( 137156 )  2024/02/08 14:14:20  
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2025年までに、「みどりの窓口」が7割近く減る見通しである。

各駅での窓口減少に伴い、指定席券売機が増えている。

新幹線や特急の予約はインターネット経由やスマホアプリから行われることが一般的になりつつあり、利用者の間からは「駅の窓口削減は不便だ」との声が多く上がっている。

JR各社が提供する予約サービスにはさまざまな特徴があり、「EXサービス」が使いやすく評価されている一方で、「えきねっと」は使いにくいとの声が多い。

在来線特急の予約も含め、各JR会社が独自の取り組みを行っている。

(要約)

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「みどりの窓口」は2025年までに7割ほど減る 

 

 ここ数年、JRの各駅から「みどりの窓口」が姿を消し、新幹線や特急の指定席を購入する窓口が減少している。代わりに駅に並ぶのは、指定席券売機だ。 

 

【画像】 使いにくいよ「えきねっと」 

 

 一方で、新幹線や特急はインターネット経由での予約が当たり前になりつつあり、スマホアプリから予約可能なものも多い。チケットレスで全てが完結する場合もあれば、指定席券売機で発券しなければならない場合もある。 

 

 利用者からは「駅の窓口削減は不便だ」という声が多く、鉄道会社が非難されるケースが多い。従来はきっぷを買う人が駅係員に話しかけ、駅員がその内容を解釈した上でJRグループが運用している予約・発券システム「マルス(MARS)」の端末に入力していた。それが今では、予約の方法によっては利用者自らがマルス端末に入力するのと同じような手間が発生している。 

 

 列車の指定席予約サービスといえば、主にJR東海・西日本・九州の「EXサービス」と、JR東日本・北海道の「えきねっと」が挙げられる。ほかにも、在来線を中心としたネット予約システムとしてJR西日本・四国の「e5489(いいごよやく)」、JR九州の「インターネット列車予約」がある。 

 

 しかし、スマートフォンのチケットレスアプリで使えるのは、「EXサービス」と「えきねっと」がメインとなっている。 

 

 JR東海などが提供する「EXサービス」は、その使いやすさから多くの人の支持を得ている。新幹線の予約に特化しており、チケットレスで大半のことができる点が大きい。 

 

 紙のきっぷの場合、運賃・特急料金の表示が分かりにくかったが、シンプルに「運賃」として表示されるようになっている。鉄道の運賃・料金の制度で理解しにくいところをあらかじめ処理した上で、鉄道利用者に分かりやすいサービスを提供しているのだ。 

 

 さらにすごいのは「EXアプリ」である。予約変更などが手元ででき、遅延などが発生した場合はプッシュ通知で知らせ、アプリ自体の操作性も高い。東海道・山陽・九州新幹線の予約に特化したことで、ここまで使いやすい予約サービスを作り上げている。 

 

 では在来線はどうなのか。JR西日本や四国では「e5489」、JR九州でも独自の予約サービスを設けて対応している。「e5489」とチケットレスサービスを組み合わせた在来線特急の指定席を確保するサービスもある。 

 

 例えば、交通系ICカードとネット予約を利用して指定席を確保し、それをきっぷ代わりとして岡山から出雲市、あるいは大阪から金沢といった区間の乗車も可能になる。JR西日本では交通系ICカードが「エリアまたぎ」でもケースによっては利用できるように自動改札機を対応し、チケットレス化を促進してきた。このことは「EXサービス」の使いやすさとは関係がないものの、チケットレスの活用法として知っておきたいことである。 

 

 またJR東海では、在来線特急の停車駅にはなるべく「きっぷうりば」(JRの「みどりの窓口」に相当)を設置し、自由席も残している。普通の券売機や車内精算でも対応できるようにしている。 

 

 JR東海の在来線特急はそれほど混雑しないため、こういった対応も可能なのだ。「EXサービス」は新幹線に特化し、在来線は在来線で使いやすくすることで、利用者から不満が出にくい体制を整えている。 

 

 

 このあたりの状況を考えると、「EXサービス」と対照的なのが、さまざまな人から延々と「使いにくい」「使いづらい」と言われるJR東日本の「えきねっと」だ。 

 

 なぜ、「えきねっと」はこんな言われ方をするのか。実際に使ってみると、確かに非常にやっかいな代物である。 

 

 新幹線や在来線特急のチケットレス、新幹線や在来線の紙のきっぷを発券する予約機能などが詰め込まれている一方、アプリでしかできないこと、Webでしかできないことなどが細かく分かれている。 

 

 予約の際にも、自ら指定席券売機を操作しているような使いにくさがある。しかも在来線特急のチケットレスは、交通系ICカードのエリアの関係で紙の乗車券の発券が必要になるケースもある。場合によっては乗車券・特急券を「えきねっと」で予約し、指定席券売機で発券する必要がある、といったこともある。 

 

 ひとつのサービスに課せられた役割が、多すぎるのだ。そのあたりが「EXサービス」と比較して「えきねっと」が使いにくい要因になっているのだ。 

 

 JR東海は、東海道新幹線が収益の柱となっている企業だ。JR西日本は、ローカル特急もありながらも、それを便利にしていくしかない。JR四国は、JR西日本の協力が不可欠となる。JR九州は、駅係員を減らしてネットに移行したいと考えている。 

 

 こうした企業の事情が、「EXサービス」とその他ネット予約を成立させている。JR東海・西日本・九州は、東海道・山陽・九州の各新幹線が稼ぎ頭で、それらを便利に使用してもらうことが会社にとって重要なのである。 

 

 そのため、新幹線に特化した「EXサービス」に全精力を傾け、よりシンプルで、より使いやすいものにした。結果、「EXサービス」の高評価につながり、「使いやすい」といった声を集めるようになった。多くの人が利用する新幹線を中心に、便利なチケットレス化を推進する企業戦略が感じられる。 

 

 一方、「えきねっと」はそう簡単に割り切れないサービスである。新幹線でも在来線でもチケットレスを提供したい。新幹線のチケットレスは簡単だが、在来線がからむとそうはいかない事情がある。東京から新青森までチケットレスを使っても、新青森~青森間の乗車券を別に買う必要があった。ちょっと前までこのエリアで交通系ICが使えなかったが、ようやく導入が始まったのだ。 

 

 このように個別具体的でやっかいな事情があり、それが「使いにくい」と言われる一因になっている。さまざまな経緯を持つサービスを「えきねっと」にまとめたからである。 

 

(小林拓矢) 

 

ITmedia ビジネスオンライン 

 

 

 
 

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