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都内の繁華街である港区に住む貧困層の実態について、港区に住むシングルマザーの生活を取材した記事を要約すると、以下のようになります。

 

 

港区に住むシングルマザーは元夫のDVとモラルハラスメントから逃れ、子どもとともに生活しています。

彼女は養育費や慰謝料を受け取っておらず、非正規雇用で働きながら生活しています。

また、住む場所や保育園などの制約から港区に住み続ける理由もあります。

子どもの教育費や将来のために貯金をしており、親の介護も行っています。

このように、豊かなイメージがある港区にも貧困層が存在し、彼らの生活は厳しいものであることが伺えます。

(要約)

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(※写真はイメージです/PIXTA) 

 

南青山、六本木、西麻布……都内屈指の繫華街を擁する港区。高所得者層が集まる街としても知られ、住民の平均年収は1,200万円です。一方で、華やかな大都会の片隅で生活に苦しむ貧困層がいます。「100均のアンパンマンチョコは贅沢すぎて買えない…」そんな声を漏らすのは、幼い子どもと2人、大都会を生き抜くシングルマザー。なぜ彼女は貧困に陥ったのか? なぜ家賃、物価の高い港区を離れられないのか? 直接お話を伺いました。 

 

↑麻布十番駅近くのカフェでお話を聞かせてくれた、港区母子さん 

 

↑実際に港区母子さんがWi-Fiを求めて逃げ込んだ網代公園 

 

日本のひとり親世帯の相対的貧困率は、直近の2021年で44.5%、およそ2~3世帯のうち1世帯の割合です(参照:厚労省「国民生活基礎調査」2 各種世帯の所得等の状況)。ひとり親家庭は貧困に陥りやすい傾向にあります。 

 

今回お話を伺った港区母子さん(仮名)は、養育費なし、生活保護なし、非正規雇用のひとり親世帯です。両親のサポートは受けられない環境にあり、完全にワンオペ育児のため、子どもが体調を崩したときは仕事を休まざるを得ず、休んだ分の収入は入ってきません。 

 

港区母子さんは子どもを産むまで順調なキャリアを積んできました。かつての年収は夫婦合わせて1,000万円以上、現代のパワーカップルです。経済的にゆとりある生活から、現在の状況に至った経緯を聞きました。 

 

Q まず、港区に住むようになったきっかけは? 

 

「数年前まで結婚していた、元夫が経営する会社が港区にあります。彼は名古屋出身ですが、戸籍が港区。実際に数十年間住んでいます。結婚したときにその会社の近くに新居を構えました。現在はそこから数駅離れた、港区内のアパートに住んでいます」 

 

Q 離婚のきっかけは? 

 

「元夫の度重なるDVとモラルハラスメントが原因です。夫はキレると感情を抑えることができず……暴言を浴びせながら殴りかかってきました。結婚前にはまったくそんな素振りがなかったので、驚きました……。 

 

暴力では気が収まらないとなると、私と未就学児の子どもは家から閉め出され、夜の街に放り出されます。 

 

夜道を彷徨い、近所に唯一Wi-Fiの通る公園を見つけたんです……! その公園から港区の相談窓口に連絡をとりました。港区は子育て支援は手厚いですが、一方でDVシェルターへの避難は要件が厳しく、仕事をもっている私は対象外で入れませんでした。親子でホームレスになってしまい、途方に暮れましたね……」 

 

親子でホームレスになったときは、どうされたのですか? 

 

「警察に相談すると『ホテルに泊まってください』と言われます……。その場でスマホから予約を取るよう促され、ホテルへ送迎されます。その後数ヵ月間は、安否確認の電話がきますね。 

 

連日となると、ホテル暮らしはコストがかさむのでネットカフェに泊まったり……。でもネットカフェは子どもの泣き声が迷惑になるので、そういうときには2段ベットのひと区間だけで過ごすシェアルームに泊まっていました。 

 

その他、カラオケボックスのオールプランで格安のものをリスト化して、いつでも駆け込めるようにしていました。運よく知人と電話が繋がったときは、電話口から頭を下げて泊めてもらっていました」 

 

 

夜の街に放り出される日々が数年間つづき、貯金もみるみるうちに減少したそうです。港区母子さんの現在の経済状況について詳しく伺います。 

 

Q 現在離婚調停中ということですが、元旦那さんから慰謝料や養育費は? 

 

「支払われていません。また、離婚を切り出した際に子どもの教育費として2人で積み立てた貯金約200万円を、無断で持って行かれました。『慰謝料だからな!』と吐き捨て、現在も持ち逃げ中です。離婚協議書には支払う意思が記されていますが、未だ振り込まれていません」 

 

Q 現在の収入源は? 

 

「慰謝料なし、養育費なし、生活保護なしなので、私が会社からもらっている給与で生活しています。加えて港区の児童扶養手当を受け取っています」 

 

Q かつては正規雇用だったとお伺いしましたが、いつから非正規雇用になりましたか? 

 

「子どもを産む以前は、現在勤めている会社の正規雇用でキャリアを積んでいました。そのため私の収入もそれなりにあり、当時は夫婦で1,000万円以上の世帯収入がありました。 

 

子どもが産まれてから元夫は育児に参加せず、ワンオペ育児になったため、勤務時間の融通が利く非正規雇用の契約に変更して、同じ会社に勤めています。 

 

その後離婚してさらに世帯収入がぐっと減りましたが、生活保護の受給要件となる金額設定を超えているため、生活保護は受給できません。 

 

正直、生活保護をもらっている方のSNSを見ていると、自分たちより豊かな生活送っているな……と感じることもあります」 

 

貧困に苦しむ港区母子さんは、なぜ生活保護の受給要件を満たせないのでしょうか。生活保護を受給するには世帯収入が、厚生労働省の定める最低生活費以下である必要があります。「最低生活費と収入を比較し、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給される」というシステムです。 

 

港区母子さんは非正規雇用とはいえフルタイムでオフィスに勤務しており、月の収入がこの最低生活費を超えているため、生活保護を受給することができません。 

 

ですが非正規雇用者が、生活保護を申請した時点の収入を毎月維持するのは決して容易では有りません。有給制度がない契約の場合、仕事を休んだ分だけ収入が減ります。 

 

Q 月収入の変動はありますか? 

 

「コロナ禍には子どもが通う保育園が2度の休園、親子でコロナ陽性、子どもの看病の長期化など、仕事を休まざるを得ない期間がつづきました。やむを得ず休職した月はついに収入0円になりました。 

 

当時、病児保育は予約でいっぱいでした。役所の児童相談所に問い合わせましたが『仕事を休んで減った収入分の補助は出ない』という対応でした」 

 

Q 収入0円の月は、生活費をどう捻出しましたか? 

 

「わずかな貯金を使いました。私は離婚後、運よく都営住宅に当選して現在家賃は9,120円です。大変助かっています」 

 

 

↑「カフェにくるのは数年ぶりです」と笑顔で話してくれた港区母子さん 

 

都営住宅とは住宅に困窮する世帯に供給される住宅で、その当選確率は押し並べて高倍率です。 

 

令和5年5月都営住宅募集入居者募集の抽せん倍率を確認すると人気の高輪一丁目(2人以上世帯)は108.5倍、芝五丁目(1~2人世帯)は45.1倍です。一方で、倍率が10倍以下の住宅が港区に11棟あります。港区母子さんにお伺いしました。 

 

(参照: 令和5年5月都営住宅募集入居者募集 抽せん倍率表|東京都住宅供給公社 ) 

 

Q 倍率の低い住宅を選んで応募したのですか? 

 

「その通りです。事故物件はそうでない物件に比べて倍率が著しく低いので、人が避ける事故物件と築年数の古い物件に絞って応募して、一発当選を目指しました」 

 

Q 港区の都営住宅に住んでいる以外に、港区に住み続ける理由は? 

 

「沢山あります。まず1つ目は、港区の保育園に子どもが通っているからです。 

 

子どもの保育園を探す保活をしていたときは離婚前です。港区内に保育園が見つからなければ、家族で区外に引っ越す心持ちで江戸川区や足立区なども調べていました。 

 

ですが当時の江戸川区、足立区は港区以上に空きが少ない状況でした。元夫が数十年間港区に住んでいたので、“区内の在住歴が長い世帯”とみなされポイント加算の対象となり、区内の保育所にすべり込むことができました。 

 

港区内でなければ、保育園はなかなか見つからなかったかもしれません」 

 

Q その他、港区で子育てをするメリットはありますか? 

 

「子育て支援やひとり親家庭支援が手厚いです。たとえば、港区がひとり親家庭に交付している『港区コミュニティバス乗車券』と、東京都交通局が児童扶養手当受給者(ひとり親世帯)に交付している『都営交通無料乗車券』の制度を利用しています」 

 

Q その他に利用している支援はありますか? 

 

「こども食堂が食品や日用品を配布するフードパントリーを利用しています。 

 

(※各団体によって利用対象者の要件は異なります) 

 

その他、お米やレトルト食品・日用品が掲載されているカタログから欲しいものを数品選んでウェブから注文すると、その商品を自宅に無料で配送してくれる『エンジョイ・セレクト事業』を利用しています。月4品、10,000円相当の支援が受けられるので非常に助かっています。もちろん、ひとり親家庭や生活困窮世帯向けのため、利用するには要件があります」 

 

 

2023年3月に、港区在住の0~18歳の子どもがいる世帯(所得制限なし)に向けて、子ども1人につき5万円分の子育て応援商品券が、給付されました。 

 

普段は節約のためお菓子はなかなか買えない港区母子さんですが、商品券を利用して、子どもに100円均一ショップでアンパンマンのペロペロチョコを2つ買ってあげたそう。満面の笑顔で喜んでくれてことがとてもうれしかったそうです。 

 

どうやら港区母子さんから見る港区と、ラグジュアリーなショップや施設が立ち並び、高所得者層が集まる一般的な港区のイメージとは乖離しているようです。 

 

Q 港区母子さんにとって、港区はどんなイメージですか? 

 

「表参道駅から徒歩5分のところに、東京大空襲で住宅不足になった戦後の青山エリアに建てられた、都営北青山三丁目アパート(旧・青山北町住宅、1947年・昭和22年建設)という都営住宅があります。当時は表参道ヒルズも、ハイブランドの路面店もありません。 

 

戦後から令和の現在に至るまで、同じ場所で公営住宅が維持されつづけている理由はただ1つ、必要としている人がいるからに他ならないのではないでしょうか。 

 

歴史を知っている、昭和の時代から港区に住む先住民の人たちは、ラグジュアリーな街だとは思っていないかもしれません」 

 

富裕層と、貧困と闘う親子――両者が暮らす多様性豊かな、懐の深い街。これが港区の素顔の1つです。 

 

Q これからの夢、目標はありますか? 

 

「子どもが18歳になるまでに大学資金を貯めたいです。子どもが望む進路に進ませてあげたいので、毎月わずかな額をコツコツ貯金しています。 

 

私は最低生活費レベルの収入があって、都営住宅住みです(さらに水道代の支払いには東京都の児童扶養手当証のひとり親世帯向け減免制度を利用しています)。 

 

それならば、言うほど生活は苦しくないのでは?と思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。私は親の介護をしています。両親ともに存命のため、介護費は2人分かかります。今後医療費などまとまった出費があれば、間違いなく生活できなくなってしまいます。そうならないためにも今から貯金しておくことが重要です。 

 

子どもが小さい今のうちに、どれだけ節約し、どれだけ貯金したかで、私たち親子の今後の人生は大きく変わると思っています」 

 

 

 
 

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