( 329358 )  2025/10/04 06:47:43  
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EUGENE HOSHIKO-POOLーREUTERS 

 

自民党の総裁選が9月22日に告示となった。10月4日に行われる投開票で新しい総裁が決まる。 

 

今回の総裁選は自民党にとって危機的状況の中で行われていることもあり、どの候補も独自色をほとんど出さないという異例の展開となっている。逆に言えば、多くのイデオロギーを混在させ、党内で実質的な政権交代を実現することで権力を維持するという自民党のやり方が機能しなくなった現実を如実に示している。 

 

多くの人を驚かせたのは、高市早苗前経済安保担当大臣と小泉進次郎農水大臣の政策だろう。 

 

高市氏は安倍晋三元首相の後継者あるいは保守派を自認し、消費減税を強く訴え、日銀の金融正常化を批判してきた人物である。その高市氏が総裁選の公約として掲げたのは、リベラル色が極めて強く、かねてから立憲民主党が導入を求めてきた給付付き税額控除だった。 

 

そもそも石破政権が倒れるきっかけの1つとなったのは、給付か減税かの議論となった物価高対策である。石破政権は低所得者支援が重要であるとして給付にこだわり、これが一部の野党から猛反発を受けた。減税に言及しない石破茂氏に対しては党内からも批判の声が上がり、結果として石破氏の退陣につながったといえる。 

 

■高市氏も小泉氏も石破政権に近い政策に 

 

ところが、反石破の急先鋒と思われていた高市氏は、総裁選に出馬するや否や、低所得層には給付を実施するという立憲民主党に近い政策を採用すると表明し、多くの人を困惑させた。 

 

高市氏は持論の消費減税についても「時間がかかる」として当面の実施については封印。結果的には、自身が強く批判していた石破政権と近いスタンスになってしまった。 

 

一方、高市氏と並んで有力候補とされる小泉氏の政策も多くの国民を驚かせている。小泉氏は父親である小泉純一郎元首相の影響もあり、これまで一貫して改革を主張してきた。小泉氏を支持する国民が多いのは、改革の実施を期待しているからにほかならない。 

 

ところが小泉氏の公約は、2030年までに平均賃金を100万円増やす、防災庁を設置するなど、基本的に石破政権の政策を踏襲するものばかりで「改革」の二文字はほとんど見当たらない。 

 

ちなみに最新の消費者物価指数上昇率は2.7%となっており、平均年収を400万円とすると、物価に合わせて賃金が上がった場合、何もしなくても2030年には約470万円になる。小泉氏の公約では、物価を上回る賃金上昇分はわずか30万円にすぎず、これでは賃上げが実現したとは言わない。 

 

■党内政権交代の放棄で、自民党の存在意義が失われる 

 

石破政権の官房長官である林芳正氏が、石破路線を継承する公約を掲げることは自然なことだが、政権とは距離があると思われていた小林鷹之元経済安保担当大臣や茂木敏充前幹事長の公約にも際立った特徴は見当たらない。 

 

結局のところ自民党は政権の存続を最優先し、従来のお家芸であった党内での政権交代さえも放棄した状況といえる。 

 

少数与党として野党各党と連携しなければならない現状を考えた場合、政策を玉虫色にせざるを得ない面があるのは致し方ない。だが、党内政権交代を放棄するというのは、自民党が存在意義を失っていることと同義でもある。総裁選の結果と今後の国会運営次第では、日本政治の枠組みが大きく変わることになるかもしれない。 

 

 

 
 

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