( 330878 )  2025/10/11 03:57:08  
00

高市総裁と斉藤代表 

 

総裁就任から1週間も経たないうちに、自民党の高市早苗氏(64)が窮地に陥っている。高市氏と公明党の斉藤鉄夫代表(73)の会談が10日に国会内で約1時間行なわれた。自民派閥を巡る裏金事件の余波が続くなか、公明党は企業・団体献金に関する規制強化案を提案したものの、自民側がこれを受け入れることはなかった。斉藤氏は会談後の会見で、連立から離脱する方針を発表。26年前から始まった自公連立に終止符が打たれることになり、政界は大きな転換点を迎えた。  

 

新たな政策関係を構築するのであれば、政治不信の元凶となり続けている「政治とカネ」の問題への取り組みを確認する必要がある――。公明党側はそう主張し、連立維持の条件として、企業・団体献金の受け皿を政治家が代表を務める政党支部ではなく、政党本部と都道府県組織に限定する案をこの場で自民党に呑むよう迫ってきた。 

 

高市氏らがこれを呑まなかったため「(連立は)アウトということになった」(自民党衆院ベテラン)と言われるが、これは表向きの理由だとの見方が強い。 

 

「支持母体である創価学会としても、高市さんの歴史認識などについての言動を受け入れられない部分があるのだろう」(高市氏に近い自民中堅) 

 

外国人問題への取り組みや、靖国神社への参拝などを重視してきた高市氏と、「平和の党」を掲げるリベラル色の強い公明党は、もともと水と油の関係。自民党内では、今回の連立離脱は、公明党側の高市氏への忌避感が本当の原因と言われている。 

 

自民党の閣僚経験者は、こうため息をつく。 

 

「弱っちゃうよ。これで高市さんはじめ、党執行部への責任論は当然出てくるだろう。公明党が連立から離脱すれば、自民党は衆院選の小選挙で25議席くらい落とすとも言われているから」 

 

そもそも、高市氏が固めつつある新執行部や閣僚候補のメンバーは「公明党を挑発するような陣容だった」(同前)と言われる。とくに政治とカネの問題がくすぶり続ける中、高市氏が旧安倍派幹部の萩生田光一元政調会長を幹事長代行に起用したことが、公明党のさらなる怒りを招いたと指摘される。 

 

派閥パーティを巡る裏金事件を巡り、今年8月には、萩生田氏の政策秘書が政治資金規正法違反(虚偽記載)で略式起訴された。 

 

「萩生田氏以外にも、公明党が気にしている人事はありました。総裁選で高市氏を支援し、副総裁に就任した麻生太郎氏(85)は公明党に批判的なことで知られています。2023年に岸田政権で行なわれた安保関連3文書の改訂に際し、当時の公明党幹部らを『一番動かなかったガンだった』と名指しで批判した過去がある。 

 

また、官房長官内定とされている木原稔氏(56)も、『公明党の応援はいらない』と選挙戦で推薦を受けてこなかったとされる“反公明”の代表格です。 

 

公明党とすれば、いわば自分たちをバカにしてきた人たちが党幹部や主要閣僚に並ぶ政権で、とても協力できないという気持ちもあったのでしょう」(前出・閣僚経験者) 

 

 

ヒートアップする公明党をなだめ、話し合いができるような人材も、高市氏の周囲には見当たらなかった。斉藤氏をはじめ、自民党内で公明党幹部との付き合いが多かったのは、「総裁選で小泉氏を支援した議員が中心だった」(自民党関係者)からだ。 

 

「麻生さんの頭の中だけで人事をやるからこうなる。決選投票で高市氏を支援して主流派に戻った茂木敏充元幹事長(70)の外相起用案も報じられましたが、茂木氏も幹事長時代に、10増10減に伴う候補者調整などで、公明党と溝が生まれた過去がある。 

 

他党とのパイプ役が期待される国対委員長には、梶山弘志元経産相(69)が起用されましたが、国対経験がゼロで、人脈面での懸念がある。総裁選で小泉進次郎農相(44)を支援した御法川信英前国対委員長代理(61)にサポート役を頼んでいるそうですが……」(前出・自民党衆院ベテラン) 

 

最終的に高市氏が泣きついた先は、小泉氏の後見人・菅義偉元総理(76)だった。菅氏は創価学会の佐藤浩副会長との太いパイプを持つことで知られている。 

 

「佐藤浩副会長が人事などにすごく怒っていたと聞いています。最終的に話し合いをできるのは菅氏しかいない。高市氏も10月9日に菅氏と面会したが、菅氏は周囲に『全く関わるつもりがない』と漏らしていた」(菅氏周辺) 

 

ただでさえ少数与党となっている自民党。今回の公明党の連立離脱により、今後はさらに混迷しそうだ。自民党が多数派工作を成功させ、国会の首班指名選挙で、高市氏が総理に選出できるどうかが焦点だ。 

 

総裁選直後の10月4日に、高市氏は国民民主党の玉木雄一郎代表(55)と面会した。いまや高市氏の後ろ盾となっている麻生氏も、10月6日に、同党の榛葉賀津也幹事長(58)と会談するなど、国民民主への急接近がみてとれる。 

 

さらに麻生氏は8月には参政党の神谷宗幣代表(47)とも国会内で会談している。 

 

前出の高市氏に近い自民中堅は「公明党の離脱は、中長期的には政界再編に繋がる可能性もある。自民党が、もう一度保守政党としてやっていくチャンスかもしれない」と指摘するが、政局は不透明さを増している。 

 

取材・文/ 河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班  

 

集英社オンライン 

 

 

 
 

IMAGE