( 134693 )  2024/02/01 12:57:24  
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大相撲の呼び出しは物悲しく聞こえる。

記事では、照ノ富士の膝に装着された異様な器具について驚きを表現し、それが許されるべきかについて疑問を投げかけている。

相撲は力士が素手で行う神事であり、器具の使用は違和感がある。

しかし、照ノ富士の存在は大相撲にとって欠かせないものであり、対戦相手も彼の膝を責めない傾向にある。

器具の使用については日本相撲協会が黙認している可能性がある。

相撲は単なるスポーツではなく、興行であり、照ノ富士の存在は重要な役割を果たしている。

(要約)

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GettyImages(写真は2022年の五月場所のもの) 

 

 それにしても、大相撲の呼び出しというのはどうしてあんなに物悲しくきこえるのだろうか? 「呼出」という名の進行役が扇子を突き出しながら、「ひがーしー、てるのふーうじー、てるのふーじいー」と独特の節まわしで力士を土俵に呼び上げる、あれである。その声調をテレビで聞くたびに、何とも言えない物悲しい気分にさせられる。まるでこの世で生きていくことの悲哀をのべているような……。 

 

【写真】照ノ富士の稽古中の写真をみると「異様な器具」の正体がわかった 

 

 いや、そんなことを書きたいのではなかった。たまたまテレビで両国国技館で行われている初場所をぼーっと眺めていたときのこと。異様な光景を目にして驚いたのだった。照ノ富士の膝である。 

 

 痛めた膝をかばうためにテーピングをしているのだなあ、と思って見ていたのだが、NHKのテレビカメラが時々その膝をクローズアップで迫る映像を見てびっくりしたのである。 

 

 テープで覆い隠したその下に、何だか丸いボルトのような物やら、四角い板状の物やらがゴツゴツとすけて見えているではないか。実況中継のアナウンサーや解説者がそのことについて何か解説してくれるのかなと期待したのだが、それについては何の言及もない。見れば見るほど異様な膝である(上の写真は2年前の五月場所のもの)。 

 

amazon.co.jp 

 

 いったいテープの下はどうなっているのか? 俄然、好奇心がわいてくる。どう考えてもこれは「器具」ではないか。テーピングなどという生易しいものでは全くない。ボロボロになった膝を補強するための器具を装着しているに違いないと、その種の器具をグーグルで検索してみた。こういうとき、グーグルは本当に便利である。 

 

 発見!  似たような形状のものがAMAZONで売られていた。丸く見えるのは蝶番のようなものに違いない。 

 

 さらに照ノ富士の膝の画像を検索してみると、稽古中の風景が見つかった。何のことはない。そこでは堂々と補助器具をつけたまま稽古に励んでいる姿があった。 

 

 よく観察してみると、初場所に装着している器具は、この稽古中のものよりももっとしっかりしているもののようにも思える。 

 

 それにしてもだ。こんなものをつけて相撲を取ることが許されるのだろうか? 相撲というのはまわし一つになった二人の男が、他には何も身に着けず、塩で清められた土俵の上で勝敗を決する神事ではなかったのか? こんなのありなのか。 

 

 そういえば、宮城野親方となった白鵬も現役時代、ごっついサポーターを右の二の腕に装着し、これでさかんにエルボーをかましていたことが思い出される。 

 

 膝をかばうためにこんな器具の装着が許されるなら、足首や腰や肩などを傷めた力士もそれなりの補助器具の装着が許されることになるのではないか。で、そのうち、こんな訳のわかんない器具を装着した力士が現れたりして。 

 

 この上にテーピングでぐるぐる巻きにしたら、もはや力士なのか、エジプトのミイラなのか分からなくなるというものである。 

 

 照ノ富士の器具装着が許されるのか、と先に書いたが、おそらくは日本相撲協会はこれを許しているのだろうと思う。これだけあからさまに違和感を醸しだしているのだから、協会の目につかぬわけがない。協会は表立って許可を与えていないまでも、黙認、「見て見ぬふりの沖識名」(このギャグが分からない人はどうぞググってください)を決め込んでいるに違いない。 

 

 

 ある相撲ファンが言う。 

 

 「そもそも、大相撲はスポーツではないんです。取り組み後に尿検査することもない。大相撲とは言ってしまえば、親方や力士、行司、床山、その他もろもろ約1000人の相撲関係者を食わせるための興行なんです。その意味では歌舞伎に似ているかもしれない。人気商売なんです」 

 

 なるほど。そう考えれば、照ノ富士は格好の役者、三白眼の閻魔様みたいな存在感あるヒールである。もし、照ノ富士がいなければ、確かに初場所はジョーカーのいない「バットマン」の様相を呈して、客の入りが悪くなっただろう。 

 

 先のファンが続ける。 

 

 「そんなわけで、器具を装着しようが何しようが横綱、照ノ富士の存在は欠かせないわけなんです」 

 

 対戦相手の力士もそのこと分かっているのか、照ノ富士の膝を積極的に責めることをしない。たまーに無謀にもけたぐりを仕掛ける力士がいるが、そんなときには照ノ富士は激怒する。形相が鬼のようになって、まるで「てめえ、このやろ。俺が膝が痛いことは分かってるだろ!」と、すさまじい怒りの反撃をみせるのである。 

 

 かくして今日も照ノ富士は痛い痛い膝を器具でかばいながら、のっそのっそと土俵に上がらねばならないのである。なにしろ1000人の仲間を食わせなくてはならないのだから。 

 

 「ひがーしー、てるのふーうじー、てるのふーじいー」。呼出の声音が哀調を帯びるのもむべなるかな、というものである。 

 

西川 清史(編集者) 

 

 

 
 

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