( 331133 )  2025/10/12 03:34:17  
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’21年、総裁選初出馬の際の一枚。自身の政治姿勢を表す言葉として、安倍元首相から託された四字熟語をしたためた 

 

10月4日、自民党総裁選の投開票が行われた。高市早苗氏(64)は小泉進次郎農相(44)との決選投票を制し、第29代自民党総裁に就任。70年にわたる党の歴史の中で、初めての女性総裁となった。進次郎氏との激しい総裁選を制したわけだが、高市総裁自身にも、その破天荒な人生の皺寄せが来る可能性がある。 

 

◆「戦争の反省なんかしない」 

 

落日の進次郎氏を尻目に、″働いて働いて働きまくる″と意気軒昂な高市総裁。「馬車馬のように働いていただく。私自身もワークライフバランスという言葉を捨てる」というモーレツ発言が物議を醸したが、これまでも独特な感性による物言いが、たびたび批判の的となってきた。 

 

「選挙期間中も『奈良の鹿を蹴り上げる外国人観光客がいる』と発言し、根拠を問われて答えに窮していました。神戸大学経営学部を卒業しており、キャスター出身で弁は立つ。 

 

その一方で’93年の衆議院初当選の前年、初の自伝的エッセー内で〈(若い頃は)地中海で、海の見えるホテルの部屋で、飲みィのやりィのやりまくりだった〉と赤裸々に書いて話題になったように、世間の常識にとらわれない破天荒な人生を送ってきた。歯に衣着せぬ物言いといえば聞こえはいいですが、舌禍事件を起こしやしないかと周囲は気が気じゃありません」(自民党中堅議員) 

 

経済安全保障担当大臣だった’23年には、放送法を巡る答弁で、野党の追及に資料を机に投げつけるような仕草をしながら「(私の答弁が)信用できないなら、もう質問しないでほしい」と回答を拒否し、党内からも痛烈な批判を浴びた。 

 

「衆院外務委員会で『私自身は(戦争の)当事者とは言えない世代だから、反省なんかしていない』と発言したり、自身のHPのコラムに『戦争責任を安易に認めることこそ無責任だ』といった趣旨の投稿を行うなど、党内でも筋金入りの右派。今後の外交では、その主義主張が足を引っ張らないといいのですが……」(同前) 

 

懸念事項はまだまだある。「政策の虫」と言われる高市総裁だが、その実行能力にはいまだに疑問符がつくのだ。最たる理由が、「脆弱な党内基盤」にある。 

 

総裁選を見る限り、キングメーカーである麻生副総裁を味方につけたように見えるが、時事通信解説委員を務める山田惠資(けいすけ)氏は「政策面でぶつかる可能性がある」と指摘する。 

 

「積極的な財政出動派である高市さんに対し、麻生さんは財務大臣経験者で財政再建派。今回は勝ち馬に乗っただけで、財政政策を巡っては相容れない。高市さんは防衛費など必要な予算増には赤字国債の発行もあると話している。野党が求める消費税減税も排除しない姿勢を示しており、高市カラーを出すとなると、麻生さんと対立することになる。党内基盤の弱い高市さんは麻生さんに頼らざるを得ず、結局、その傀儡になってしまうのではないか」 

 

報告会で手厚くもてなした萩生田氏や西村氏ら旧安倍派の仲間たちにすがりたいところだが、裏金問題で散り散りになった派閥に、いまだに影響力が残っているかは未知数だ。 

 

◆公明党の離脱で高まる危機 

 

他党連携でも課題は山積みだ。ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。 

 

「高市氏自身に野党との太いパイプはなく、麻生氏が国民民主と接触しているが、先行きは不透明。それよりも大きいのは公明党の離脱です。学会票がなければ落選すると見られる議員は若手を中心に50人ほどいて、今後は彼らからの突き上げもある。しばらくはご祝儀相場で反発も少ないだろうが、麻生派に見られるように派閥体制が復活したいま、仲間の少ない高市氏がウリの保守色を出せなくなれば、世論の支持は下がっていくだろう」 

 

独自色を抑えて長老におもねり、他党の顔色をうかがいながらなんとか政権を維持していく……。何だか1年前にも見たことがあるような不毛な政争が、再び繰り返されるという懸念があるのだ。 

 

◆サナエノミクスに潜むリスク 

 

一方、国民生活に直結するのが「物価高対策」だ。アベノミクスの流れを汲む高市総裁の「サナエノミクス」は国債発行を容認し、市場にカネを流通させることで経済を活性化させるというものだが、これにはリスクが伴う。 

 

アベノミクスは名目賃金こそ上げたものの、円安が進行して、実質賃金はマイナス。非正規雇用者が激増し、二極化が進んだ。経済アナリストの中原圭介氏が警鐘を鳴らす。 

 

「いま、市場に資金を注入しても進行した円安が更なる物価高を招き、国民生活を圧迫するだけ。本当に必要なのは金融緩和や減税といった″痛み止め″ではなく、長期的な目線での成長戦略です。また、大規模な財政出動は悲惨な結果をもたらすこともあります。’22年、イギリスの女性首相リズ・トラスが財源の裏付けのない減税策を発表したことで金融市場から総スカンを食らい、ポンドや国債が暴落。わずか49日で退陣に追い込まれました。これは極端な例ですが、日本でも起きないとは限りません」 

 

あるベテラン代議士は、1年足らずで終わった石破政権の二の舞となり、「短命政権」となる可能性について語る。 

 

「石破と高市はよく似ている。党内に仲間がいなく、政治的な駆け引きが苦手。独自色を出そうにも長老の顔色をうかがう必要があり、丸くなれば国民から批判される。結局、議員も国民も離れていく。潰れるまでに、時間はかからんだろう」 

 

新総裁には先を見据えた絶妙な舵取りが求められている。 

 

『FRIDAY』2025年10月24・31日合併号より 

 

FRIDAYデジタル 

 

 

 
 

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