( 131001 ) 2024/01/21 14:24:37 0 00 トーヨータイヤの清水社長(同社HPより)
ホンダの人気車種「N-BOX」で使用されている部品をめぐり、大手自動車部品メーカー「TOYO TIRE(トーヨータイヤ)」が、両社の契約で定められた管理基準から大幅に外れた数値のまま納入していた問題。1月19日、「週刊文春電子版」では 「ホンダ『N-BOX』の部品『管理基準に満たない検査結果を隠して納品』トーヨータイヤに検査結果“不正報告”の疑い《現役社員が告発&内部資料入手》」 と題した記事を配信した。
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当該部品は「トレーリングアームブッシュ」と呼ばれるものだ。
「ゴム製の部品で車体底のタイヤ付近に使われています。段差を乗り越える時やアクセルやブレーキで車体が動く時に発生する揺れを抑制して乗り心地に作用します。設計通りでない場合、ただちに車体の故障や事故が発生するわけではありませんが、乗り心地が不安定になる可能性があります。また、想定より揺れを抑制できない場合、他の部品に作用して耐久性などに影響が出ることも考えられます」(自動車業界関係者)
この部品はホンダの人気車種「N-BOX」に使用されている。昨年夏頃、ホンダは新型「N-BOX」発売にあたり、トーヨータイヤに同部品を発注。同社で部品の特性の計測を担当する実験部が発注を受けて検査を行ったところ、〈本部品は管理基準を満足していない〉という結果が出た。ところが、ホンダとの窓口になっている設計部はその事実を伏せた上で部品を納入してしまった――「週刊文春電子版」では、トーヨータイヤ現役社員のこうした告発を掲載した。
「2022年頃から管理基準に満たない部品は製造されており、既に出荷されている『N-BOX』にも使用されている可能性があります」(トーヨータイヤ現役社員)
記事の公開後、トーヨータイヤの株価は急落。一時、ストップ安水準の前日比497円(19%)安の2062円という値をつけた。これは、2023年8月以来の安値。「N-BOX」は昨年だけでも23万台が販売されており、影響は大きいと見られる。
実は「週刊文春電子版」の報道直後にトーヨータイヤ社内では動きがあったという。
前出の現役社員が明かす。
「会社はホンダへの虚偽報告の事実確認の調査を開始しました。真っ先に設計部の部長が本社に呼び出されています。それだけではない。他にも、品質管理を担当する部署などへの聞き取りも行われました」
だが、同社の設計部関係者はこう証言する。
「今回のホンダへの“不正報告”については、すでに会社として把握していた可能性があるのです。実は昨年、実験部の計測で〈管理基準を満たしていない〉という結果が出たにもかかわらず設計部が“問題なし”としてホンダに部品を納入してしまった直後、事情を知る社員が社内のコンプライアンス委員会に一連の経緯を通報しているのです。“告発”を受けたコンプラ委員会は不正を行った疑いのある設計部の担当者や部長だけにヒアリングを実施。表面上の調査だけやって『そのような事実はなかった』と結論付け、有耶無耶にして終わらせているんです」
トーヨータイヤは2015年にもゴム製品でデータ不正や虚偽報告など3件の不祥事が相次ぎ発覚している。
「その後、再発防止策を発表して、現在も定期的に再発防止策を『遵守している』と公表しているにもかかわらず、コンプラ委員会の対応を見る限り、自浄作用が働いていないと言わざるを得ません」(同前)
トーヨータイヤに、ホンダへの“不正報告”について現役社員がコンプライアンス委員会に通報していたのは事実か、またどのような対応をしたのかを聞くと、次のように回答した。
「通報者のプライバシーは、窓口が責任を持って保護しており、広報ではこれらの情報を持ち合わせておりません。本件について、もし通報が入っている場合は、法令に沿って適切な確認対応がなされていると認識しています」
1月21日時点でトーヨータイヤ、ホンダは正式な声明を発表していない。今後、どのような対応をするのか注目される。
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この問題については、現在配信中の「週刊文春電子版」で詳報している。
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「週刊文春」ではトーヨータイヤについての情報を募集しています。文春リークスまで情報をお寄せください。
文春リークス: https://bunshun.jp/list/leaks
「週刊文春」編集部/週刊文春
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