( 136596 )  2024/02/06 22:46:06  
00

自民党の補選後、茂木敏充幹事長と小渕優子選挙対策委員長が、派閥解散を巡って方向性が不透明な状況にコメントした。

その後、茂木派の一部議員が派閥からの離脱を表明したことで、派閥内での動きが活発化した。

特に小渕氏と青木氏の離脱が影響し、その後の動向が注目されている。

茂木氏にとって、派閥の解散は苦しい展開となり、小渕氏や青木氏の動向に加えて、麻生太郎副総裁との関係も影響する。

さらに、森喜朗元首相が小渕氏を支援し、次の首相候補として物事を動かそうとしているという様相が浮かび上がっている。

(要約)

( 136598 )  2024/02/06 22:46:06  
00

衆参ダブル補選後、取材に応じる茂木敏充幹事長と小渕優子選挙対策委員長=2023年10月22日、東京・永田町の自民党本部 

 

 安倍派の裏金事件を機に岸田文雄首相の岸田派も解散するなど派閥の解散が進む自民党だが、瀬戸際で方向性が定まりにくいのが茂木敏充幹事長が会長を務める茂木派(平成研究会)だ。派閥が茂木氏の力の源になっていただけに、簡単には解散できない事情がある。一方で、これを機にと派閥から離脱する議員もいる。自民党内の“政局”に大きく影響してくるだけに、それぞれの思惑が絡み、動きが活発化している。 

 

【写真】意外?といえば意外。茂木氏が警戒すべきは小渕氏ではなくこっち 

 

 1月25日、茂木派の小渕優子選対委員長が退会を表明し、その後、26日には青木一彦参院副幹事長も後を追う形で退会を表明した。小渕氏の父恵三氏と、青木氏の父幹雄氏は、恵三氏の首相時代に幹雄氏が官房長官として支えた間柄だ。 

 

 こうした動きは派閥内の他の議員にも影響したようだ。 

 

 26日夕。茂木派の複数の議員にSNSでメッセージがまわった。 

 

<いい機会なので、茂木から離れようではないか。風が吹いてきた> 

 

<会長だったから支えてきたが、派閥がなくなればカネもポストも握れない。乗り換える理由になる>  

 

<いずれ小渕をトップにして、青木が支えるという体制ができるはずだから、そちらに乗るか>  

 

 などと記されていた。 

 

■派閥離脱者続出で茂木氏には苦しい展開 

 

 SNSを受け取り、「いいね」と返信した茂木派のある参院議員は、 

 

「茂木派は、茂木氏が会長ではあるが、小渕氏を首相に、という勢力が青木氏をはじめ参院ではかなりいる。岸田派の解散が、ケンカ別れにならずに茂木派から離れるいい口実になったということです」 

 

 と話した。 

 

 小渕氏や青木氏のほか、関口昌一・党参院議員会長ら複数の派閥幹部も同調しており8人が退会を表明している。今後、さらに離脱する議員が出るとみられる。そうなると、「次の首相」を狙う茂木氏にとっては苦しい展開となる。 

 

 茂木氏が自民党の幹部として力を保持できるのは、派閥の会長として多くの議員を束ねてきたからだ。総裁選となれば、派閥を動かして推薦人、票を集めることができる。茂木氏にとって、首相の座をつかむには、派閥の会長であることが絶対条件だったのだ。 

 

 

 茂木氏は1月29日の記者会見で、茂木派について「いわゆる派閥としては解消する」と述べた。「カネと人事」から決別するとした、党の政治改革に向けた中間報告を意識したとみられるが、「政策集団」という形で外枠は残す方向だ。 

 

 それに加えて、茂木氏が簡単に派閥を解散できない背景には、第2派閥を率いる麻生太郎副総裁との関係もある。茂木氏が次の総裁選で「ポスト岸田」をめざすには、派閥存続を訴え、「数の力」を保持しようとする麻生氏の後ろ盾が必要だからだ。 

 

 そして、茂木氏が警戒するのは、早々と派閥を出た小渕氏だ。小渕元首相の娘であることに加え、森喜朗元首相という大きな後ろ盾がいる。 

 

 森元首相が小渕氏を推すのは、小渕元首相や青木元官房長官との関係からだ。小渕元首相が病に倒れ、都内のホテルの一室に集まった党幹部、いわゆる“5人組”の密談で、小渕氏の後継に森元首相が座った。森元首相は、青木氏を引き続き官房長官に起用している。 

 

 森元首相にとって、青木元官房長官は早大雄弁会の先輩でもあり、青木元官房長官の「お別れの会」では、生前本人が「いずれは党総裁に」と推していた小渕優子氏について、「あなたの夢、希望がかなうように努力する」とあいさつしている。森元首相にとっては小渕氏を支えるとの思いは強い。 

 

■派閥離脱した小渕氏を森元首相がさらにプッシュ 

 

 岸田派の国会議員は、 

 

「『ドリル優子』とやゆされている小渕氏について、森元首相は岸田首相に『安倍派があなたを推しているのだから、小渕氏を幹事長に』と迫ったという。しかし、さすがにそこまではまずいと言って、選対本部長でなんとか納得してもらった。それほど、森元首相は小渕氏に入れ込んでいる」 

 

 と打ち明ける。 

 

 安倍派も解散となった現状で、小渕氏も茂木派を出るとなれば森元首相がさらにプッシュすることは十分、考えられる。 

 

「森元首相も首相候補は握っておきたい。岸田首相が安倍派『5人衆』らにケジメを迫っているが、森元首相はなんとかそれを回避しようと、必死で動いている。ただ、5人衆は裏金で全員アウト。二度と浮上しないかもしれない。安倍派以外で森元首相のお眼鏡にかなう人となれば、小渕氏でしょうね。茂木氏のバックにつく麻生氏を含め、そこに物を言えるのは森元首相くらいしかいない」 

 

 と安倍派の衆院議員は見る。 

 

 

 最大派閥だった安倍派が解散し、5人衆全員が主流派から転落した。混沌(こんとん)としてきた岸田首相の「次」の候補に、小渕氏も名乗りをあげようとしているのだろうか。 

 

「小渕氏が茂木派を割ったというのは当然、将来を見据えてのこと。小渕氏は昨年、選対本部長就任時『幹事長と思っていたのに』と上昇志向たっぷりに語っていたからね。茂木氏の欠点は、麻生氏のような上の立場の人とはいい関係が作れても、下からの評判がよくないこと。安倍派解散で茂木氏にはチャンスだったのに、敵は身内の小渕氏だった。ある意味、窮地に追い込まれていますね」 

 

 そう話すのは、長年、自民党の政務調査役として手腕をふるった政治評論家の田村重信氏だ。 

 

■茂木派の別の閣僚経験者も「次の首相」候補に 

 

 そして、田村氏が注目しているのは、茂木派の加藤勝信元官房長官の存在だという。官房長官を退いてからは名前が聞かれなかった加藤氏だが、 

 

「重要閣僚を経験しているので、次期首相の有資格者です。茂木氏は岸田首相より年齢が上だから、今年9月の自民党総裁選で勝負するしかないです。小渕氏はまだ若く、先に同じ派閥の加藤氏に譲ってその後に、という戦略も立ちます。また加藤氏が党役員、閣僚で小渕氏を支えてという形もあります。加藤氏がどう動くかが、小渕氏が浮上できるかどうかのカギかもしれません」 

 

 と付け加えた。 

 

(AERA dot.編集部・今西憲之) 

 

今西憲之 

 

 

 
 

IMAGE