( 330718 ) 2025/10/10 05:12:52 0 00 Palestinians inspect the damage to a building following an Israeli air strike in Gaza City in September.
(ブルームバーグ): イスラエルのハスケル外務副大臣は9日、ブルームバーグテレビジョンに対し、停戦は同日時点で発効していると述べた。
イスラエルとイスラム組織ハマスは、パレスチナ自治区ガザでハマスが拘束している人質全員の解放の条件を巡り、合意に達した。2年に及ぶ戦争の終結に向け、米国とカタールが仲介してきた交渉において大きな前進となる。
トランプ米大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で「イスラエルとハマスの双方が、われわれの和平計画の第1段階に署名したことを誇りを持って発表する」と述べた。また、「これは全ての人質が間もなく解放され、イスラエルが合意されたラインまで部隊を撤退させることを意味する。強固で永続的な平和への第一歩となる」と強調した。
その後、イスラエル、ハマス、カタールも、人質解放を巡る合意が成立したことを確認した。
9日朝、人質解放を求めるイスラエル市民が集まるテルアビブの広場では、人質の引き渡しを見守ろうと人々が集まり始めた。目撃者によると、ガザ中部のデイル・アル・バラでも合意を祝う様子が見られた。
匿名を希望するイスラエルの当局者によると、停戦の計画は現地時間の正午に始まり、軍はその後24時間以内に配備位置からの撤収を開始する。イスラエルは安全保障内閣閣議を午後5時に招集し、その直後に全体での閣議を開き、合意を正式承認する見通しだ。
イスラエルの株式指標は9日、世界で2番目に大きな上昇率を記録した。投資家が同国のリスクプレミアムを引き下げたため、通貨シェケルとドル建て国債も、新興国市場で最も上昇した。シェケルは3年ぶりの高値を付けた。
中東訪問の可能性
合意によると、ハマスは2023年10月の攻撃で拉致した約20人の生存者を解放し、拘束中に死亡した20人余りの遺体も返還する。イスラエル側は約2000人のパレスチナ人収監者を釈放するとともに、部隊の移動と同時にガザへの支援を再開する見通しだ。
トランプ氏はFOXニュースのインタビューで、人質は「おそらく」13日に解放されるとの見通しを示した。
今回の合意は、23年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃で始まった2年に及ぶ戦争の終結に向けた大きな一歩になると同時に、トランプ氏にとっても大きな外交的成果となる見込み。トランプ氏は先週、20項目から成る和平案を発表しており、合意を祝うために中東への訪問を検討していると見受けられる。
トランプ氏は8日、記者団に対し、おそらく11日か12日に中東を訪問する可能性があると指摘。「おそらくエジプトを訪れる」とし、「人質が解放される前か、その直後かもしれない」と話していた。
一方、8日夜に行われた米メディア、アクシオスのバラク・ラビド記者とのインタビューでは、イスラエル訪問の可能性にも言及し、イスラエル国会で演説する案が浮上していると明らかにした。
第1段階
ハマスは「ガザでの戦争を終結させ、占領軍の撤退、支援物資の搬入許可、人質・収監者交換」を実現する内容の合意に達したと確認する声明を、SNSのテレグラムに投稿した。
声明ではカタール、エジプト、トルコによる仲介努力に謝意を示すとともに、「トランプ米大統領の努力」を評価するとし、これまでのトーンを一変させた。また、トランプ氏や他の関係者に対し、イスラエルに合意の条件を順守させるよう要請するとともに、「自由と独立、自決権が達成されるまで、人々の民族的権利を放棄することはない」と強調した。
イスラエルのネタニヤフ首相はX(旧ツイッター)に「イスラエルにとって素晴らしい日だ。全能の神の助けを得て、われわれは全ての目標を達成し、隣国との平和を拡大していく」と投稿した。
カタール外務省は別の声明で、「ガザ停戦合意の第1段階における全ての条項と実施メカニズム」について合意に達したと発表。双方の収監者と人質の解放、支援再開が実現するとした上で、詳細は後日公表するとした。
次の段階
今回の合意は、トランプ氏の和平案を受け、エジプト紅海沿岸のリゾート地シャルムエルシェイクで行われた協議の中でまとまった。もっとも、ハマスの武装解除などを巡り双方の立場には大きな隔たりがあり、今後も複雑な要素を巡って調整を要するとみられる。
トランプ氏の顧問で娘婿のジャレッド・クシュナー氏と米国のウィトコフ中東担当特使がエジプトに滞在し、交渉の仲介役を務めた。
ハマスは23年10月7日の攻撃で約250人を拉致し、ガザでの戦争のきっかけとなった。人質の多くはこれまでの停戦合意の中で解放されたが、イスラエル国内では残された人質の行方が問題になっており、家族らはトランプ氏やバイデン前大統領に働きかけ、救出への介入を求めてきた。
一方で、釈放対象となるパレスチナ人収監者の確定には、時間がかかる可能性がある。ネタニヤフ氏率いる宗教右派政権は、自爆攻撃の首謀者や23年10月7日の襲撃に加わった者の釈放に強く反対するとみられている。
トランプ氏が提示した計画では、ハマスが武装解除と引き換えに恩赦を受け、トランプ氏がトップを務める「平和評議会」の下でパレスチナ人による暫定政権を樹立し、ハマスに代わってガザを統治する構想が描かれている。ハマスはこれまで一貫して武装解除を拒否し、外国によるガザ統治も受け入れていない。
一方、イスラエルは戦争後のガザ統治に国際社会が支援するパレスチナ自治政府が関与することを拒否している。トランプ氏は改革後のパレスチナ自治政府がガザを引き継ぐことを提案している。
この戦争は23年10月7日、ハマスがイスラエル南部への攻撃を仕掛けたことから始まった。この攻撃で1200人が死亡した。ハマスが運営する保健省によると、その後の戦闘で、ガザでは6万7000人以上が死亡している。ガザでの戦闘によるイスラエル軍の死者は、約450人に上る。
国連の支援を受けた調査委員会は、イスラエルがジェノサイド(集団虐殺)を行っていると指摘しているが、ネタニヤフ政権はこれを否定している。また、国連の支援を受ける監視機関は、ガザ地区の一部で飢饉が発生していると宣言した。
原題:Israel, Hamas Reach Deal to Free Hostages in Gaza Milestone (2)(抜粋)
(c)2025 Bloomberg L.P.
Dan Williams, Jennifer A Dlouhy
|
![]() |