( 329813 )  2025/10/06 06:47:50  
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広島県廿日市市議会委員会で意見を述べた広島吉和の森ゴルフ倶楽部労働組合の松本真執行委員長(前列左)ら=同市(矢田幸己撮影) 

 

広島県廿日市(はつかいち)市のゴルフ場「広島吉和(よしわ)の森ゴルフ倶楽部」を大規模太陽光発電所(メガソーラー)に転用する計画を巡り、同倶楽部の労働組合など市民団体は、周辺地域の自然環境悪化が懸念されるとして、メガソーラーの設置を規制する条例制定を求める請願書を市議会に提出した。同倶楽部の運営会社が示す閉鎖時期が約2カ月後に迫る中、計画を頓挫に追い込みたい考えだが、議会側は民間同士の案件として、慎重を期す構え。現状認識のずれに市民側は落胆の色を隠さない。 

 

■「事実上の棚上げ」 

 

「市が土地の重要性を正しく認識し、事業者に『ノー』と言える強い権限が不可欠だ」 

 

9月18日、市議会委員会。請願審査に際し、労組の松本真執行委員長が意見陳述した。同倶楽部は広島西部の水源地に近く、太陽光パネルに含まれる有害物質流出による周辺地域の環境破壊が特に懸念されると訴えた。 

 

設置が市民生活に影響を及ぼしかねない中で、請願では、計画段階から市の許可や監視などを規定するよう求めている。設置反対のネット署名も3万筆を超えたが、議会側の反応は鈍いようだ。 

 

「制度の内容、メガソーラーの問題点、他の自治体の取り組み状況などを委員会として十分調査する必要がある」-。同日の委員会は継続審査を決定。市民らは「事実上の棚上げ」と受け止めた。 

 

ある委員は「条例がなければいけないのか。メガソーラー事業者との調和の図る条件ではいけないのか」と述べ、市民らの不興を買った。反対運動が動き始めて久しく、「認識違いもはなはだしい」(請願者に名を連ねた一人)というわけだ。 

 

v安全保障上の懸念 

 

運営会社は12月15日で閉鎖する方針を堅持しており、請願採択は同倶楽部の存続を意味しない。 

 

そこで、市民らは過去にさかのぼって見直しや規制の対象とすることを求めている。ただ、市側からすれば、今回の案件を狙い打ちするかのように受け止められかねず、検討の対象外という。 

 

メガソーラーへの転用を巡り、市民らの不安が拭えない理由の一つに、「外国資本」がある。同倶楽部の売却先は太陽光発電などを手がける福岡市の事業者。転売されれば、「顔の見えない」外国資本の手に渡る可能性も否定できない。 

 

 

実際に、中国に本社を置く上海電力系企業が山口県岩国市のメガソーラー事業者を買収したケースも。同市の沿岸部には海上自衛隊や在日米海兵隊が使用する岩国飛行場があり、安全保障上の懸念も指摘された。同市と隣接する廿日市市も米軍機の飛行ルートだ。広島県内を地盤とする保守系の国会議員も事態の推移を注視している。 

 

関係者によると、入手したメールの文面から、運営会社と事業者が市民らに計画を知られないよう秘密裏に動いていた形跡が確認できるという。 

 

労組としては、同倶楽部従業員の雇用にも関わるが、今は世論の後押しを得られるよう環境への影響に焦点を絞って訴えを続ける方針だ。(矢田幸己) 

 

事業用の太陽光発電施設の設置を規制する条例制定に乗り出す自治体が目立つ。広島県廿日市市議会へ提出された請願書の要旨によると、公布された条例は全国で315件ある(6月末現在)。 

 

県内でも、東広島市議会が6月、条例案を全会一致で可決。事業計画を市に届け出た上で、市と事前協議をしなければいけない、などと定めた。廿日市市の担当者は「他都市の事例を含め研究が必要。議決は年をまたぐのではないか」とみる。 

 

 

 
 

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