( 331048 ) 2025/10/11 07:08:24 0 00 夫が“部長”に昇進予定ですが、「断りたい…」と相談されました。年収が100万円上がっても「残業代がないからトントン」とのことですが、管理職への昇格にメリットはないのでしょうか?
管理職への昇進は、うれしいことのように思えますが、「年収が上がっても、残業代がなくなると結局メリットはない」と考える人も少なくありません。確かに管理職になると残業代が支給されなくなるケースも多いですが、本当にプラス面は少ないのでしょうか。
本記事では、管理職になるメリットや、管理職昇進は自分にとって得がないのかを見極めるポイントについて解説します。
部長などの管理職に昇進すると、残業代が支給されなくなるケースがあります。管理職は、労働基準法で定められた「管理監督者」に該当する場合が多く、労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されなくなるためです。管理監督者とは、経営者と一体的な立場で重要な職務や責任を持つ労働者を指します。
ただし、役職名が「部長」や「課長」であっても、実際の業務内容や権限によっては管理監督者に該当しないケースがあります。例えば、経営に関する決定権がなく、部下の採用や人事評価の権限も限定的で、勤務時間の自由度がない場合などです。このような状況では、管理監督者とは認められないため、残業代の支払い対象となります。
したがって、昇進の際は役職名だけでなく、実際の業務内容や権限についても確認しておくことが大切です。
管理職に昇進すると残業代がつかなくなる場合が多いため、部長になる利点があまりないように感じるかもしれません。しかし、目先の給料だけでは測れない以下のようなメリットがあります。
・さらなる昇進、昇給のチャンスが広がる ・退職金や企業年金が増額される可能性が高い
現時点では「トントン」だと感じられたとしても、部長としての実績を積むことで、さらなる昇進のチャンスが生まれます。部長職を経験すると役員への道が開ける可能性もあり、長期的に見れば数百万円から数千万円単位の大きな収入増につながるケースも少なくありません。
また、退職金や企業年金の面でも、管理職経験は大きなアドバンテージとなります。多くの企業では、退職時の役職や在任期間が退職金の計算に影響するため、部長職を経験すると最終的な退職手当が数百万円単位で変わる可能性が高いです。
企業型確定拠出年金(企業型DC)においても、役職に応じて掛金が増額されるケースが多く、老後の生活設計にプラスの影響をもたらします。
管理職への昇進は、キャリア全体を通じた生涯収入や将来の資産形成まで視野に入れると、大きな経済的メリットがあるといえるでしょう。
「残業代がなくなるから年収が100万円上がってもトントンだ」という判断は、管理職になるメリットを考えると早計かもしれません。また、管理職への昇進は、単純な金銭面の比較だけでは測れない「キャリア価値」もあります。そのため、手取り額の変化や労働時間、キャリア面での価値などを総合的に見て判断するのがおすすめです。
具体的な判断のステップとしては、まず現在の残業代を正確に計算し総収入を明確にしましょう。その上で、昇進後に予想される年収と比べて、手取り額がどう変化するかを確認します。実支給額を比較する際は、年収が上がることにより納税額や社会保険料が変わる点に注意が必要です。
次に、実労働時間がどの程度変化するのかを現実的に見積もってください。また、キャリア価値として社内での昇進可能性がどう広がるか、管理職経験が今後の転職市場でどのように評価されるのかも考慮しましょう。管理職になるチャンスは何度もあるわけではないため、短期的な損得だけでなく5年後や10年後のキャリアと生活を見据えた判断が重要です。
部長への昇進は、年収が上がっても残業代がつかなくなる場合が多いため、「トントン」に見えるかもしれませんが、長期的には大きなメリットがあります。さらなる昇進・昇給のチャンスや退職金の増額、マネジメント経験による市場価値の向上など、キャリア全体で見れば数百万円単位の収入増につながる可能性が高いです。
ワークライフバランスや目先の収入を考慮することも大切ですが、将来得られる価値も含めて総合的に判断してみてはいかがでしょうか。
出典 e-Gov法令検索 労働基準法 厚生労働省 労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために
執筆者 : 山口航 2級ファイナンシャル・プランニング技能士
ファイナンシャルフィールド編集部
|
![]() |