( 329073 )  2025/10/03 06:15:39  
00

「平成キャラ」の人気がここまで再燃している理由(左:筆者撮影、右:© 2025 SAN-X CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED. サンエックス提供) 

 

 平成時代(1989~2019年)のトレンドが今、熱狂的な消費を生み出している──「平成レトロブーム」「平成女児ブーム」などと呼ばれ、当時流行したファッションや文化、女児が夢中になったキャラクターなどの人気が再燃しているのだ。中でも、特に注目度が高いのが「キャラクター」だ。なぜ今、“平成キャラ”が令和の若者や大人たちを魅了するのか? 2000年代前半に大流行した「ナルミヤキャラクターズ」のリバイバルを仕掛けるナルミヤ・インターナショナル、「リラックマ」「たれぱんだ」など平成生まれの人気キャラの新展開を進めるサンエックスに取材し、ブームの裏側をひもとく。 

 

 1904年に呉服専門問屋として広島で創業したナルミヤ・インターナショナル(以下、ナルミヤ)は、新生児・ベビー・キッズからジュニアまで幅広い子ども服ブランドを手がける。 

 

 

 2000年代前半には、ジュニアアパレルブランド「エンジェルブルー」「メゾピアノ ジュニア」「ポンポネット ジュニア」「デイジーラヴァーズ」の人気キャラクターを活用したビジネスで急成長。百貨店内のショップを中心に売り場を広げ、2005年にジャスダック証券取引所(現・東京証券取引所)へ上場した。 

 

 しかし、キャラクターブームの失速に伴い、2010年に上場廃止へと追い込まれた。その後は、百貨店中心だったブランドをショッピングセンター向けに新展開するなど方針転換を図り、2018年に東証に再上場。2022年には、ワールドの子会社となっている。 

 

 そんな同社では、コロナ禍が到来した2020年3月に、ナルミヤキャラクターズをリバイバルとして展開。2019年4月に平成時代が終了し、「平成回顧」としてメディアやSNSで平成文化が多く取り上げられるようになったタイミングだった。 

 

「ベリエちゃんというキャラから展開を始めて、2020年にTwitter(現・X)のアカウントを開設したところ、急激に反応が増えました。当時は、『平成女児』といった言葉は使われておらず、平成のキャラに対して『エモい』といった表現がよく使われていましたね」(ナルミヤ・インターナショナル 新規事業開発部 次長/ナルミヤキャラクターズ&Berrie プロデューサー 漆畑祐樹氏) 

 

 

 その後、年2回ほどの頻度でキャラクター商品の新作を発売すると同時に、ライセンスを通じて商品ラインアップも拡大。その過程で、人気が上昇していったという。 

 

「認知度が一気に高まったのは、2025年2~3月にかけて実施したルミネエスト新宿でのポップアップショップです。アパレルアイテムやぬいぐるみ、ポーチ、ステッカー、スイーツ、文具などを展開しました。初日は10時30分オープンでしたが、大行列ができてしまい、開店前に打ち切りにさせていただいたほどの反響でした。想定以上の来店数で、同区画での売上額の最高記録となりました」(漆畑氏) 

 

 

 2025年9月11日には、同社の新業態となるキャラクターIPに特化したフラッグシップストア「NARUMIYA HAPPY PARK(ナルミヤ ハッピーパーク)」がルミネエスト新宿に開業した。 

 

 同店では、おなじみの「ナカムラくん」や「ベリエちゃん」などに加えて、新キャラの「ミミリーちゃん」も登場。ミミリーちゃんはナルミヤ ハッピーパーク限定のキャラで、全国でもここでしか買えない。その他の商品も、現時点では多くが同店限定となるそうだ。 

 

 

 売り場面積は10.7坪で、MD構成は雑貨9割、アパレル1割となる。コアターゲットは、子ども時代にナルミヤキャラクターズに慣れ親しんでいた20代後半~30代前半の女性だ。 

 

「商品開発で重要視したのは、『生活シーン』です。大人の女性が生活シーンで楽しむにあたり、自宅やオフィスで活用しやすい小物類を多く展開しています。象徴的なアイテムは『ぬいぐるみ』で、バッグにぬいぐるみを付けるという現代ニーズに沿うサイズ感や、現代のファッションに合うデザインを意識しました。お客さまからのリクエストが非常に多かった文具類も強化し、ポストカードやボールペン、クリアファイルなどを販売しています」(漆畑氏) 

 

 

 

 反響の大きさから、同店は開業から9月24日まで「事前予約制」に。全国から予約があり、最高で18倍の倍率になった枠もあったという。開業後は、想定どおり20代後半~30代前半が主な顧客層で、ぬいぐるみ全般が売れ行きが良いそうだ。 

 

 9月19日~10月5日までは、福岡PARCOで九州初の「ナルミヤキャラクターズ POP UP SHOP」も開催中だ。福岡でも一部の日程・時間で整理券を配布するなど、反響の良さがうかがえる。なぜ平成時代の人気キャラが、これほど注目されているのか。 

 

「裏を返すと新しい文化が生まれていないとも言えます。これは僕の解釈ですが、ブームに火を付けたのは当時を体感していない人々なのかなと。当時を知らないので平成カルチャーが目新しいものとして映り、一部の層が盛り上がった結果、ブームが幅広い層に広がり、『平成文化ってカッコいいよね』と再認識されたのかもしれません」(漆畑氏) 

 

 かつてと同様に、いずれ現代のキャラクターブームは失速するかもしれないが、「懸念はない」と漆畑氏は言う。 

 

「今のキャラブームは、コア層である20~30代の方のお子さんにも引き継がれていきます。加えて、僕の頭の中では新たなストーリーもすでに描き始めています」(漆畑氏) 

 

 

 1932年に創業したサンエックスもまた、平成時代に誕生した「リラックマ」「たれぱんだ」「アフロ犬」といったキャラのリバイバル商品を販売して人気を集めている。過去1000以上のキャラを生み出してきた同社では、「シュールな要素」が特徴だという。 

 

 

「かわいいだけじゃなく、ひねくれていたり、ネガティブな部分があったりすることで、多くの方に共感を得られる、思いに寄り添うようなキャラクターを描いています。当社では、キャラクター商品を企画・製造するメーカー事業とライセンスで商品展開するライセンスビジネス事業の2軸で運営しています」(サンエックス 広報担当者) 

 

 平成女児ブームについてたずねると、同社もその始まりは「2020年頃」だと認識しているという。 

 

「平成レトロといった切り口でメディアの問い合わせが増えてきたのが、2020年頃でした。ただ、それ以前から店頭では『シールバインダー』や『プロフィール帳』といった2000年代前半に流行った商品が注目されていて、売り場が構えられていました」(広報担当者) 

 

 同社では、2024年10月に2000年代初期に人気を博したキャラクター「たれぱんだ」「こげぱん」「アフロ犬」「にゃんにゃんにゃんこ」のリバイバル商品を発売。それらが好調であったことを受け、2025年4月にラインアップを追加した。 

 

 

「当時のイラストをそのまま使用して、当時流行していたアイテムを少し現代風に形を変えて発売しました。文具類、アクリルスタンド、ポーチ、ぬいぐるみなどを扱い、棚に並べたそばから売れていくような反響がありました。自社で開発した商品以外に、ライセンスで発売した商品もこの5年でかなり増えています」(広報担当者) 

 

 同社のメイン顧客も20代後半~30代の女性と、ナルミヤのファンと重なる。そのため、大人の女性が使いやすいようデザインを工夫している。たとえば、ボストン型ポーチはコスメなどを入れてカバンの中で使いやすいサイズに。ぬいぐるみはカバンにぶら下げやすいタイプもある。 

 

「当時、キャラに親しんでいた方は『なつかしい』という感情で手に取ってくださることが多いですね。『当時はお小遣いで買っていたので、あきらめたものがあるけれど、今はほしいものが買える』として、全種類をまとめ買いされる方もいます。逆に当時を知らない10~20代の方は、『平成レトロ感がかわいい』『お母さんが持っていた』という感じで、新鮮に映っているようです」(広報担当者) 

 

 

 2022年に創業90周年を迎えたサンエックスでは、記念イベントとして「サンエックス90周年 うちのコたちの大展覧会 たれぱんだ・リラックマ・すみっコぐらし~みんなの生まれたところの話~」を2022年~2024年まで全国的に開催。こちらも大きな反響を得たという。 

 

 続く展開として、2025年9月には新プロジェクト「サンエックスユニバース」が始動。新旧のキャラがそれぞれの垣根を越えて一緒に活動するもので、第1弾として9月から「森永ビスケット」とのコラボを実施、人気キャラクターがデザインされた「森永ビスケット」シリーズの商品が9月中旬から順次発売されている。10月には、同社初のトレーディングカードと関連アイテムの発売も予定されている。 

 

 

 グローバル展開でも、新たな動きが出ている。アジア各国や米国など海外でのポップアップショップや周遊ツアーでの人気を踏まえ、2025年3月には、韓国・ソウルのホンデ(弘大)に同社初の海外オフィシャルストア「Rilakkuma Sumikkogurashi PLUS by San-X」を開業。リラックマとすみっコぐらしだけでなく、同社のさまざまなキャラクター商品や韓国オフィシャルストア限定商品もそろえる。 

 

 韓国1号店は開業当初に行列ができるほどの繁盛ぶりで、その後も好調が続いているという。そうした状況から、早くも2025年9月25日に韓国・ソウル チャムシル・ロッテ百貨店内に2号店が誕生した。 

 

「顧客層は日本と同様に20代後半~30代の女性がメインです。ただ、1号店があるホンデは若者が集まるエリアですので、国内より若い層の方も来店されているかもしれません。リラックマやすみっコぐらしなど日本で人気のキャラは、韓国でも人気です。加えて、三日坊主で自分をつい甘やかしてしまう犬のキャラ『いしよわちゃん』の人気も海外で広がってきています」(広報担当者) 

 

 サンエックスでは、「引き続き平成レトロブーム」が続くと見込んでおり、勢いのある展開を続けていきたいと話す。 

 

「平成時代のキャラだけでなく、新旧のキャラを融合させたサンエックスユニバースも積極的に展開していきたいですね。近年は、商品化だけでなく『映像化』にも注力していて、すみっコぐらしの映画化やリラックマのアニメ化などを展開しています。映像化を通じて、より多くの方にキャラの魅力を届けられたらと考えています」(広報担当者) 

 

 2003年に誕生したリラックマは、2009年以降、15年連続で国内外の市場規模300億円以上を維持しているという。そうした安定した人気を誇るキャラと平成ブームで人気が再燃したキャラ、そして新キャラを融合させることで、さらなる話題化を目指していく。加えて、キャラを生かすあらゆるアプローチで、活躍の場を広げていく方針だ。 

 

執筆:小林 香織 

 

 

 
 

IMAGE