( 330783 ) 2025/10/10 06:30:41 0 00 (ブルームバーグ): 自民党の高市早苗総裁が与党の足場固めに苦慮している。公明党との連立政権合意が遅れているためだ。両党は10日午後に協議するが、当初来週に想定されていた首相指名選挙は20日以降に持ち越される公算が高まっている。
「連立をしないということは高市早苗と書かないということです」。公明の斉藤鉄夫代表は8日配信されたインターネット番組で、自民との交渉がまとまらなければ、首相指名選挙で高市総裁には投票しない可能性に言及した。
自公は新内閣発足時に連立継続のための合意文書を確認している。高市、斉藤両氏は7日に協議したが、企業・団体献金の規制強化など政治とカネを巡る問題への対応で合意に至らず、引き続き調整することになった。長年、自民と協力関係にある公明が連立合意を巡り、「離脱カード」をちらつかせるのは異例の事態だ。
公明党が強硬姿勢に出ている背景には、党内右派を支持基盤にする高市氏への警戒や政治資金問題への対応に対する不満がある。仮に連立継続で合意できても、公明との関係は政権の不安材料となりそうだ。合意の遅れは高市氏が模索する連立拡大に向けた野党との交渉にも影響を与えている。
自民、公明両党の議席数は衆院で220、参院で121。過半数には衆院で13議席、参院で4議席不足している。現有勢力では立憲民主党、日本維新の会、国民民主党のうち1党が連立に加われば、両院で過半数を確保できる計算だ。
ただ、公明が離脱すると衆院で37議席、参院で25議席が不足。参院は通常採決に加わらない議長を除くと現連立では3議席、公明離脱の場合は24議席不足となる。
仮に公明が連立離脱に踏み切った場合、維新(衆院35、参院19)、国民(衆院27、参院25)のいずれか1党の協力を得られても両院での過半数には達しない。予算案や法案の成立に向けた野党との調整は複雑化する。立民は右派の高市氏が率いる自民には対決姿勢を強めている。
連立離脱は公明にとってもリスクが大きい。政策実現が困難になることによる存在感低下や、衆院小選挙区で自民の協力が得られなくなる。
公明は9日午前の中央幹事会で、自民との連立について議論した。同会会長の赤羽一嘉副代表は終了後の記者会見で、出席者から連立離脱の問題は慎重に決断すべきだとの意見も出たことを明らかにした。同党は夜、都道府県代表による協議会を開き、地方組織の意見を聞く予定だ。
国民民主
高市氏は総裁選公約でガソリン税などの暫定税率廃止や所得税のかかる「年収の壁」引き上げを掲げるなど、政策面で国民民主と共通する部分が多い。連立拡大の第1候補として同党が浮上している理由だ。
国民の玉木雄一郎代表は8日、高市氏ら自民執行部との面会で「日本の課題を克服していくために協力できるところは協力していきたい」と述べ、賛同できる政策については与党と連携していく方針を伝えた。
ただ、玉木氏も今後の自民との関係は、自公の関係がどうなるのかを踏まえて判断するとの考えを再三表明。連立よりも政策実現を優先させる姿勢を強調する。国民を結党時から支える連合も自民との連立政権参加には否定的だ。
日本維新の会
維新は高校授業料などの無償化と社会保険料の引き下げを条件に、2025年度予算に賛成するなど現在の石破茂政権に協力した実績がある。
吉村洋文代表は、連立入りの打診があれば協議することは当然だと明言しており、協議が始まれば進展する可能性はある。高市氏は総裁選公約に「首都の危機管理機能のバックアップ体制を構築する」と明記し、維新が重視する「副首都構想」に理解を示している。
ただ、維新と対立してきた自民大阪府連などが連立入りに反発する可能性がある。維新幹部の中にも慎重な意見がある。斎藤アレックス政調会長は、野党の立場から政策協議を行う方が有利だとする意見もある上、選挙区調整も困難なため、「相当ハードルが高い」と述べた。
立憲民主党
野党第1党の立民は自公が連立を解消する新たな可能性が浮上したことで、首相指名選挙で野党の一本化を他の野党に働き掛けている。7日には維新、8日には国民それぞれの幹事長、国対委員長と会談。立民の安住淳幹事長は統一候補は「野田代表にこだわらない」との意向を両党に伝えた。
立民、維新、国民の衆院議席数は合計210で、自民単独の議席数196を上回る。首相指名選挙の決選投票では多数を得た候補が選出されるため、公明党が自民総裁を指名しなければ野党統一候補が選出される計算だ。
ただ、国民の榛葉賀津也幹事長は立民とは安全保障やエネルギー政策などで考えが異なると指摘。「数合わせで一緒に行動をとることは考えていない」と述べ、首相指名選挙での連携に否定的な考えを記者団に示している。
--取材協力:村上さくら、梅川崇.
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Akemi Terukina, Takashi Hirokawa
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