( 328758 ) 2025/10/02 05:03:13 0 00 店頭に並んだ宮崎県産コシヒカリの新米=7月31日、東京都小平市のいなげや花小金井駅前店
自民党総裁選(10月4日投開票)では、コメの価格高騰に不満を抱く消費者を意識し、5候補とも価格・供給を安定させる必要性を説く。
ただ、いずれも実現に向けた具体策を欠いている状況だ。党の支持基盤で、コメ余りによる米価の下落を警戒する農家への配慮からか、小泉進次郎農林水産相を除くほかの候補は、石破政権が宣言した「増産」の文言を封印している。
昨夏以降、店頭でのコメの極端な品薄で価格は歴史的な高値を記録し、「令和の米騒動」と言われた。農水省の要因検証では、訪日客の増加による需要の伸びに供給が不足していたことなどが判明。コメの需給を均衡に保って値崩れを防ぐ、長年の生産調整の限界があらわになった。
石破茂首相は8月、コメの増産に「かじを切る」と表明し、小泉氏も「これからは生産調整はしない」と述べ、農政の大転換を強調した。しかし、自民党内では「増産」という言葉が独り歩きし、生産過剰による米価急落を警戒する農家の離反を招くことへの懸念は根強い。来年度農林水産予算の概算要求の議論では、農林族議員らが反発し「増産」の文言削除を求める一幕もあった。
総裁選では党内事情を背景に各候補ともコメ政策は慎重な物言いに終始。小林鷹之元経済安全保障担当相は「大きな転換」を「しっかりと後押ししないといけない」と語る半面、「需要に応じた供給」の必要性を指摘。林芳正官房長官も「需要に応じた生産」を強調し、高市早苗前経済安保相は「精緻な需要予測に基づく生産」を訴えた。
茂木敏充前幹事長は、「需要に見合った生産量の拡大」と生産増には言及したが、「増産」の文言は避け、「生産者からすると、ころころと政策が変わっていくと安心して営農ができない」と配慮をにじませる。
現農水相である小泉氏は「石破政権から大改革を引き継ぐ」と言明。「意欲ある生産者の所得が確保され、不安なく増産に取り組めるセーフティーネットをつくる」と語るが、具体的な制度設計には踏み込まず、2027年度の水田政策の見直しに向け現場とコミュニケーションを取っていくと説明するだけだ。
需要ありきの生産に重きを置く4候補も「安定的に適切な価格で食べられることは大切だ」(茂木氏)などと消費者へのアピールにも躍起で、食料安全保障の観点から食料自給率の向上が重要と口をそろえる。
ただ、総裁選の終盤に入っても具体策を欠いたままでは、増産となれば生産性向上への投資判断を迫られる生産者も、コメの高止まりに苦しむ消費者も不安は募るばかりだ。各候補は農政の抜本改革にどう取り組むか丁寧に説明する必要がありそうだ。
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