( 329561 )  2025/10/05 05:57:22  
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2025年10月から、生活保護の「生活扶助」が500円引き上げられることが決定されました。

これにより受給額が増加する見込みです。

生活保護は、最低限度の生活を保障するための制度で、生活扶助や住宅扶助などの8つの扶助があります。

受給には特定の要件を満たす必要があり、受給者は生活上の義務や報告の義務を遵守しなければなりません。

 

 

具体的な試算では、東京23区に居住する45歳の単身世帯では、生活扶助と住宅扶助を合わせて約13万1440円が支給されることになります。

ルールを守りながら、制度を活用する重要性が強調されており、生活に困窮したときの支えとなる制度の理解を深めることが重要です。

 

 

(要約)

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beauty-box/shutterstock.com 

 

2025年10月から、生活保護の扶助のひとつである「生活扶助」の加算額が引き上げられています。この改定により、若干ではありますがこれまでよりも受給額が増える見込みです。 

 

生活保護は、仕組みや受給額の算定の仕方が複雑な制度です。「実際の支給費はいくら?」「そもそもどういったルールがあるの?」と疑問を感じる人もいるでしょう。 

 

この記事では、生活保護の引き上げや受給額、受給者が守るべきルールを、元公務員の筆者が解説します。 

 

※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。 

 

生活保護制度は、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を促す制度です。生活に困窮する人に対して必要な保護をして、一時的に生活を支えます。 

 

保護費は、以下の8つから構成されています。 

 

 ・生活扶助:日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱費等) 

 ・住宅扶助:アパート等の家賃 

 ・教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費 

 ・医療扶助:医療サービスの費用 

 ・介護扶助:介護サービスの費用 

 ・出産扶助:出産費用 

 ・生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用 

 ・葬祭扶助:葬祭費用 

日常生活のさまざまなシーンを支えるために、複数の扶助が用意されています。 

 

保護を受けるには、以下4つの要件を満たさなければなりません。すべてを満たしてもなお生活費が足りない場合に、初めて保護を受けられます。 

 

 ・資産の活用:預貯金や生活に利用されていない土地・家屋などがあれば売却して生活費に充てること。 

 ・能力の活用:働ける場合は、能力に応じて労働すること。 

 ・あらゆるものの活用:年金や手当など他の制度で給付を受けられる際は、それらを優先して活用すること。 

 ・扶養義務者の扶養:親族などから援助を受けられる際は、援助を受けること。それでもなお収入が最低生活費に満たない場合は、保護を適用する。 

次章では、10月からの保護費の改定について解説します。 

 

 

2025年10月から、生活保護のうちの「生活扶助」が500円引き上げられます。この引き上げの詳細は、特例加算の引き上げです。現在、生活扶助は毎月1000円が「特例加算」として加算されています。この加算額が、2025年10月から1500円になるのです。 

 

加算額が引き上げられた理由は、物価の上昇です。8月の消費者物価指数は、基準点である2020年を100として112.1と、前年同月比で2.7%、前月比でも0.1%上昇しています。しかし、物価変動の影響を除いた実質賃金は△0.2%となっており、当初のプラスに転じる予想から一転、7ヵ月連続のマイナスとなっています。 

 

「生活保護費が支給されても物価が高く生活費が足りない」といった状況が懸念されるため、政府は特例加算を500円引き上げたのです。 

 

この引き上げは、2025年度と2026年度の2年間限定です。しかし、物価の状況次第では、措置が延長される可能性も考えられるでしょう。 

 

次章では、改定後の生活保護費を試算します。 

 

では、改定後の生活保護費はいくらになるのでしょうか。東京23区に住む45歳の単身世帯を例に、試算していきます。 

 

生活保護のなかでも受給する機会が多いのは、日常生活に対する扶助である「生活扶助」と家賃への扶助である「住宅扶助」の2つです。この記事では、生活扶助と住宅扶助の2つを計算してみましょう。 

 

生活扶助は、基準額や逓減率をもとに決定されます。基準額は地域ごとの物価や生活水準を反映した「級地」によって異なり、都市部ほど基準額が高くなっており、東京23区は1級地-1に該当します。 

 

まずは、生活扶助基準を計算してみましょう。計算結果は、以下のとおりです。 

 

 ・生活扶助基準=基準額(第1類)×逓減率+基準額(第2類)=4万6930円×1.0000+2万7790円=7万4720円 

ここに、特例加算1500円と、経過的加算として1520円が加わります。よって、生活扶助額は7万7740円です。 

 

住宅扶助も、級地によって支給額が変わります。都市部ほど支給額は高くなります。 

 

1級地の支給額は上限5万3700円です。家賃がこれより大きな金額であれば満額が支給され、5万3700円を下回る場合は家賃額相当の金額が支給されます。 

 

よって、今回の試算における保護費の合計額は以下のとおりです。 

 

 ・7万7740円+5万3700円=13万1440円 

約13万円が保護費として支給されます。 

 

次章では、受給者が守るべき生活保護のルールを解説します。 

 

 

受給者が守るべき生活保護の義務は、以下の3つです。 

 

 ・生活上の義務(生活保護法第60条) 

 ・届出の義務(生活保護法第61条) 

 ・指示等に従う義務(生活保護法第62条) 

生活上の義務は、生活保護の受給者が日常生活上で課せられる制限のようなものです。主な義務としては、以下のようなものが挙げられます。 

 

 ・能力に応じて働く 

 ・病気の治療を積極的に受けて治す努力をする 

 ・支給された保護費を節約しながら計画的に使う 

 ・生活費を浪費やギャンブルには使わない 

 ・借金や家賃・公共料金の滞納はしてはいけないなど 

これらを遵守できない場合、指導や指示が行われ、それでも改善が見られない場合は保護の変更・停止、場合によっては廃止(いわゆる生活保護の「打ち切り」)となる可能性があります。 

 

また、保護の受給中は収入を福祉事務所に毎月報告する義務を負います。給与のような労働収入のほか、年金、生命保険の給付金、仕送りといった働きによらない収入や資産状況に変動があった際も、必ず届け出なければなりません。収入の報告とあわせて、世帯状況が変化した場合も届出が必要です。届出がないと不正受給とみなされ、保護費の返還や保護の打ち切りといった措置が取られるため、注意しましょう。 

 

さらに、ケースワーカーの指示には原則従う必要があります。生活状況の確認や支援のために行われるケースワーカーの家庭訪問は、基本的に受け入れなければなりません。もしケースワーカーからなんらかの指導があった際は、素直にその指示に従う必要があります。ケースワーカーの指導を無視するようなことは、してはいけません。 

 

最悪の場合、告訴・告発対象となったり、詐欺罪により逮捕されるケースもあります。実際に、被害届の提出により不正受給者が逮捕されることもあります。ルールを守って、保護を受けるようにしてください。 

 

今回は、2025年10月から物価高に対応するため生活扶助の「特例加算」が500円引き上げられること、そして東京23区の単身世帯では最大約13万円が支給されるケースなど試算の一例をご紹介しました。 

 

生活保護は、健康で文化的な最低限度の生活を保障するためのセーフティーネットであり、日常生活、住居、医療など8つの扶助で成り立っています。受給には資産や能力の活用など4つの要件を満たす必要があり、また、受給中にはルールを守る義務が課されます。 

 

生活に困窮した際、このような公的な支援制度が存在することを知っているだけで、将来への不安は大きく軽減されるはずです。この機会に制度への理解を深めることが、あなた自身の暮らしと尊厳を守るための重要な一歩となるでしょう。 

 

 ・厚生労働省「生活保護制度」 

 ・厚生労働省「福岡大臣会見概要(財務大臣折衝後)」 

 ・厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和7年4月)」 

 ・総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)8月分」 

 ・厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和7年7月分結果確報」 

 ・e-Gov法令検索「生活保護法」 

 ・千葉市「生活保護で守っていただきたいこと〜 収入等の届出について 〜 」 

 

石上 ユウキ 

 

 

 
 

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