( 329321 )  2025/10/04 06:12:33  
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「FIRE(早期リタイア)」は近年注目されていますが、実際には親に不安を抱えさせるケースもあります。

60代の大橋和代さんは、息子の拓人さんが40歳でフリーランスとしてFIREを達成しましたが、実際には収入が不安定で、資産を取り崩すことに恐れを持つ事態に。

拓人さんが実家に戻ったことで家計にも影響が出て、家庭内での不安が増大しました。

 

 

FIRE成功者には「経済的自立」が不十分なまま早期退職する人も多く、4%ルールなどの理論に基づく計画が現実には通用しない場合があることが指摘されています。

資産を築いた後の生活設計が重要であり、自分のライフプランに合わせた資金計画が不可欠です。

人の人生に依存した場合、真の経済的自立とは言えず、「早期リタイア」とも言えません。

最後に、人生を豊かにするためにお金との付き合い方をじっくり考えることが求められています。

(要約)

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「FIRE(Financial Independent Retire Early)」という言葉が近年話題になっています。実際に若いうちにまとまった資産をつくり、仕事を早期リタイアする人も珍しくありません。しかし、FIREによって親の生活を不安にしてしまうことも……。 

 

65歳の主婦、大橋和代さん(仮名)は、夫と二人で質素ながらそれなりにゆとりを持った生活を送っていました。 

 

大橋さんには40歳になる息子の拓人さん(仮名)がいて、独身で地方のIT企業に勤めていましたが、5年前に「FIREを達成した」として会社を辞め、フリーランスとして生活していました。 

 

拓人さんは、新卒で地元のシステム会社に就職し、年収は600万円前後でしたが、これといった趣味もなく、物欲もなく、さほど生活費も必要なかったため、20代からコツコツと全世界株式型の投資信託で積立投資を続け、特に30歳を過ぎてからはNISAなども活用し40歳の時点で資産は6000万円に達していたのでした。 

 

「これだけあれば十分だろう……。フリーランスで仕事していけば十分生活できるだろう」 

 

そう考えた拓人さんは、会社を辞めたのでした。自宅でホームページ制作などの仕事をフリーランスとして受けながら、気ままな生活を送るはずでした。しかし、そんな拓人さんがある日実家に帰ってくることになりました。 

 

会社を辞めてからしばらくは順調でした。フリーランス向けの仕事マッチングアプリで、1件数万円の案件を月に数件受けることで、最低限の生活費はまかなえると思っていたそうです。 

 

しかし、実際に蓋を開けてみると、仕事は単価の低いものが多く、安定性もない。フリーランスの年収は200万円にも届かず、毎月の家賃と生活費で手一杯。資産6000万円を取り崩して生活する計画もありましたが、「資産が減るのが怖くて使えない」という状態になっていました。 

 

「お金がないとは言わない。でも、家にいさせてほしい」 

 

こうして、FIREしたはずの息子が、“子供部屋おじさん”として帰ってきました。 

 

 

実家に戻った拓人さんは、生活費を一切入れずに暮らしていました。パソコンで一日中作業し、夏、冬は冷暖房をつけっぱなしで、3食の食事は母親任せです。 

 

拓人さんが来てから、毎月の支出は大体5万円程度増えていました。年金とわずかな貯蓄で生活している高齢夫婦にとって、5万円は決して小さな額ではありません。 

 

和代さんが生活費の一部を出すよう頼んでも、拓人さんの答えはいつも同じでした。 

 

「今は資産を減らしたくない。フリーの仕事が増えたらちゃんと払うから」 

 

しかし、フリーの仕事が大きく増える兆しはなく、完全にリタイアできるほどの資産があるわけでもなく、働いて十分な収入を得ているわけでもない、まさに「FIREとは何だったのか」という状態になってしまっていました。 

 

そんな息子の将来と、自分達の老後の生活費を不安に思う日々が続いていたのでした。 

 

FIREを実践する人の中には「経済的自立」が不十分なまま退職をしてしまい、リタイア後の人生設計が甘い人も少なくはありません。 

 

よく「4%ルール」と呼ばれるものがありますが、これは毎年資産の4%を取り崩しても資産が30年持つという理論で、FIREを目指すための一つの指標としてよく紹介されています。しかし、これは理想的な成長率と物価の安定を前提としていて、現実の経済環境では通用しない場合もあります。 

 

たしかに、これまでの相場においてはインデックス投資を行っていればこの理論のようなことも可能でしたが、投資ですので予定していた利回りを実現できる保証などどこにもありません。 

 

また、資産が減少する局面で取り崩すと、その後の回復が難しくなり、心理的に使えなくなることも多いものです。 

 

こういった場合には、資産を取り崩さずとも毎年利子や分配金や配当といった形でインカムゲインを受け取れるような金融資産を活用し、生活設計を考えることもできます。 

 

資産を築いた後にどう生活していくか、自分のライフプランに照らし合わせて、しっかりと資金計画を立てることが不可欠です。 

 

 

今回はFIREした息子がきっかけで自分達の老後の不安を抱えることになった大橋さんの事例をお伝えしました。 

 

FIREに憧れる人も少なくはありませんが、実際にはFIRE後に拓人さんのようにお金の不安を抱えてしまい仕事に戻ったり、時間を持て余し仕事に戻ったりする人も少なくはないようです。 

 

そして、同居する家族がいる場合には、自分ひとりの問題では済みません。たとえFIREをしても、他人の人生に依存する形では「経済的自立」とは言えませんし「早期リタイア」もできていません。 

 

資産を多く持つことは本来自分の選択肢を広げ、安心してその後の人生を送ることができるものですが、自分がどういう人生を歩みたいのか、何のためのお金なのか、そしてそのための計画が曖昧だと上手く活かすことができなくなってしまいます。 

 

お金は人生を豊かにするための手段ですので、まずは自分にとってどんな人生が良いのか、そのためにどうお金を使っていくのか、じっくり考えてお金との付き合い方を考えてみましょう。 

 

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。 

 

小川 洋平(ファイナンシャルプランナー) 

 

 

 
 

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