( 131522 )  2024/01/23 00:16:03  
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経済のしくみは意外とすっきり理解できる点が景気サイクルなどと結びつけて考えることからわかります。

投資の成功のための戦略として、過去のチャートを分析する方法があります。

2023年12月までに105冊の『会社四季報』を読破した複眼経済塾・塾長の渡部清二氏による最新刊『プロ投資家の先を読む思考法』をもとに、市場の先読み術の効果を最大化できるような投資判断についての記事があります。

日本の株式市場が本格的に回復し、日経平均とNYダウのチャートが酷似していることが指摘されており、日本もようやく最高値を更新する可能性があると述べています。

(要約)

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景気サイクルなどと紐づけて考えれば、経済のしくみは意外とすっきり理解できます(写真:taa/PIXTA) 

 

「投資はできるけれど、売買タイミングを間違えてしまった」という経験がある方もいるでしょう。その失敗を最小限にとどめるための方策はいくつかあります。 

そのうちの1つが、今と似たような動きが見られた過去のチャートを分析することです。一見小難しく思えても、景気サイクルなどと紐づけて考えれば、経済のしくみは意外とすっきり理解できるのです。 

2023年12月をもって105冊の『会社四季報』を読破した、複眼経済塾・塾長の渡部清二氏による最新刊『プロ投資家の先を読む思考法』より一部抜粋・再構成のうえ、市場の先読み術の効果を最大化できるような投資判断について見ていきましょう。 

 

【図を見る】NYダウと日経平均のチャート比較 

 

■日経平均とNYダウ平均のチャートは酷似 

 

 アメリカに比べてパッとしないと言われてきた日本の株式市場ですが、私はこれから本格的に回復してくるのではないかと見ています。「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏が日本株に14年ぶりの大きな買いを入れたことも根拠の1つです。 

 

 さらに、私はあることに気づいたのです。次の図は、NYダウと日経平均の推移を重ね合わせたものです。日本はバブルの崩壊、アメリカは1929年の世界大恐慌による株価の大暴落を経験しており、なおかつ大暴落前に株価が高値をつけたという共通点があります。そこで「もしかしたら同じような動きをしているのではないか?」と考え、重ね合わせてみたら本当にその通りでした。 

 

 暴落前の最高値から最安値までの下落率は日経平均が81.9%、NYダウはさらに激しく89.2%に及んでいます。しかも、1929年9月の世界大恐慌直前のNYダウ最高値は381.17ドル。対して日経平均は1989年12月の3万8915円。当時のNYダウに100をかけると、1989年の日経平均に似た数字になります。最安値までのスピードは、NYダウが3年でわりと速かったのに対し、日経平均はかなり時間がかかって2009年3月となっています。 

 

 

 では、最高値を更新するまでの期間はどうでしょうか?  

 

 NYダウは世界大恐慌前の最高値を更新するまで25年強かかっています。 

 

 日本は今、最高値から33年10カ月のところにいます(2023年10月時点)。株価の動きとしては、NYダウに置き換えると1954年5月のころに近いです。NYダウはこのわずか6カ月後に高値を更新しました。 

 

 そこで、日本もここから半年後には高値を抜く可能性があると私は考えています。ただしNYダウが高値を更新するまでの期間が25年だったのに対し、日本はすでに33年かかっているわけですから、動きは似ていても3割増しくらいの期間がかかると考えたほうがいいかもしれません。 

 

■倍返しの可能性も 

 

 さらに私が楽しみにしているのは、日経平均はいったん最高値を更新すると、そこから加速度的に上がるのではないかということです。NYダウは、世界大恐慌前の最高値から最安値まで値幅で340ドル下落しました。 

 

 ところがいったん最高値を更新するやいなや、下がった分を倍返しする勢いで上がっていきました。倍返しまでの期間は3年3カ月です。私がこんな夢のようなことを言うのには理由があります。 

 

 というのも、株式市場がここまで大きな暴落をして回復した例は、世界広しといえどもNYダウの1929年の記録的大暴落と、日本のバブル崩壊による株価下落の2例しかないのです。しかも、株価チャートの形が酷似しています。だから1929年のアメリカと似た動きをするのはほぼ確実と見ています。 

 

 日経平均の下げ幅は、3万8915円-7054円=3万1861円この分を倍返しするとしたら、7万0776円! 「日経平均、一気に5万円超え」も夢ではないと私は思っています。そして、倍返しの始まるタイミングにいる今こそ、株式投資の始め時と言えるでしょう。 

 

 2022年の大納会(12月30日)の終値は2万6094円。その後、多少のジグザグはありますが、ほぼ右肩上がりに伸びています。2023年10月13日時点の終値は3万2315円ですから、約24%上昇したことになります。 

 

 

 このことから「もう株価は上がってしまっているから、今から始めても無駄なのでは?」と考える人も少なくないかもしれません。 

 

 ですが、そんな考え方をするのはやめましょう。いくつかの大型株はもう上昇基調(基調とは相場の大きな流れのこと)に入ってしまっているので、今から大底を狙う(=最安値を狙う)のはそれこそ無理というものです。すでにそんなことを言っている場合ではないのです。 

 

 とはいえ、株価は一直線に上がっていくというものでもありません。上がったり下がったりジグザグを描きながら上がっていくので、いったん上がった株価が下がってくるのを待って買うというやり方もあります。これを「押し目買い」と言います。 

 

 日経平均で見れば、もうすでに大相場がスタートしているところなので、こういうときは上がったものを買う「順張り」でいいのではないでしょうか。 

 

 一方で、下がったものを買う「逆張り」ができるのであれば、中小型成長株の多くは大きく株価が下落していますのでチャンスかもしれません。 

 

■景気は繰り返す 

 

 正しい投資判断をするには、景気の転換点に気づくことが重要です。景気は経済活動が拡張する「好況」と、収縮する「不況」を交互に繰り返す性質があり、好況→後退→不況→回復→好況……という具合に、「好況」「後退」「不況」「回復」の4つの局面が順番に繰り返し現れる循環的な動きをします。 

 

 好況の最頂点を「景気の山」、不況の最低点を「景気の谷」といい、景気の谷から次の谷までを1つの周期でとらえます。また、好況から後退へ、後退から不況へ、不況から回復へ、回復から好況へのそれぞれの過程は、「景気の調整局面」と呼ばれます。 

 

 景気が循環していることは19世紀末以降、次の経済学者によって指摘されました。 

 

・4年サイクル…アメリカの経済学者ジョゼフ・A・キチン 

・10年サイクル…フランスの経済学者クレマン・ジュグラー 

 

 

・20年サイクル…アメリカの経済学者サイモン・クズネッツ 

・50年サイクル…旧ソ連の経済学者ニコライ・コンドラチェフ 

 の4人です。彼らの提唱した異なる景気循環のプロセスを複合的にとらえたのが、オーストリア・ハンガリー帝国生まれの経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターです。20世紀前半を代表する経済学者である彼は、ハーバード大学の招聘によりアメリカに渡った際、これらの景気サイクルを『景気循環論』という大著にまとめたのです。それぞれのサイクルには、最初にそのサイクルを指摘・提唱した経済学者の名前が冠されました。 

 

 では、それぞれの景気サイクルについてご説明しましょう。 

 

■4つの経済サイクル 

 

 ①キチンサイクル 

 

 いちばん小さなサイクルはキチンサイクルと呼ばれるもので、その期間は4年弱です。他の景気循環と比べてサイクルが短いことから、「短期循環」や「在庫循環」などとも呼ばれています。おそらく、私たち一般消費者の肌感覚として、いちばんしっくりくる景気サイクルなのではないでしょうか。 

 

 なぜ在庫循環と呼ばれるかというと、キチンサイクルは企業による在庫への投資と関わっているからです。企業は在庫の残高を調整しています。自社が適正と考える在庫残高を下回ると在庫の数を増やし、上回ると在庫の数を減らします。このような在庫の増減は、取引先企業にも影響を及ぼすため、経済全体の拡大や縮小につながります。 

 

 こうした在庫の増減により、4年弱の周期でキチンサイクルが循環するというわけです。 

 

 ②ジュグラーサイクル 

 

 キチンサイクルの周期が4年弱であったのに対し、ジュグラーサイクルの循環周期は約10年です。一般にジュグラーサイクルは、企業の設備投資に起因すると考えられています。設備は10年もすれば古くなるので、そこで新旧設備の交換が行われる際、関連企業を巻き込んで景気の波を作り出すというのがその理由です。ジュグラーサイクルの中には、通常、キチンサイクルが2つか3つ含まれるとされています。 

 

 

 
 

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