( 124691 )  2024/01/02 03:10:05  
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日本が30年間給料が上がらず、他の先進国では上昇し続けている状況について、本「給料の上げ方」が話題になっている。

著者は日本政府の特別顧問であり、給料の本質を解説し、給料を引き上げるための戦略と戦術を紹介している。

日本では給料交渉を抑える雇用者と雇われる側の関係が原因として指摘されており、特に給料を上げるための方法が紹介されている。

この本によると、給料が上がらないのは働く人の努力や能力のせいではないとされている。

 

 

(要約)

( 124693 )  2024/01/02 03:10:05  
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先進国で日本だけが30年間給料が上がっていません 

 

何かと出費がかさむ年末年始。この機会に「お金」、そして政府が経営者に促すものの一向に上がらない「給料」についてじっくり考えませんか。日本人の給料の現実と、上げ方をわかりやすく解説した本が話題です。その名もズバリ「給料の上げ方」(デービッド・アトキンソン著、東洋経済新報社)。 

 

【写真】取り残された「給料」。こんなに他国と差があったとは 

 

著者は2017年から日本政府観光局特別顧問、2020年から政府の成長戦略会議委員などを歴任した伝説のアナリスト。給料の本質を明らかにし、給料を引き上げるために動き出せる戦略と戦術を紹介しています。 

 

■「30年上がらない賃金」 

 

本署は冒頭から「日本人の給料」の現実について、以下のように解説しています。 

 

日本人の給料は、この30年間ほとんど上がっていません。一方、同じ時期に、税金と社会保障費の負担が増えたたため、手取り収入は大きく下がりました。第二次安倍政権以降、岸田総理も含めて、歴代総理大臣は企業の経営者に「賃上げ」を訴えてきました。しかし、残念ながらその効果は微々たるものにとどまっています。一方、他の先進国では給料がコンスタントに上昇し続けています。 

 

なぜ、日本と海外の国々ではこんなに違ってしまったのでしょうか。答えは「海外では個人が給料を上げる主役になっているから」、この一言に尽きます。 

 

先進国では7割以上の労働者が、自分の給料を上げてもらうよう、毎年経営者と交渉しています。一方、日本人労働者を対象としたある調査では、7割以上の人が「賃上げを求めたことはない」と回答しています。逆に言うと、自ら賃上げを求めたことのある人は日本では3割にも満たないのです。(本書より) 

 

■「異常事態が30年続いている」 

 

経営者への賃上げ交渉の必要性はよくわかる一方、日本人的にはなかなか難しいようにも感じます。しかし、このことについても著者は明確に指摘します。 

 

いつのころに生まれたのかはっきりとはわかりませんが、日本にはお金にガツガツしたり、口に出すことを「はしたない」ととらえる風潮があります。そのため、「自分の給料を上げてくれ」と交渉するのが苦手だったり、慣れていないのも理解しています。また、日本人特有の奥ゆかしさも、給料交渉をためらわせる要素になっているのかもしれません。しかし、給料交渉をすることは、どこの先進国でもごく普通に行われているグローバルスタンダードな行為です。「恥ずかしいこと」でも「遠慮するべきもの」でもありません。このことは、これからの日本で生きていくうえできわめて重要なことですので、ぜひ肝に銘じておいてほしいと思います。(本書より) 

 

■「会社との関係」を捉え直せば給料は上がる 

 

「賃金アップを経営者に求める」となると、労働組合が中心の交渉やストライキを思い浮かべますが、本書ではこういった日本の企業における従来型の交渉術ではなく、労働者個々が、平和裏に、経営者に給料に関する希望を伝え、賃金アップを目指すためのメソッドが数多く紹介されています。その主な内容は以下のようなものです。 

 

・給料が上がらないのは「日本人の能力」のせいではない 

・毎年4.2%の賃上げを実現する 

・見限るべき社長、ついていくべき社長 

・「よいものをより安く」では給料は上がらない 

・あなたは「評価される側」から「評価する側」になる 

 

言い換えれば、労働者個々が、自らをマネジメントし、ある種の「自営業」「事業主」的な考えを持って「会社と契約する」ことが、給料を上げていくための方法である、といったもの。前述の著者の解説にもある通り、これから先の日本では確かにこういった働き方は、避けて通れないもののようにも思いました。 

 

■「給料が上がらないのは、働く人の努力や能力のせいではない」 

 

なかなか興味深い内容ですが、著者の優しい筆致によって、わかりやすく「交渉のメソッド」が解説されているのも本書の良い点です。最後に担当編集者に聞きました。 

 

「2020年に、著者のアトキンソンさんに東洋経済オンラインで『日本人の「給料安すぎ問題」はこの理論で解ける』という記事を書いていただきました。この記事は200万近いPVを獲得、翌週のテレビ番組にアトキンソンさんが呼ばれるなど、大きな話題となりました。多くの人に『日本人の給料は安い』という認識を抱かせるきっかけとなり、この問題についての書籍も何冊か刊行されました。 

 

本書は、記事で問題提起した『モノプソニー(少数の買い手が多数の供給者に対して独占的な支配力を持つこと)によって給料が抑えられている』状況を、どうすれば打破できるのか、その道筋を書いてほしいと思い、刊行が決まりました。給料が上がらないのは、当たり前のことでもありませんし、働く人の努力や能力のせいでもありません。雇う側と雇われる側、その関係性を見直すだけで、給料が上がっていく流れをつくることができます」 

 

本書で紹介されている全てをすぐに実行できなくとも、「対価の交渉意識を持つ」「働く上でのマインドセット」のヒントにつながる解説がたくさんあります。ぜひ読んでみてください。 

 

 

 

(まいどなニュース特約・松田 義人) 

 

まいどなニュース 

 

 

 
 

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