( 123962 ) 2023/12/20 21:46:46 0 00 「令和のリクルート事件」とも呼ばれる自民党の政治資金パーティ裏金問題。19日には東京地検特捜部が安倍派・二階派の事務所に強制捜査に入った。しかし、総理の岸田はいっこうに焦る様子がない。いったい何を考えているのか―カギは安倍派との「因縁」にあった。 【写真】小室圭さんの様子がおかしい…2年前とはまるで別人 岸田がなぜか笑っている Photo by gettyimages 「打ち克つの『克』という字を選びたいと思います」 「今年の漢字」に何を選ぶか記者団に問われ、岸田はこう答えた。その口元はかすかにほころんでいるように見えた。 岸田の足元は目下、「政治資金パーティ裏金問題」で燃え盛っている。時事通信が12月14日に公表した世論調査では、内閣支持率は17・1%に急落。政権交代前の麻生内閣以来となる1割台となった。とても笑っていられる状況ではないはずだ。 にもかかわらず、国会で岸田とすれ違った議員たちは口々に言う。 「追い詰められていると思いきや、そうでもない」 「むしろこの状況を楽しんでいるように見える」 いったいなぜなのか。宏池会(岸田派)関係者は「岸田さんは鈍感だから、いつものようにことの深刻さに気づいていないのではないか」と言う。 「一人で突撃なんてダメですよ」 Photo by gettyimages しかし、そうではない。岸田が笑いをこらえきれない理由はまさしく、本人が述べた通り、この権力闘争に「打ち克つ」と確信しているからだ。 (加藤さん、あんたにできなかったことを俺は成し遂げますよ) ほくそ笑む岸田が思い出していたのは、23年前の出来事だった。 「大将なんだから、一人で突撃なんてダメですよ」 谷垣禎一が、半泣きの加藤紘一の肩を掴みながら必死に説得する。世に言う「加藤の乱」だ。 '00年11月、当時の森喜朗政権は不人気をきわめ、内閣不支持率は7割を超えていた。そこで「総理に一番近い男」と呼ばれていた当時の宏池会会長の加藤が、野党の内閣不信任決議案に同調して倒閣をもくろんだのだ。 ところが、加藤率いる宏池会は、当時の幹事長・野中広務や国対委員長・古賀誠の猛烈な切り崩しにあい、反乱はあえなく鎮火されてしまう。 安倍派を恨む東京地検特捜部 Photo by gettyimages 敗北を覚悟した加藤は、責任を全うするため、盟友の山崎拓と「2人だけで賛成票を投じに行く」と宣言するも、後輩の谷垣らに引き止められ、それすら叶わなかった。これを機に加藤は政治生命を失い、いっぽうの森率いる清和政策研究会(現・安倍派)は、以降20年にわたり自民党の最大勢力として君臨することとなった。 この「加藤の乱」で、「殿」たる加藤が無惨に切り捨てられるさまを間近に見ていたのが、若き日の岸田だった。 「ここまで来たら一緒に討ち死にしよう」 そう覚悟を決めて参加した反乱が、中途半端な結果に終わった。岸田は「加藤の乱」の教訓を、自著にこう記している。 〈勝負は勝たなければ意味がない〉 そしていま、期せずしてその勝負のときがやってきた。因縁の相手である清和研を徹底的に叩くため、東京地検特捜部が動き始めたのだ。全国紙の政治部記者が解説する。 「検察は安倍政権を苦々しく思ってきた。当時の官邸は検察の人事に介入して検事総長候補を左遷したうえ、『官邸の守護神』と呼ばれた黒川弘務を検事総長に据えるために、黒川の定年延長をむりやり閣議決定した。人事という『聖域』に手を突っ込まれたことを、検察はいまでも恨んでいる。 いま、東京地検特捜部は全国の高検から応援を頼み、スタッフを合わせて100人規模の総力体制をしいている。安倍派はもう逃げられない」 「キックバック指南書」を押収 Photo by gettyimages 焦点は安倍派の事務総長経験者や、派閥から多額のキックバックを受けて裏金にしていた議員たちを摘発できるかどうかだ。政治資金規正法で不記載の責任を問われるのは原則、事務職員である会計責任者のみ。 しかし、メールなどの客観的証拠があれば、議員も共謀に問われる可能性がある。 「安倍派の会計責任者のAはNTT出身で、子会社の役員や監査役を務め、4年ほど前に安倍派の事務局長として迎えられました。同じNTT出身の参院幹事長・世耕弘成の紹介です。 このAが政治素人のため、特捜の取り調べに耐えられず、すべて話したと言われています。特捜はすでに安倍派の過去5年分のパーティ券出納簿と『キックバック指南書』を押収して分析しているそうです」(前出の全国紙政治部記者) 検察が狙っているのは安倍派の現役幹部のみではない。本丸は「ドン」森喜朗だという。 「そもそも裏金作りは森元総理の時代から連綿と続いてきたもので、検察は、安倍派の裏金の相当額が森に流れた可能性を探っています。 そう仮定すると、色々と符合するものがある。歴代事務総長の松野博一、西村康稔、高木毅は裏金を上納金として森に渡していたため、森のお気に入りの総裁候補『5人衆』として持ち上げられ、岸田政権でも良いポストがあてがわれた。 一方で、元事務総長の下村博文は上納していなかったため、森に干されたというわけです」(全国紙社会部記者) 岸田とすれば、この波に乗らない手はない。いまは亡き加藤の遺恨を晴らす、千載一遇のチャンスが巡ってきたのだ。 麻生太郎が驚いた岸田総理の怨念 Photo by gettyimages 岸田が画策するのは森への復讐だけではない。党内外にいまだ色濃く残る安倍晋三の「遺風」をも一掃しようとしている。 安倍は「私の次は岸田さんだから」と引き上げるそぶりを見せながら、'20年の総裁選では菅義偉を、'21年の総裁選では高市早苗を推し、何度も岸田のハシゴを外してきた。挙げ句は「華がない」「化けない」などとバカ扱い。それでも岸田は耐え続けた。安倍が亡くなったときには、国葬もあげてやった。それなのに、旧統一教会問題の尻拭いまでするハメになったのだ―。 「清和研の政務三役を、すべて変えることに決めました」 9日の夕方、公邸を訪れた副総裁の麻生太郎は、岸田の話を聞き、目を丸くした。政権から安倍派を一掃するというのだ。 「首を変えたところで、次の奴が同じことをしていたら収拾がつかなくなるぞ。そんなことぐらい、あんた分からないのか」 「パフォーマンスで罪なき連中まで切って、どうやって政権運営するんだ」 麻生は色をなして反論したが、岸田の決断は揺るがなかったという。 (これはパフォーマンスじゃない。復讐なんだよ) 後編記事『岸田総理が目論むまさかの「裏金解散」! 残念でした、辞めません…それに立ち向かう小泉進次郎の「意外な存在感」』に続く。 「週刊現代」2023年12月23日号より |
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