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ファミリーマートのオリジナルアパレルブランド『コンビニエンスウェア』が急成長している理由は、緊急需要ではなくデイリーに使用できる商品を開発し、品質やデザインにこだわった点です。

特に、木村拓哉が着用した『ラインソックス』の成功を皮切りに、売上は毎年前年比130%以上の成長を記録しています。

店舗の陳列工夫や、試着なしでも買いやすいサイズ表記などの工夫も功を奏し、顧客の購買意欲を高めています。

今後は台湾を皮切りに海外展開も予定しています。

(要約)

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ファミマの『コンビニエンスウェア』大躍進の理由は? 

 

 まさに独り勝ち!  ファミリーマートのオリジナルアパレルブランド『コンビニエンスウェア』の快進撃が止まらない。 

 

 2021年3月のブランド発足以降、前年比売上130%超を毎年更新し続け、2024年度は年間売上130億円を突破。「試着できない」「パッケージを開けられない」といったデメリットをはねのけ、“緊急需要用”でしかなかったコンビニのアパレル商品を“長く着続けたい”ものに見事に昇華させた戦略とは──。 

 

 商品開発に関わる、ファミリーマート商品本部CW・雑貨部の須貝健彦氏に話を聞いた。 

 

■キムタクも着用のソックス、累計売上数2800万足 

 

 同社のコンビニエンスウェアを一躍有名にしたのが、ブランドのアイコン的存在ともいえる『ラインソックス』(390円/税抜)シリーズ。 

 

 コーポレートカラーを取り入れ、誰もがひと目見て「あ、ファミマだ!」とわかる秀逸なデザインは、アパレルブランド『FACETASM』を展開するファッションデザイナー・落合宏理氏によるもの。発売後まもなく、木村拓哉さんなど著名人らが着用してSNSで話題になり、たちまち人気に火がついた。 

 

 「ブランド立ち上げにあたり、最初に落合さんにデザインしていただいたのがこのソックスです。多くの店舗において、衣料品のコーナーは入り口近くに設置してありますので、お客様は入店してすぐ、この青と緑のソックスが目に入るはず。ライン幅は数ミリ単位までこだわっており、シンプルながら人の心を動かすデザインだと考えています」と須貝さん。 

 

 手ごろなおみやげとしてインバウンド需要も高く、ある店舗ではラインソックスを買い物かごいっぱいに詰め込む訪日外国人の姿も。あまりの売れ行きに、その後ローソンも自社カラーを配したラインソックスの販売を開始。これには、ファミマの社内も少々ざわついたとか。 

 

 ソックスはその後、黄色や赤などビビッドカラーを使った商品も人気を集め、累計売上数は今年8月時点で約2800万足にのぼる。注目すべきはソックスだけの一時的なヒットに終わらず、コンビニエンスウェアそのものが着実に業績を伸ばし続けている点だ。 

 

 「ブランド発足から5年目を迎えましたが、毎年、前年比売上130%以上を達成しています。新規顧客だけでは難しい数字ですので、リピーター増加の影響と見込んでいます。今年度の売上は過去最高の200億円を超える見込みです」(須貝さん・以下同) 

 

 

■“緊急需要”ではなく、デイリーに使える商品を 

 

 コンビニは店舗数が多いにもかかわらず、アパレル市場においては専門店に比べ圧倒的にシェアが低いことが長年の課題だった。下着類だけでもおよそ1.5兆円もの市場規模があるなか、コンビニ業界はずっと、急な出張や忘れものなど“緊急需要”に特化した商品展開を続けてきた。 

 

 「従来のままでは、衣料品コーナーに伸びしろは見いだせません。緊急のときだけではなく、デイリーに使えるアパレル商品を開発して、“コンビニで衣料品を買う”という新しい文化を作ること。それが、オリジナルアパレルブランド立ち上げの目的であり、最終目標でもあります」 

 

 そのためには、靴下、下着など一つひとつのアイテムをバラバラにブラッシュアップしていくのではなく、トータルのブランドとして認知度を高め、長期的な成長を狙う必要がある。そこで、ブランドのコンセプトを「いい素材、いい技術、いいデザイン。」とし、品質と価格、デザインが見合った商品づくりを始めることとなった。 

 

 「ソックスひとつとっても、実際に履いていただけるとわかりますが、これに穴をあけるには5年以上履き続けないと無理だろうと思うくらい(笑)、厚手で丈夫。スニーカーと相性抜群のクッション性も備えており、デザインだけでなく、素材や縫製技術にも確かな自信を持っています」 

 

 ファミリーマートの親会社は、繊維を祖業とする伊藤忠商事。現在も『ポール・スミス』や『ランバン』などのハイブランドから、『デサント』『コンバース』『フィラ』などのスポーツ・シューズブランドまで幅広く展開し、繊維分野では圧倒的な事業規模を誇る。 

 

 原料調達や生産にあたっては、その強みもじゅうぶんに生かされている。例えば、定番の『アウターTシャツ』(1355円/税抜)は、USAコットンを使った綿100%素材。しっかりとした生地感と縫製で、デザイン面では肩落ち具合、袖丈の長さにもこだわり、流行が続くビッグシルエットを意識した絶妙なサイズ感を実現している。 

 

 

 それでいて、税込価格は競合他社のひとつであるユニクロの「クルーネックT」と比べて10円安い。「だったら近くのファミマで」と、消費者の選択肢は当然広がるだろう。 

 

■見本品の展示でTシャツの売上が爆伸び 

 

 須貝さんによると、「今夏、『アウターTシャツ』の売上が飛躍的に伸びた」とのことだが、その要因のひとつに陳列の工夫もあるという。売り場面積が限られるコンビニで、思い切ってMサイズとLサイズのみ、見本品をハンガーにかけて消費者が手に取ることができるようにした。 

 

 「店舗ではSからXLまで4サイズを販売していますが、需要の多いMとLのサイズ感が把握できれば、他のサイズもおよその見当をつけていただけるだろうと考えました。肌ざわりや生地の厚みなど素材の確認をしていただけたことも、売上増加につながったと思います。 

 

 コンビニは大多数がフランチャイズ店のため、売り場展開を強制的に統一することは難しいのですが、Tシャツ陳列に関してはかなりの徹底度で多くの店舗さんが実行してくださいました。見本品の展示を始めてからは、特に女性の方からの購入の伸びが顕著でしたね」 

 

 Tシャツのヒットもあり、3月から7月の売上だけで前年比160%超を達成。これには、7月1日に初登場して3週間で完売した『コンビニサングラス』(2264円/税抜)も大きく貢献している。 

 

 開発に1年をかけたサングラスは、紫外線99%カットのUV仕様。定番のウェリントン型をベースとしたオリジナルデザインで、テンプル(つる)の内側にさりげなくあしらわれたファミマカラーに遊び心がうかがえる。 

 

 「想定のおよそ3倍の速さで売り切れました。9月中旬に数千個追加販売し、今月中にもまとまった数を納品予定です。夏に特に需要が伸びる商品ではありますが、高速道路のSA内の店舗や観光地などでは年間を通じて需要があるアイテムだと考えています」 

 

■「試着できない」は致命的なデメリット?  

 

 コンビニエンスウェアの好調を受け、ブランド発足当時、各店舗の売り場にひとつだった什器ラックは現在2〜3ラックまで拡大。インナーウェアやハンカチ等も含め、多岐にわたる商品が並べられている。クリアバッグにパッキングされ整然と並ぶカラフルな商品たちは、見る人にポップな印象を与え、購買欲をそそる。 

 

 「コカ・コーラ」「Netflix」「FUJI ROCK FESTIVAL」などさまざまなコンテンツとのコラボアイテムも人気で、「数量限定の商品をゲットすべく、複数の店舗を“はしご”するお客様もいらっしゃるほど。だいたい発売から1〜2週間で完売してしまうことが多いです」と須貝さん。 

 

 

 コンビニの平均客単価が1000円に満たないなか、ファミマで2000〜3000円の買い物をする客が増えた背景に、コンビニエンスウェアのヒットの後押しがあることは確実だ。 

 

 しかし、最近ではTシャツの一部を展示し始めたといえど、衣料品でありながら多くの商品は現物を広げて見ることができず、かつ試着もできないことは、致命的なデメリットにはならないのだろうか。 

 

 「アパレル専門店でも全ての方が必ず試着をするわけではなく、試着自体が面倒と感じている方は多くいらっしゃいます。試着をせずともサイズ感をつかんでいただけるよう、売り場のトップボード(POP)やパッケージに胸囲や身丈、身幅、袖丈などをわかりやすく表記するなどの工夫をしています。お客様の反応と売り上げの伸びを見ても、試着の有無はさほど重要ではないと考えています」 

 

 オンラインストアでのアパレル購入が当たり前となったいま、確かに試着はマストではないのかもしれない。特にデイリーウェアならなおさらだろう。それを裏づけるように、『ジョガーパンツ』(2719円/税抜)、『ショートパンツ』(1817円/税抜)、『ブラウェア』(2082円/税抜)など、購入にあたって試着の頻度が比較的高いと思われるアイテムも好調に推移しているという。 

 

 「特にショートパンツは、初年度は夏が来る前に売り切れてしまうほどの反響でした。SNSでは、さまざまなメーカーの定番アイテムを着比べてみた様子など、サイズ感の確認になるような投稿も多く見られます。試着ができずとも、そういった投稿を参考にされている方も多くいらっしゃるようです」 

 

■台湾を皮切りに、海外展開も加速予定 

 

 現在は約150種類までラインナップが広がり、全身コーディネートができるほどのアイテム数が揃う。2025年9月には、すべての商品を取り扱う初のサテライトショップを東京・芝浦にオープンし話題となったが、ここでもあえて試着室は設けていない。 

 

 「サテライトショップには全身鏡を置いています。試着室については議論になりましたが、あくまでも“コンビニで服を買う”ことがコンセプトのため、ここでもその方向性は貫いています」 

 

 

 
 

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