日のみ営業している。ランチタイムは5人体制でスピーディーに対応し、それ以外は2~3人で運営している。
人気メニューは韓国と同じく「アメリカーノ」が一番人気だが、「カフェラテ」の注文も目立ち、全体に占める比率は韓国の約2倍に達している。サイズは、Mを注文する人が最多だという。取材した午前中も続々とお客が訪れ、大ボリュームのLサイズを頼む人もチラホラ見かけた。
注文スタイルは、モバイルオーダーの利用率が急速に高まっており、決済比率はオープン初月の19%から直近では60%台に上昇。主要顧客は周辺で働くオフィスワーカーで、男女比率はやや女性が多いという。
「モバイルオーダー以外に店頭のセルフオーダーでもメンバーシップを使えるため、70~75%がリピーターだと認識しています。当社が掲げる『早く・手軽に・おいしい』を手頃な価格で提供するという価値は、お客さまにとって日常的かつ本質的なメリットになると考え、一定の支持を得られると想定していました。
一方で、日本進出前の市場調査段階では、街中でコーヒーを持ち歩く方の姿があまり多く見られず、テークアウト特化型のカフェが本当に受け入れられるのかという懸念がありました。現在の反響は、当初の予想を良い意味で裏切る結果でした」
1号店の反響から、10月20日には1号店から徒歩数分の場所に2号店を開業予定だ。基本的な客層は変わらない想定で、1号店までの距離や動線の関係で利用が難しかった人や、新規層の来店も見込んでいる。また、ランチタイム時の混雑緩和の狙いもある。
今後の戦略を尋ねると、「スピーディーに出店を拡大したい」と金氏は答えた。
「日本市場において、当社が提供したい本質的な価値が受け入れられることを1号店で確認できました。今後はサービス・品質・収益性を高めるための調整を進めながら、スピード感を持って出店を拡大していきます。人口規模や市場の大きさを踏まえ、日本には韓国以上の成長余地があると確信しており、『誰もが知るマンモスコーヒー』として定着するよう事業を推進していきます」
まずはオフィスワーカーの多いエリアに出店予定で、港区や中央区、新宿のビジネス街などを想定しているという。将来的には、韓国を超える1000店舗以上への拡大を目指しており、近い将来、フードメニューを提供する計画もあるそうだ。
マンモスコーヒーは、マンモス級の人気を獲得できるのか。
(小林香織、フリーランスライター)
ITmedia ビジネスオンライン
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