( 131269 )  2024/01/22 13:16:50  
00

岸田文雄総理は自民党派閥の問題を受け、宏池会(岸田派)の解散を検討していると表明しました。

他の派閥も同様に解散を検討する動きが出ていますが、過去にも派閥解散が言われるものの結局復活してきた歴史があります。

派閥の解散は政治的な目くらましであり、自民党内の権力闘争に過ぎないとの見方もあります。

また、政治資金に関連しては透明化や法改正が求められています。

この派閥解散の動きが、宏池会の大宏池会への変遷など、政界に影響を与えることが予想されています。

(要約)

( 131271 )  2024/01/22 13:16:50  
00

photo by gettyimages 

 

岸田文雄総理は1月18日夜、記者団の取材に応じ、自民党派閥のパーティーをめぐる事件を受け、岸田派(宏池会)を解散することを検討していると表明した。岸田首相の意図はなにか。これで、政治とカネの問題がクリアになるのか。この発言のインパクトは大きく、安倍派(清和研)と二階派(志帥会)も派閥解散をいいだした。ただし、麻生派(志公会)と茂木派(平成研)は派閥解散をいっていない。実は、自民党は過去にも派閥解散を言っては復活させてきた歴史がある。そもそも清和研は1979年に福田赳夫氏が創設したが、同氏は派閥解消論者でもあった。それが今では自民党最大派閥というのは皮肉なものだ。同氏の孫である福田達夫氏は、19日、清和研解散を受けて新しい集団を作ると発言して、ネット上では「ふざけてるのか」という声がでている。1988年にリクルート事件で自民党は国民の信頼を失い、竹下首相が退任した直後の1989年5月、自民党は政治倫理に貫かれた公正、公明な政治の実現と現行中選挙区制の抜本改革を柱とする政治改革大綱を示した。その中で、「党改革の断行」という章の中で「派閥の弊害除去と解消への決意」として、「すくなくとも早急に次の措置を講ずることにより、派閥解消の第一歩とする。(イ)最高顧問は派閥を離脱する、(ロ)総裁、副総裁、幹事長、総務会長、政務調査会長、参議院議員会長、閣僚は、在任中派閥を離脱する」とされている。もっとも、これは既に有名無実化している。2008年に総裁になった麻生太郎氏は、所属する麻生派(当時為公会)を離脱しなかった。岸田首相も2021年10月の就任後、昨年12月までは宏池会会長だった。 

 

【写真】「コロナ8割おじさん」西浦博、悲痛の告白「あんまりだ」【独自】 

 

昨年12月に、岸田首相が、泥船から逃げ出すように会長辞任を言い出したとき、筆者はいっそのこと、派閥解散を名言すれば良かったのに、とネット番組で言ったくらいだ。派閥は「解散する」と言っても、これまでの自民党の歴史を考えれば、どうせすぐに復活するので、言ったもん勝ちになって、政治とカネの透明化のための制度改正から国民の目をそらし、政治的には目くらましになるという皮肉を込めて筆者は言った。かつて「2人いれば意見の相違が生まれ、3人いれば2つの派閥が生まれる」と発言したのは、宏池会会長だった大平正芳氏だ。派閥解散といっても、すぐに派閥は復活するのだから、単なる目くらましだ。麻生氏は相談なしで岸田首相が派閥解散をいったので怒っているというが、これは額面通りには受け取れない。というのは、志公会は残り、宏池会の受け皿になって、麻生氏の悲願である「大宏池会」になる可能性がある。平成研の茂木幹事長も派閥解散は検事長権限強化で好都合だ。岸田首相の仕掛けた派閥解散騒動は、政治的目くらましであるとともに、自民党内の権力闘争にすぎない。 

 

 

そもそも自民党は総裁直属の機関として「政治刷新本部」を設置したが、これが政治とカネの問題といいながら、本質的には権力闘争の場だった。まず自民党に限らず派閥的なものはどこにでもあり、こままでいくら派閥解散といっても上述のようにできなかった。共産党では、民主集中制といわれセクト主義が禁止されているが、逆にいえば自由にさせておけば派閥が発生するからだ。共産主義・社会主義国家でもそうした原則があるが、強権的な押さえつけをするか、集合の自由を認めるかである。日本のような民主国家では自由が認められるべきなので、派閥そのものを否定することはとてもできない。ちなみに、憲法21条では他の民主主義国と同様に結社の自由が認められている。となると、派閥をある程度認め、それにどの程度の縛りをかけるのかという議論を本来すべきだ。故安倍晋三氏が言っていたように、派閥はあってもカネのキックバックはやめるというのがわかりやすい。しかし、安倍氏は安倍派会長になってからこれを指示したが、この世を去ってからは所属議員の反対もあり有耶無耶になったという。詳しい事情はわからないが、いくら政治にカネがかかるとしても、そこまでやりたいのかは一般庶民には理解不可能だ。せめて、資金の流れを公開し、透明化しすべて政治資金収支報告書に記載するその使い方などは有権者の判断に委ねるという方法は採れないのだろうか。 

 

そして、今の政治資金収支報告書では、会計責任者は処罰されるが、その上の政治家が無罪放免とはおかしい。民間企業では、有価証券報告書で虚偽記載があれば、社長が責任を負う。政治資金収支報告書でも、会計責任者がのミスは政治家が負う連座制を設けたり、会計責任者を政治家としたりするなど、方法はいくらでもある。こうした法改正はどこまで可能だろうか。さらに、今回の事件で、政治資金収支報告書の修正が相次いでいるという。政治資金収支報告書に収入を書かなかった段階で、政治資金ではなく、個人としても課税所得になるが、修正すれば政治資金なので非課税になるというのが、一部の政治家の解釈だ。見つかったら修正すれば脱税にならないというのはあまりに国民感情に反している。政治資金収支報告書では、収入額を修正したが、同時に支出も修正している。今回の事案に関係する税務署は、税務上支出を精査し脱税案件として対処すべきだ。でないと、2月からの確定申告時期に善良な納税者から怒りを買うだろう。最後に、宏池会の解散が政界に与える影響を見てみよう。清和研と志帥会も解散した。もっとも関係者からは、「人は自然に集まってくる」という意見も出ているようだが、当面、清和研と志帥会のパワーが削がれる。一方、上に述べたように、宏池会は大宏池会に鞍替えする可能性が高い。この政界変動は、積極財政派が政治力を発揮できずに、財務省主導の財政再建派が政治的に台頭することを意味する。ポスト岸田をめぐる動きにも、この政界変動の影響は大いに関係するだろう。 

 

髙橋 洋一(経済学者) 

 

 

 
 

IMAGE