( 134369 )  2024/01/31 13:56:27  
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最近、チューナーレステレビが注目を集めている。

これはチューナーを搭載せず、地デジを受信できないテレビであり、「NHK受信料を払わなくて済む」という点で売られている。

主にNetflixやU-NEXTなどの動画サービスの視聴が主な用途となっており、家電量販店や小売店でも販売されている。

チューナーレステレビは多くがGoogle TVやAndroid TVを搭載し、動画の視聴は各アプリを介して行われる。

小売各社も販売を始め、大型画面で高品質な動画を見たいという需要があるとされる。

(要約)

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どんなニーズがあるのか 

 

 近年、チューナーレステレビが話題となっている。その名の通りチューナーがついておらず、地デジを受信できない仕様のテレビだ。「NHK受信料を払わなくて済む」といった謳い文句で売られることもあり、NetflixやU-NEXTなどの動画視聴が主な用途とみられる。 

 

【画像】ドンキとニトリのチューナーレステレビ(全6枚) 

 

 その勢いは増しており、家電量販店やECだけでなくドン・キホーテやニトリなどの小売各社も販売するようになった。今回はチューナーレステレビの概要と人気の背景について迫ってみよう。 

 

 そもそもチューナーレステレビにない「チューナー」とは、アンテナで受信した信号から映像や音声を取り出す装置で、テレビのほとんどに内蔵されている。チューナーレステレビ(以下、チューナーレス)は従来の薄型テレビと同じ形状だが、チューナーが内蔵されておらず、地デジを受信できない。冒頭の通り、テレビだけで考えればNHK受信料を払わなくて済む仕様だ。 

 

 基本的には有線LANまたはWi-Fiでネットにつなぎ、NetflixやHulu、U-NEXTやアマゾンのPrime Videoなどで配信している動画を視聴する。ちなみにチューナーレスの多くは「Google TV」や「Android TV」などのOSを搭載しており、スマホと同様に動画の視聴は各アプリを介して行う。Nintendo Switchなどのゲーム機とつなぎ、モニターとしての使用も可能だ。 

 

 チューナーレスには従来型のテレビと同様にさまざまなサイズがあり、HD・フルHD・4Kなど機種によって対応する解像度も幅広い。価格は数万円台が多く、サイズ・画質によって異なるが10万円を超えるものはあまり見かけない。数万~十数万円台が基本の従来型テレビと比較して安い点も特徴だ。 

 

 従来のテレビは大手家電メーカー製が多いのに対し、チューナーレスは中国メーカーまたは国内の無名企業が製造することも多く、部品コストを抑えているため安くできている。ただし、その分画質や音質はあまり高くないといった意見も聞かれる。ちなみにチューナー自体は数千円程度なので、その有無が価格差に影響するわけではない。 

 

 

 近年では集客を狙ってか、これまでテレビと縁遠かったような小売各社もチューナーレスを販売し始めている。特にドン・キホーテが2021年12月に発売した際は各メディアやSNSで話題となった。 

 

 当時発売したのは24型(2万1780円)と42型(3万2780円)の2種類だ。1カ月で初回生産分の6000台がほぼ完売し、意外にもテレビ離れが進む若者ではなく40代の購入者が多かったという。後続としてドンキは22年8月にフルHDモデルの24v型と32v型、そしてさらに大きい4Kモデルの43v型と50v型を発売した。「サイズを広く、高画質にしてほしい」といった要望を反映させた形だ。 

 

 23年9月にも従来モデルをリニューアルするとともに、フルHDの24v型と32v型や4Kの43v型に加え、QLED液晶で画質にこだわった50v型と55v型を投入。価格は50v型が5万4780円、55v型が6万5780円と大型ながら控えめな設定となっている。 

 

 家具大手のニトリも23年にチューナーレスを発表。23年1月に4Kモデルの43v型(当時3万4900円)を投入し、11月には小型の32型(2万9990円)を発売した。家具店らしく、11月発売のモデルはホワイト・ブラックからカラーを選べる。近年ニトリはエディオンと資本業務提携を結ぶなど家電販売を強化しており、チューナーレスの販売はこうした施策の一環とみられる。 

 

 チューナーレスの販売台数や市場規模の詳細は、まだ明らかになっていない。大手家電メーカーも参入しておらず、従来型のテレビと比較して現段階の規模はかなり小さいのだろう。そこで話題性から推測するべく、Google トレンドで「チューナーレステレビ」というワードの人気度を調べた。人気度はピーク時の検索数を100とした際の相対的な数値で表される。 

 

 近年の動きを見ると、21年11月までほぼゼロ近辺を推移していたが、同年12月に14となりその後は上昇、22年12月には40となった。そして23年3月にはピークの100を迎える。3月以降は減少に転じたものの、その後は上下を繰り返し、23年12月時点でも57を記録している。注目度から推測するに、今でも売れ続けているのだろう。 

 

 検索数が伸び始めた21年末は、ドンキが2種類のチューナーレスを発売したタイミングと重なる。ドンキの発売が話題を呼び、認知度向上につながったのは間違いない。ちなみに同社は19年にもチューナーレスを発売しているが、当時は話題とならなかったようだ。 

 

 

 チューナーレスはドンキの発売をきっかけに注目されるようになったわけだが、その前提として動画配信市場の成長は見逃せない。国内における同市場の規模は18年に2000億円を突破、22年は4530億円と推計され、27年には5670億円にまで伸びる見込みだ。 

 

 一方で、リアルタイムにテレビを15分以上視聴する「行為者率」は年々下がっており、ゆるやかだがテレビ離れは進む。このような現状において、各動画視聴サービスの利用者から「従来のスマホやPCではなく大画面で観たい」という需要が現れ、チューナーレスの購入者が増えたと考えられる。 

 

 そしてドンキの経緯を見る限り、リニューアルで新製品の音質や画質が向上していることから、高品質を求める声も大きくなっていることが分かる。現在のチューナーレスは従来型のテレビよりも安いものが多く、音質・画質にこだわったハイエンド品は新たな需要を呼び込めそうだ。そう考えると、NHKの受信料と合わせて話題になることが多いチューナーレスだが、あくまでそれは一部に過ぎないのではないか。多くの購入者のニーズはシンプルで、楽に大画面で高品質な動画を見たい点にあると推察できる。チューナーレス市場の今後に注目したい。 

 

化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー 

 

ITmedia ビジネスオンライン 

 

 

 
 

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