( 329256 ) 2025/10/04 04:52:13 1 00 10月4日に投開票される自民党総裁選では、小泉進次郎農水大臣が高市早苗元総務大臣に党員票で劣位に立つ可能性が高いとされているが、国会議員票での勝利を目指している。
小泉氏の陣営では木原氏が官房長官に就任する可能性が高く、これに対する不安が霞が関や維新からも指摘されており、特に維新は「木原だけはNG」と訴えている。 |
( 329258 ) 2025/10/04 04:52:13 0 00 集英社オンライン
10月4日に投開票が行われる自民党総裁選。いわゆる“ステマ”報道などによる大失速によって小泉進次郎農水大臣(44)は、党員票では高市早苗元総務大臣(64)の後塵を拝する可能性が高いとみられるが、小泉陣営は国会議員票で圧勝し、逃げ切るパターンを想定しているという。すでに小泉氏の周辺では政権の骨格人事の話題も上がっているといわれるが、そのなかで、もっとも懸念されているのが「あの男」の処遇だ。
今回の総裁選で、特徴的だったのは小泉氏が記者会見や討論会でひたすら「カンペ」を読み続けたことだろう。
先月20日の出馬表明会見では、質疑応答含めて1時間ほどの会見で、選択的夫婦別姓など持論をすべて封印した上に、手もとの紙を読むために500回以上も下を向いたことが話題になった。
その「カンペ」を書いているとされるのが木原誠二・自民党選挙対策委員長だ。党選対委員長といえば党四役といって、幹事長、政調会長、総務会長と並ぶ要職だ。
木原氏は旧岸田派に所属し、岸田政権を官房副長官として支えた。事実上、岸田政権の政策をすべて仕切っていたと言ってもいいだろう。
石破政権でも経済政策に弱い石破首相に代わって、政権の途中から経済政策を仕切りだした。岸田政権と石破政権の経済政策が「物価上昇を上回る実質賃金の上昇」など、うりふたつなのは、作者が同じだからだ。
そんな木原氏が石破政権の党四役だったにもかかわらず、今回の総裁選ではいち早く小泉陣営に駆けつけた。
財務省の官僚時代に面接担当者として採用した、後輩の村井英樹前官房副長官や小林史明元デジタル副大臣ら旧岸田派の中堅若手を引き連れての陣営入りだった。
木原氏が真っ先に小泉陣営に駆けつけたのは、同じ旧岸田派から総裁選に挑戦する林芳正官房長官と折り合いが悪いからという見立てもある。ただ、それだけではないようだ。陣営関係者はこう解説する。
「小泉さんは物価高など経済政策についてまったく自分の考えがない。木原さんや村井さんが言ったり、書いたりしたものをそのまま受け入れるから、木原さんにとって気分が良いのだろう」
木原氏は、東大から財務省、英国留学などを経て自民党から2005年に立候補して当選。財務省の同期には国民民主党代表の玉木雄一郎氏がいる。
永田町では、プライドが高く、自分の政策に異論を言われると極度に腹を立てたり、へそを曲げたりすることで有名だ。その点、異論などひと言も言わずに自分の政策をカンペに書いて話す小泉氏はやりやすいのだろう。
実際に小泉氏の会見を見ると分かりやすい。農水大臣として対応に追われた米問題については、前を向いて身ぶり手ぶり交えて話すが、物価高対策など経済関係の話になると一気に下を向く回数が増える。
そして「岸田政権の子育て政策で児童手当を拡充した」など、岸田政権の功績をひたすら繰り返す。もう誰が書いた「カンペ」を読んでいるのか一目瞭然だ。
陣営内では、小泉政権誕生の暁には木原氏は「官房長官」になるだろう、という見方が大勢だ。陣営の中堅もこう言う。
「木原さんはもうすでに官房長官気取りですよ。周囲に官房長官になって小泉さんを支えるんですよね、と言われると『俺がやらないとこの政権はもたないよ』なんて答えていました」
一方で、霞が関は「木原官房長官」に戦々恐々だ。木原氏と言えば、岸田政権で所得減税を提案した。岸田首相が「増税メガネ」などと揶揄(やゆ)されたため、「降りかかってくる火の粉を払う」といって、財務省などと調整もせずに、唐突に岸田首相に所得減税の実施を決めさせた。
「税収の上振れ分」をキャッシュバックする、などとうたった所得減税は、岸田首相も「減税を訴えて支持率が上がることはあっても下がることはないだろう」と乗り気になったものの、1年限りの減税にむしろしらけムードが漂って支持率の低下を招きその後の岸田政権失速のきっかけとなった。
石破政権でも参院選直前に、自民党が不評を買っていったんは取り下げた2万円の現金給付を木原氏が無理やり復活させた。これは同氏が公明党の支持母体の創価学会から強い意向を受けたためと言われるが、結果として、野党に大敗する主因になった。
選挙後の自民党の参院選総括では「現金給付が国民に受け入れられなかった」としている。その総括をまとめたのも選挙対策委員長だった木原氏なので、もはや自作自演のブラックジョークだ。
「安易な減税や現金給付を打ち出して、二つの政権が潰れるきっかけを作った張本人。そんな疫病神にとりつかれて進次郎も大変だ」
木原氏とも仕事をしたことがあるという財務省OBはそう言って嘆く。霞が関の財務や経産など経済官僚たちも「どんなむちゃぶりをしてくるか」と戦々恐々だ。
そして「木原官房長官だけは絶対にNG」というメッセージを小泉陣営に送り続けているのが日本維新の会だ。維新と言えば、小泉氏と吉村洋文代表が大阪万博の会場内を3時間ほど歩き回り、お互いを「改革意欲がある」と褒め合った。
藤田文武共同代表も「(小泉氏は)同世代で議員会館がご近所。とてもウマがあう」と周囲に語っている。さらに、小泉氏の後見人の菅元首相は松井一郎元代表をはじめ、馬場伸幸前代表、遠藤敬国会対策委員長ら維新に太いパイプを持つ。
ただ、そんな維新のなかでも、馬場氏や遠藤氏は「木原だけはあかん。あのうそつきが官房長官や政調会長をやるなら連立なんて組めるか」と強烈な木原アレルギーをみせる。
先月24日には菅氏と遠藤氏が国会周辺で会談し、遠藤氏は「木原だけはうちはだめですよ」と念をおしたと言われている。
維新の「木原だけは絶対にNG」は岸田政権時代にさかのぼる。2024年の通常国会で、岸田自民と維新は、維新が長年改革を訴えてきた調査研究広報滞在費(旧文通費)をめぐって交渉をした。
岸田政権は派閥の「裏金事件」を受けてつくった政治改革法案において維新の協力を得たかった。そのとき、政権側の交渉役は岸田首相の最側近の木原氏だった。
維新は歳費とは別に毎月100万円が国会議員に支給される旧文通費の改革を訴えていた。旧文通費は非課税だ。所得税もかからず100万円が毎月支給される。さらに使い道も公開しなくていい。
そのため、飲み食いに使っても何に使っても分からない不透明なお金のため、維新は橋下徹代表時代から改革を訴えてきた。
木原氏が仲介し、2024年の通常国会中に旧文通費の改革をするという約束で、維新は岸田政権の政治改革法案で賛成に回った。しかし、その後、約束はあっさり反故にされた。
それどころか、木原氏は「国会日程は国対が決める。自分の責任ではない」と謝るどころか開き直った。馬場氏や遠藤氏は「あいつは総理の名代といっていた、とんでもないうそつき野郎だ」と怒り心頭だった。
というのも、馬場氏も遠藤氏も党内で「自民にだまされた」と批判され、創設者の橋下氏もSNSなどで「永田町で飲み食い政治ばかりしているからだまされるんだ」と馬場氏を酷評した。その後の維新の支持率低下など凋落のきっかけともなった破談だった。
恥をかかされた馬場氏と遠藤氏にしてみれば、「木原だけは許せない」となるのも無理はない。後日、馬場氏が国会で木原氏を見かけて「おい、こら木原!」と怒鳴ったが、木原氏は携帯電話を耳に当てながらその場を立ち去ったという。
そんな木原氏が官房長官になれば、吉村代表や藤田共同代表が前のめりな小泉自民との連立政権交渉もすぐにとん挫する可能性もある。
だが、小泉氏は「まるで二人羽織を見せられているようだ」(陣営若手)というほど経済政策や公約面で「木原依存症」だ。陣営には斎藤健氏など有能な人材がいるが、小泉氏は木原氏を”切る”判断をできるだろうか。
官房長官は政権の要だ。第一次政権ではお友達の塩崎恭久氏を登用した安倍晋三氏。だが、小池百合子首相補佐官とケンカするなど首相官邸内が「学級崩壊」して政権はたった1年で崩壊した。
第二次安倍政権ではこわもての菅義偉氏を官房長官に起用し、政権の内外ににらみをきかせ7年半もの長期政権を築いた。その安倍氏は菅政権誕生の際に「菅政権には菅官房長官がいないのが弱点だね」と語っていた。安倍氏の予言通り、菅政権は1年で崩壊した。
政権運営は官房長官人事が左右するといっても過言ではない。一方で、小泉陣営に対しては「ステマ投稿」に加えて、文春オンラインが9月30日に「衝撃スクープ」第二弾を放った。
小泉氏の地元・神奈川県連で前回総裁選で高市氏を支持していたとみられる党員826人が本人の意思に関係なく勝手に離党させられていた、という報道だ。
神奈川9区(中山展宏前衆院議員、落選)の党員名簿のようだが、実際に筆者の知り合いの実家がこの選挙区で党員だったが「投票はがきが来ないと思っていたところ、知らないうちに離党させられていた」という。
おそらく、中山氏が支部長に選任されなかったので、中山氏経由で党員になった名簿が宙に浮いていたのだろうが、ステマ騒動の直後だけに、小泉氏に疑惑が向けられる。ましてや小泉氏は神奈川県連の会長だ。だが、小泉氏は抗議文を出して報道を否定している。
「そもそも私は、自民党神奈川県第9選挙区支部において起こった出来事については、今回初めて知ったところであり、全く関知しておりません。しかも、本件は、衆議院総選挙後の本年6月に自民党神奈川県第9選挙区支部において、支部長の衆院選落選に関連して起こったものです。これ自体参議院選挙以前の話であり、参院選の敗北等に伴う総裁選挙の開催に関連しようがない出来事です」
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