( 328903 ) 2025/10/02 07:40:26 0 00 中国各地の学校で悪質ないじめが相次いで表面化し、社会問題化している。スマートフォンやSNSが普及し、集団で暴力を振るう動画が広まることで発覚するケースが目立つ。習近平(シージンピン)政権は社会不安の広がりを警戒している。(瀋陽支局 出水翔太朗)
中国広西チワン族自治区梧州の女子中学生が、平手打ちされる様子が収められた動画(中国のSNSより)
新学期が始まったばかりの9月5日、南部・広西チワン族自治区梧州の女子中学生が殴られる様子がインターネットで拡散した。四川省のネットメディア「紅星新聞」によると、複数の女子生徒が被害者の髪の毛を引っ張り、17回も平手打ちした。地元当局は、校長や副校長らを停職処分とし、いじめに加担した生徒9人に「矯正教育」を行うと発表し、幕引きを図った。
全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会は6月、学生によるいじめ行為を処罰対象とすることを明記した「治安管理処罰法」の改正案を可決。行政拘留処分の対象年齢を引き下げた。1年に2回以上違反した場合や悪質な場合は拘留対象とすることも盛り込んだ。
学校が重大ないじめに規定通り対処しなかった場合、関係者を処分することも明記した。中国中央テレビは「公安機関、教育部門、学校がともに行動を起こすことでいじめに対応し、学校の安全を維持する」とする見解を伝えた。改正法は来年1月に施行される。
当局の対策強化は、中国語でいじめを意味する言葉をSNSで検索すると関連ニュースや動画であふれるほど社会問題化している実態を受けたものだ。
香港紙・信報によると、四川省江油で7月下旬、14歳の少女が13~15歳の少女らに殴られ、服を脱がされた。両親に障害があり、いじめの対象だったという被害者は母親の障害者手当を加害者らに振り込むよう強要されたことも判明し、批判が相次いだ。
地元の公安当局は、加害者3人のうち2人を行政拘留や矯正教育処分とすると公表したが「処分が軽すぎる」と反発が広まり、大勢の住民が市政府などに押し寄せた。当局は治安要員を動員して鎮圧し、抗議活動の参加者は家畜運搬車で連行された。中国のネット上では抗議活動に関する動画は削除されている。「社会の安定」を重視する習政権は、政権批判につながる情報の拡散に神経をとがらせる。
中国の地方では長らく、保護者が出稼ぎで不在となった「留守児童」がいじめの加害者にも被害者にもなると指摘されてきた。中国共産党機関紙・人民日報系の雑誌「人民論壇」は2月、「留守児童は学校で頻繁にいじめに遭っている」と指摘した。
いじめを防ぐため、監視システムを活用した試みも出ている。福建省アモイの中学校では、「助けて」「殴らないで」といった被害者の声をAI(人工知能)が検知し、いじめの発生を迅速に把握するシステムを取り入れている。この中学校では、四つのキャンパスに3000個を超える検知装置を設置した。刑事事件に詳しい弁護士は、いじめの抑止に向けて「加害者が被害者に対し、賠償金を支払う制度を構築することも一案ではないか」と話す。
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