( 329918 )  2025/10/07 04:32:38  
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自民党の両院議員総会であいさつする高市早苗新総裁(4日、党本部で)=米山要撮影 

 

 近く首相に就任する見通しの高市早苗・自民党総裁は、党再生や物価高対策、外交・安全保障などの難題にどのように向き合うのか。高市体制の行方を展望する。 

 

 「私は、自民党の景色を少し変えることができるんじゃないかと思っている」 

 

 高市氏は4日、総裁就任の記者会見で、党運営を通じ国民の信頼を取り戻すことへの自信をにじませた。 

 

 第1回投票で党員・党友票の4割を集め、議員票も動かした。党内基盤が弱い高市氏の勝利は、「保守回帰」志向の強さの表れといえる。高市氏の松下政経塾の先輩で保守的な政治信条を共有する山田宏参院議員は記者団に「保守層が離れたことに対する危機感が集まった」と述べた。 

 

 高市氏は新進党などを経て1996年に自民に入党した。新進党に所属した野党幹部は「当時は今ほど保守的でなかった」と振り返る。転機は安倍晋三・元首相との出会いだ。目をかけられ、「随一の保守」との評価を確立していった。 

 

 9月29日、大阪市での総決起大会。高市氏は「安倍政権の時に投票してくれた方々を取り返せるのは私しかいない」と力を込め、安倍氏が亡くなった後に漂流する保守層を再結集させる決意を示した。 

 

 保守層が重視する首相就任時の靖国神社参拝について、今回選こそ明確にしなかったが、昨年の総裁選では明言していた。 

 

 今回選でアピールしたのが外国人政策だ。選挙中の演説で、奈良の鹿に触れ、「外国から来て、日本人が大切にしているものを痛めつけようとする人がいる」と主張し、「正義・不正義の感覚を逆なでするような事態が、外国人が増えて出てきている」と訴えた。 

 

 もっとも、保守的な言動が強硬になれば分断を生みかねない。4日に高市氏と会談した公明党の斉藤代表は「靖国参拝」「外国人との共生」などを懸念事項に挙げ、慎重な対応を促した。 

 

 高市氏も、多様な層を包摂する中道的な国民政党である重要性は認識しているとみられる。決選投票前の演説では「政治は国民のもの」とうたった1955年の立党宣言に「立ち返りましょう」と呼びかけた。 

 

 

 第1次政権が短命に終わった安倍氏は2012年の再登板以降は経済再生に力点を置き、人事を含めバランスの取れた政権運営に腐心した。高市氏は「安倍氏は内閣や党の陣立てに心を配られた。見習う点がある」と語る。 

 

 高市氏には、総裁選で激しく争った党をまとめ上げる人事が求められる。勝利の立役者となった麻生太郎最高顧問の意向はむげにできない。陣営には、派閥の政治資金パーティー券収入の政治資金収支報告書への不記載があった旧安倍派議員も多い。「論功行賞」に偏った陣容となれば、党内融和は遠のき、世論の支持を回復するのも難しくなる。 

 

 衆参両院で少数与党の苦境は変わらない。世論と党内、野党に目配りし、広く国民の声を受け止める保守政治を確立できるかが政権の命運を左右する。 

 

  (政治部 藤原健作) 

 

 

 
 

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