( 134130 )  2024/01/30 22:45:32  
00

30日に行われた岸田文雄首相の施政方針演説では、経済政策に重点を置く姿勢が示されたが、能登半島地震の発生や政治資金パーティー収入不記載事件への対応に押され、演説の焦点が曖昧になった。

また、新たな政策の打ち出しも乏しく、日本経済が再び停滞しかねないとの懸念が表れた。

演説では防衛力強化や少子化対策にも触れたが、財源確保には不安が残る状況が指摘された。

(要約)

( 134132 )  2024/01/30 22:45:32  
00

衆院本会議場で施政方針演説を行う岸田文雄首相=30日午後、衆院本会議場(鴨志田拓海撮影) 

 

岸田文雄首相が30日に行った施政方針演説では、4分の1超を経済政策に充て、引き続き経済を重視する姿勢をアピールした。だが、1日に発生した能登半島地震に加え、自民党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件への対応に押され、従来の演説より経済政策の優先順位が落ちた印象は否めない。新たな政策の打ち出しも乏しく、経済政策の方針が揺らげば、好循環の兆しが見え始めた日本経済が再び停滞しかねない。 

 

【表でみる】主な「ポスト岸田」候補 

 

■4番目に後退 

 

「『経済の再生』が岸田政権の最大の使命だ。もう一度この場でお誓いいたします」 

 

首相は施政方針演説でこう強調した。念頭にあるのは令和5年10月の臨時国会での所信表明演説だ。 

 

この時、首相は冒頭に「経済、経済、経済」と連呼して経済に重きを置くと宣言。今回も「その思いは今も全く変わっていない」と語ったが、演説で首相が本格的に経済政策に触れたのは自民の「政治刷新本部」の後となり、項目としては4番目だった。 

 

被災地の復旧・復興のため、6年度予算案の早期成立は重要だが、世界的に社会経済の構造が激変する中、経済の側面で日本が取り組むべき課題は山積している。脱炭素社会への転換を目指す「GX(グリーントランスフォーメーション)」では日本は出遅れ、政府は20兆円規模の「GX経済移行債」の発行で民間の投資を後押ししたい考えだ。 

 

経済の牽引役として期待されるスタートアップ(新興企業)も、日本は他国に比べて育ちにくいとの指摘がある。首相は演説の中で、こうした課題に取り組む姿勢を見せたが、新たな政策の打ち出しなどはみられなかった。 

 

一方、演説では防衛力の抜本的強化や少子化対策に取り組むことにも触れた。しかし、財源確保には不安を残す。 

 

防衛力強化では財源確保に向け、4年末に所得税など3税の増税を決めたが、増税開始時期はいまだ示せていない。少子化対策の財源も、歳出改革などで「国民に実質的な負担が生じない」とするが、実現できるかは不透明な状況だ。 

 

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「演説の方向性は間違っていなかったが、従来の主張を繰り返し、新しい材料は特になかった。もう少し先を見据えた政策の打ち出しも必要だ」と語った。(今仲信博) 

 

 

 
 

IMAGE