( 135776 )  2024/02/04 14:14:36  
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日本の謎や日本人の生活について迫った新書『日本の死角』が人気で、特に「ていねいな暮らし」についての議論が注目を集めている。

1960年代に専業主婦が多数派であったことから「ていねいな暮らし」が理想化され、2000年代にはスローフードブームが起こり、食事の時間や手作りの料理に対する需要が高まった。

2011年の東日本大震災後、生活の再考が進み、田舎暮らしやデュアルライフが増えた。

現代社会の忙しさや家事・育児への不満から、「ていねいな暮らし」への批判も増えている。

手作り情報の普及やSNSの影響もあり、暮らしの見直しと再発見が進んでいる。

『日本の死角』は、その他にも老後の成功や失敗についても掘り下げている。

(要約)

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〔PHOTO〕iStock 

 

 いま日本はどんな国なのか、私たちはどんな時代を生きているのか。 

 

 日本という国や日本人の謎に迫る新書『日本の死角』が8刷とヒット中、普段本を読まない人も「意外と知らなかった日本の論点・視点」を知るべく、読みはじめている。 

 

【写真】人生で「成功する人」と「失敗する人」の意外な違い 

 

 ここでは、「なぜ『ていねいな暮らし』はブーム化した一方、批判も噴出するのか」という文章の一部を掲載する。 

 

 なぜ、「ていねいな暮らし」は憧れの対象となり、同時に批判されたのだろうか? 高度経済成長期に専業主婦が既婚女性の多数派となり、「ていねいな暮らし」が理想化される時代が始まった。その後、2度目のブームが訪れることになり……。 

 

 2度目のブームの始まりは、2000年代に入って起こったスローフードブームである。不況が深刻になった1990年代の後で、「自己責任」という言葉が横行していた。インターネットと携帯電話が普及し始め、世の中はIT革命に沸いていた。 

 

 変化のスピードが加速し、ストレスが増したこの頃、反動のように、理想化された「昔ながら」のゆったりとした暮らしへの憧れが高まった。食事時間が削られていくからこそ、ゆっくり食事をしたいと望む。料理する余裕もなくなり、外食や中食への依存度が高まっていくからこそ、手作りの料理を求めたくなる。スローライフの魅力を伝える『クウネル』などの雑誌も登場した。 

 

 2011年、東日本大震災と原発事故により、暮らしの根本を揺るがされた人が大勢生まれる。 

 

 自分たちは何のために働いているのか。改めて問い直す風潮が生まれ、田舎暮らしを求めて移住する人や、都会と田舎の両方に拠点を持つデュアルライフを選択する人が増える。放射能汚染に脅かされる関東から、西へ移住した人たちもいる。 

 

 そうやって時間をかけて浸透した、暮らしの見直しと再発見が、「ていねいな暮らし」ブームへつながったのである。昭和のブームのときは、専業主婦と働く女性の暮らしには距離があり、手作りにハマる人たちが批判されることも、手作りライフが強制されているように感じている人もあまりいなかっただろう。手作り情報を遮断することもたやすかった。 

 

 しかし、今はインターネットが身近にあり、SNSを通じて楽しそうな「ていねいな暮らし」ぶりが目に入りやすくなっている。仕事を持つ女性が多数派となり、たくさんいる働く女性も多様になってきた。 

 

 中には、その情報を「あるべき理想」と受け取る人もいる。そんな風に彼女たちが思うのは、自分の母親がそうしていたからかもしれないし、多忙過ぎる日々に対し、うすうす疑問を抱いているからかもしれない。 

 

 日々の生活で、家事が行き届いていない今に不満があるからこそ、ほかの人の「ていねいな暮らし」ぶりに腹を立てるのである。それを自分にも求められていると感じて、いらだつのである。 

 

 その余裕のなさは、もしかすると、夫を家事の戦力としてあてにできないからかもしれない。一人で抱え込んでいるからかもしれない。生活を守るために忙しく働き、暮らしが荒れがちなことにいらだっているからかもしれない。 

 

 「ていねいな暮らし」批判は、人が心に余裕をなくす現代社会のありようを映し出しているのである。 

 

 つづく「老後の人生を「成功する人」と「失敗する人」の意外な違い」では、なぜ定年後の人生で「大きな差」が出てしまうのか、なぜ老後の人生を幸せに過ごすには「経営思考」が必要なのか、深く掘り下げる。 

 

現代新書編集部 

 

 

 
 

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