( 330758 ) 2025/10/10 06:00:12 0 00 三菱地所が、ワーケーション事業から撤退する。
出社回帰が進むなかで、新型コロナウイルス禍に一時的なブームを迎えた「ワーケーション」に変化の兆しが見えている。三菱地所は、自社ウェブサイト上でワーケーション事業からの撤退を発表した。
「三菱地所のWORK×ation Siteは2025年11月14日をもって営業を終了いたします。長らくのご愛顧、誠にありがとうございました」
三菱地所が手がけるワーケーション事業「WORK×ation Site」の公式サイトには、10月9日までにこんな告知文が掲載された。
同社は2018年8月、和歌山県白浜町で企業向けワーケーション事業をスタート。自社が借り上げたオフィスを、三菱地所のテナント企業などが研修や合宿に利用できる仕組みで、白浜を皮切りに全国6拠点に展開してきた。
しかし2025年に入り、南紀白浜(和歌山県)と伊豆下田(静岡県)の施設が相次いで営業を終了。最終的には、すべての拠点を閉じることが決まった。
三菱地所広報はBusiness Insider Japanの取材に対し、次のようにコメントしている。
「事業開始時と比較し、企業側の利用ニーズの減少や市場動向等を勘案し、営業を終了する判断に至りました。企業の利用ニーズの減少は、コロナ後、オフィスとリモートのハイブリッドワークが定着し、各社が自社の業態や企業文化に即した働き方を確立した結果ととらえています」
コロナ禍で脚光を浴びた「ワーケーション」だが、出社回帰やハイブリッド勤務の定着を経て、その位置づけは見直しの局面を迎えている。
早くからワーケーションに着目していた和歌山県でも、様相が変わりつつある。ワーケーション対応の施設や企業のサテライトオフィス向け物件などがある和歌山県白浜町の担当者は、次のように話す。
「ワーケーションに特化した施策はいま考えていません。もともとIT企業のサテライトオフィス誘致を進めていましたが、出社回帰の流れが向かい風になっている。現在は、より広く観光全体のあり方を見直す時期だと考えています」
一方で、地方で事業を続ける動きもある。
たとえば岩手県釜石市では、日鉄興和不動産とオカムラが、行政や地域の滞在設計を手がけるかまいしDMCとともに、地域資源を生かした研修・ワーケーション事業を展開している。
もともとは「ラーニング・ワーケーション in 釜石」として始まったが、のちに「ワーケーション」という言葉は消え、「釜石オープン・フィールド・ラボ」へと発展した。
2025年には新たな研修施設「NEMARU PORT(ねまるポート)」を開設。これは、2021年にオープンした1拠点目「NEMARU PORT - hanare -(ねまるポート はなれ)」に続く2拠点目となる。「研修」や「体験プログラム」といった、釜石でしかできない学びを強みに据えた施設だ。
かまいしDMCによると、1拠点目の利用者は2023年度に519人、2024年度には805人と増えている。関係者によれば、日鉄興和不動産やオカムラが首都圏の企業に対して積極的に営業を展開していることも、利用拡大の要因となっているようだ。
ただ、こうした取り組みも、どこまで持続的に成功するかは見通せない。
出社回帰が進み、企業の働き方が再びオフィス中心へと戻るなか、ワーケーション施設は存在意義を問い直されている。
土屋咲花[Business Insider Japan記者]
|
![]() |