( 330018 )  2025/10/07 06:27:34  
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(※写真はイメージです/PIXTA) 

 

ライフスタイルの変化などにより夫婦共働き世帯が増加している一方で、厚生労働省「就業構造基本調査」によると、夫のみが働き、妻が専業主婦という世帯も依然として約3割を占めています。こうした場合、「家計管理の仕方」が離婚の引き金になるケースも少なくありません。ある夫婦の事例をもとに、家計管理における注意点についてみていきましょう。 

 

「妻を信じていたのですが、もう、無理かもしれません…」 

 

そういって大きなため息をつくのは、三宅友晴さん(仮名・30歳)です。友晴さんは、大学卒業後、中堅企業に入社。その後、気鋭のベンチャー企業に転職しました。現在は部下を複数持つ管理職です。仕事は非常にハードですが、年俸は同世代よりかなり高く、やりがいを持って働いています。しかし、転職当初は大きなチャレンジでした。 

 

大学時代のアルバイト先の同僚だった妻のさくらさん(仮名・29歳)とは結婚6年目。さくらさんは結婚後、家庭と仕事の両立が難しくなり、心配した友晴さんの希望で専業主婦になりました。いまは超多忙な友晴さんを支えています。 

 

友晴さんは4年前の転職時に、さくらさんに次のようなお願いをしました。 

 

「仕事が忙しくなるから、家のことにいろいろ手が回らず、負担をかけてしまうかもしれない。申し訳ないが、家計はさくらが管理してくれないか?」 

 

当時の友晴さんの給料は、残業などで上下があるものの、月の手取りで60万円程度でした。そして、その後順調に増えていきました。 

 

友晴さんは新しい環境で仕事に熱中し、馬車馬のように働きました。出張から戻ってすぐに別のエリアに出張することもあるなど、とても過酷な状況もありました。そんな中、友晴さんは過労で倒れてしまったのです。 

 

幸い、まだ若い友晴さんは、数日の入院後、問題なく退院しました。しかし、もし自分に万が一のことがあったら…と、不安になったのでした。 

 

「さくらちゃん、相談があるんだけど…」 

 

自宅に戻った友晴さんは、さくらさんに声を掛けました。 

 

「家のこと、任せっぱなしにしているけれどさ。いま、いくらぐらい貯金がある?」 

 

「え…?」 

 

さくらさんは口ごもりました。 

 

「ざっくりとでいいから」 

 

「すぐにはよくわからないから、確認して、あとで教える…」 

 

友晴さんは「ははーん。いろいろ贅沢してるんだな?」といって、笑いながらさくらさんの顔を覗き込むと、さくらさんは目を伏せました。 

 

「別にいいんだよ、いつも家のことをしっかりやってくれて、感謝してる。さくらちゃんだって、たまには気晴らししたいだろう? そんなことはわかってるから、ちょっと見せてよ〜」 

 

冗談っぽく迫る友晴さんに、さくらさんはなお抵抗します。 

 

友晴さんもさすがに真顔になりました。 

 

「僕に万が一のことがあったら、困るのはさくらなんだよ?」 

 

そういって詰め寄ると、さくらさんは震えながらスマホの画面を見せました。 

 

「えっ…!」 

 

 

友晴さんの目に飛び込んできたのは、残高が1ケタ万円の表示でした。 

 

「…これが全部じゃないよね?」 

 

震え声で友晴さんが問いかけると、さくらさんはシクシク泣き始めました。 

 

「これで全部…」 

 

泣きじゃくるさくらさんから聞いた話によると、毎日の買い物で、いつの間にかお金がなくなってしまう、というのです。クレジットカードを確認すると、美容院や化粧品といった、比較的高額でわかりやすいもののほか、数百円、数千円といった細かい買い物の記録がビッシリ並んでいます。 

 

コンビニ・百貨店・タクシーアプリ・Amazon・コンビニ・スーパーマーケット… 

 

友晴さんが「これはなに? これは…?」とひとつひとつ尋ねても、涙目で「なにに使ったか、わからない」といって首を振るばかりです。 

 

そしておしまいには、 

 

「覚えていないんだから、しょうがないじゃない!」 

 

と、逆ギレしてしまいました。 

 

「僕、あの会社で順調に出世して、給料も順調に増えてるんですよ。専業主婦が1人、そんなにお金を使うものでしょうか?」 

 

「お金の使い方に細かく口をはさむと、信頼関係が損なわれるんじゃないかと…。だから、なかなか言い出せなかったんです。でも、それが失敗の原因でした」 

 

友晴さんは、今後の話し合い次第では、離婚も視野に入っているだろうと語ります。 

 

裁判所「令和6年司法統計年報」によると、令和6年に裁判所が取り扱った離婚申立ての動機で最も多かったのは、男女それぞれ上から順に下記のとおりです。 

 

 

 

〈申立人:夫〉 

 

第1位:性格が合わない(約60%) 

 

第2位:異性関係(約12%) 

 

第3位:浪費する(約11%) 

 

第4位:性的不調和(約11%) 

 

第5位:暴力を振るう(約9%) 

 

第6位:病気(約4%) 

 

第7位:酒を飲み過ぎる(約2%) 

 

※ 総数:1万5,396件 

 

〈申立人:妻〉 

 

第1位:性格が合わない(約38%) 

 

第2位:暴力を振るう(約18%) 

 

第3位:異性関係(約13%) 

 

第4位:浪費する(約9%) 

 

第5位:性的不調和(約7%) 

 

第6位:酒を飲み過ぎる(約6%) 

 

第7位:病気(約2%) 

 

※ 総数:4万3,033件 

 

男女ともに、離婚理由としてもっとも多いのは「性格が合わない(性格の不一致)」ですが、「浪費する」も夫3位・妻4位となり、結婚相手の金銭感覚の違いが離婚につながっていることがわかります。 

 

浪費や金銭感覚のズレは、感情的な衝突だけでなく、子どもの教育や将来設計にも深刻な影響を及ぼします。とくに30代での離婚は、子育てや住宅ローン、キャリア形成など、人生の基盤が揺らぎやすい時期に重なるため、精神的・経済的な負担が大きくなりがちです。また、さくらさんのように長年専業主婦だった場合、再就職には年齢やブランクの壁が立ちはだかります。 

 

「任せる」という言葉には、信頼と責任が伴うことを忘れてはいけません。また、たとえ激務であっても、あるいは仲がよくても、定期的に夫婦間でコミュニケーションをとり、お金の使い方に向き合う時間をとる必要がありそうです。 

 

 

 

〈参照〉 

 

■裁判所「令和6年司法統計年報 家事編(p36第19表)」 

 

(https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/toukei/toukei-pdf-12787.pdf) 

 

THE GOLD ONLINE編集部 

 

 

 
 

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