( 135940 )  2024/02/04 23:23:04  
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福岡空港近くにある「博多 とんこつラーメン 魁龍本店」は、硬い麺に注文を受け入れないポリシーを持っていることで口コミで賛否両論になっている。

しかし、店主の森山日出一氏によれば、「とんこつラーメンは硬めで食べるもの」というのは思い込みであり、実際には店のスープに合ったベストな茹で加減を提供したいからだという。

同店の麺は久留米風で、特に「ずんだれ」という硬さが店のこだわりだと述べている。

店主の森山氏は32年間呼び戻しを続けており、スープや麺にはこだわりと歴史が詰まっている。

そのため、アンチに何を言われても揺らぐことがない様子だと紹介されている。

(要約)

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「とんこつラーメンは硬めで食べるもの」というのは思い込みに過ぎない?(「魁龍」のラーメン) 

 

 SNSや口コミサイトでの評価が気にされることの多い時代に、お構いなしで我が道をゆく飲食店もある。福岡空港にほど近い場所にある「博多 とんこつラーメン 魁龍本店」はそのひとつだ。濃厚なスープは「どトンコツ」のフレーズで知られ、熱烈なファンがいる一方、ネット上のレビューを見ると、アンチも少なくない。 

 

【写真】命釜で32年!こだわりの“どトンコツ”スープを作る店主の森山日出一氏。麺はやわらかめの「ずんだれ」がスープによく合う 

 

 店に低評価をつける口コミを見ていくと、理由は「硬い麺」の注文を否定する店主の存在にあるようだ。 

 

〈かた麺、バリカタ、ハリガネとか注文したら説教されます!!〉 

〈バリカタ、粉おとしなどは本来の食べた方ではない、お好み焼きやタコ焼き、ホットケーキを生焼けで食べますか?っとウンチクが〉 

〈おっさんの講釈も聞きたくない〉 

 

 とんこつラーメンには硬めの細い麺というイメージがあるが、それを許さないポリシーが窺える。実際に同店を訪ねた。 

 

「な~んが“バリカタ”か。あれは茹で時間が短いだけ。『とんこつラーメンは硬めで食べるもの』というのは思い込みなんですよ。世の中にはいろんなラーメンがあります。うちのスープに合うベストな茹で加減で食べていただきたいから、ついつい、お客さんに熱く語ってしまう」 

 

 そう勢いよく話し始めたのは店主の森山日出一氏(64)。営業中の店内では大きな声で自説を披露しながら注文をさばく。その押しの強さがアンチを生んでいる面もありそうだが、森山氏は意に介さない様子だ。 

 

「SNSには悪口もいっぱい並んでますが、店で私に直接言っていただければ、麺の茹で方がいかに重要か、たとえ『ウザイ』と言われてもきちんと説明させていただきます(笑)」 

 

 同店では麺の茹で加減は「ずんだれ」が強く推奨されている。店内には「バリカタ、ハリガネ、コナオトシなどの商品はありません」と書かれた貼り紙が目立つ場所に掲示されている。森山氏が続ける。 

 

「もちろん麺の硬さも注文に応じます。当店ではずんだれ、ふつう、硬めの3種類を用意しています。でも、やっぱりまずはずんだれをご賞味いただきたい」 

 

 店名に「博多」とあるが、同店のラーメンは久留米風。麺はやわらかめの「ずんだれ」がベストになるのだという。 

 

「博多ラーメンは28番(太さ1.1mm)か26番(同1.15mm)の細麺、久留米ラーメンはだいたい22番(同1.4mm)の中細麺を使います。魁龍の麺も22番です。工場に特別に注文して作ってもらっている。それぞれの麺に適した茹で方をすることで、旨味を引き出す。ずんだれは私が長年研究してたどり着いた硬さなんです。 

 

 その味を知ったうえで、硬めの麺を食べると違いがよくわかる。味の差を知っていただくために、魁龍では3種類の茹で方を用意しているわけです。私だって、他店でラーメンを頂く時は、硬めを注文することがあります。その店のスープに合っていれば硬めもうまい。硬めの麺を全否定しているわけではないのです」 

 

 

 福岡県の久留米市はとんこつラーメンの発祥地と言われる。煮込んだタネスープに翌日の新しいスープを継ぎ足しながらさらに煮込む“呼び戻し”が特徴だ。森山氏はこう語る。 

 

「開店以来32年間、ずっと呼び戻しを続けています。呼び戻しって簡単に言うけど、とても難しい技術です。うちのスープは3日前、2日前、1日前のタネスープをブレンドして煮込んでいます。それにより味がまろやかになる」 

 

 厨房には4つの大きな鉄釜が並び、森山氏は“命釜”と呼んでいる。 

 

「鉄釜は長時間煮込むのには向いているのですが、熱の伝導率がいいので焦げやすい。だから目が離せません。つきっきりで煮込み続ける。そうすることで魂のこもったスープが仕上がる」 

 

 使う豚骨は豚の頭のみ。専用のスコップで力強く混ぜ、旨味を引き出す。命釜で32年間煮込まれたスープを森山氏は“どトンコツ”と呼ぶ。 

 

「濃いスープという意味ではありません。根性に“ど”を付けて“ど根性”。トンコツに“ど”を付けて“どトンコツ”です。命をかけ、魂を込めたスープという意味です」 

 

 このスープにいちばん合う麺が「ずんだれ」――というこだわりにつながるわけだ。 

 

 森山氏は高校を卒業後、ショーパブやカラオケスナックなどを経営。31歳の時に一念発起して北九州の小倉区に魁龍をオープンさせることになった(2001年に現在の博多区に移転)。しかし、オープン直前になっても思った通りのスープができない。悩んでいた時に、久留米から父親が訪ねてきたという。 

 

「父は若い頃、久留米でラーメン屋を営んでいたんですが、母方の両親に“水商売の男に娘はやれん”と言われ、結婚するためにやむなくサラリーマンになった。その父が、いくつかアドバイスをくれたんです」 

 

 ただ、当時は素直に父親の助言を聞き入れられなかったという。 

 

「僕も若かったですから、反発してね。喧嘩になった。でも、父親が帰ってから、その言葉が心に染みてきたんです。麺のことや調味料のこと……」 

 

 忘れられないのが、父に告げられた次の言葉だ。〈おい日出一、アクも味のうちなんぞ。全部きれいに取ってしまわんほうがいい場合もある〉――その指摘通り、アクを少し残して煮込んだところ、思っていた味のスープに仕上がった。 

 

「32年前、1992年4月6日に魁龍をオープンしたのですが、父はその年の7月に59歳で亡くなった。酒が好きな人でね、それが原因で内臓を悪くしていたんです」(森山氏) 

 

 魁龍のスープ・麺にはこだわりと歴史が詰まっている。だからこそ、アンチに何を言われても揺らぐことがないのかもしれない。(了) 

 

 

 
 

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