( 137781 )  2024/02/10 13:53:34  
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トヨタのプリウスが自動車事故に関連してよく報道されるが、それはプリウスが事故率が高いからではなく、ドライバーの過失が原因である。

プリウスの普及率の高さが報道で目立つ理由のひとつである。

特に高齢者ドライバーの場合、プリウス独特の操作に慣れずに運転を誤り、事故を誘発するケースが多い。

プリウスのハイブリッドシステムが事故につながる可能性もあるが、最も重要なのはドライバーの技術や注意力の向上であり、トヨタも安全技術の強化や運転支援システムの導入を行っている。

プリウス所有者や高齢者だけでなく、全てのドライバーが慎重な運転を心がける必要がある。

(要約)

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2022年10月31日撮影、東京都内の自動車ショールームに掲げられたトヨタのロゴマーク(画像:AFP=時事) 

 

 自動車事故のなかでも、「プリウスミサイル」という言葉はインターネット上で特に有名だ。これはトヨタ・プリウスが制御不能に陥り、他の車両に衝突した際にミサイルのように見えるからである。いわゆるネットスラングである。 

 

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 特に注目されている理由は、プリウス特有のハイブリッド車(HV)の性能や制御に関する問題が議論されているからだ。 

 

 グーグルのキーワード検索を表示するツール「グーグルトレンド」を見ると、2019年4月以降、「プリウス ミサイル」の検索数が急増している。これは、世間やメディアがこの現象に敏感になっていることを示しており、検索数の急増の背景には、事故が頻発していることや、その衝撃的な映像がテレビやSNSで拡散されていることがある。 

 

 自動車事故の報道にはプリウスがたびたび登場する。なぜこの車種だけが「事故率が高い」と見なされているのか。 

 

HVのシフトレバー(画像:写真AC) 

 

 プリウスが自動車事故の報道に頻繁に登場するのは、このクルマの事故率が高いからではなく、別の要因による。プリウスは環境性能と経済性から多くのドライバーに選ばれているトヨタのHVである。この普及率の高さが、プリウスが事故報道で目立つ理由のひとつである。 

 

 2022年までに、日本におけるプリウスの累計販売台数は100万台を突破。プリウスは世界各国で人気車種となっており、世界販売台数は500万台を超える。 

 

 しかし、これだけ多くの人に選ばれているプリウス自体に非はない。問題はあくまでもドライバーにある。特に高齢者ドライバーの場合、プリウス独特の静かな走行環境、スムーズな加速、特殊な操作に慣れずに運転を誤り、事故を誘発するケースが多い。 

 

 なお、インテージの自動車に関する調査「Car-kit」のデータによると、4代目プリウスの購入者は60代以上のシニア層が過半数を占めている。 

 

 また、情報サイト「MOBY」が2022年に発表した新型プリウスに関するアンケート調査では、新型プリウスに興味があるかという質問に対し、「興味がある」と回答した50代、60代は48.68%と約半数を占めた。その理由は「低燃費」「環境にやさしい」といった印象のようだ。 

 

 しかし、そのような高齢者にとって、プリウスの操作方法は複雑に映るのかもしれない。例えば、プリウスのシフトレバーがわかりにくいという理由も挙げられている。 

 

 プリウスのシフトレバーは小型でジョイスティックのような形状をしており、横に倒して前後に動かす。この操作方法は、特に初めてプリウスに乗る人には直感的に理解できないかもしれない。 

 

 しかし、繰り返しになるが、事故の原因はプリウスではなくドライバーの過失である。 

 

 

ミサイルのイメージ(画像:写真AC) 

 

 事故につながりそうなプリウスの特徴を考えるとき、そのハイブリッドシステムは重要な要素である。詳しく説明すると、プリウスは電気モーターとガソリンエンジンを切り替えてスムーズな加減速を実現しているが、これが事故につながる可能性があると考えられる。 

 

 例えば、急加速時には電気とガソリンエンジンの両方が使われるため、思わぬ加速につながる可能性がある。また、低速域ではモーターのみで走行するため、歩行者に気づかれにくい可能性もある。特に高齢ドライバーの感覚の低下と組み合わさると、事故のリスクが高まる可能性がある。 

 

 HVは従来のガソリン車とは異なる運転体験を提供するため、その仕組みに不慣れなドライバーにとっては操作が難しい場合がある。また、低速域でのモーター走行が静かなため、ドライバーが車速を誤認しやすく、誤ってアクセルペダルを踏んでしまうリスクが高まる可能性がある。 

 

 このため、プリウスそのものが事故の原因とされることが多いが、実際には事故の多くはドライバーの運転ミスに起因している。したがって、事故防止には車種よりもドライバーの技術や注意力の向上が最も重要なのである。 

 

 プリウスでは、いくつかの具体的な事故防止策がとられている。まず、トヨタはプリウスをモデルチェンジするごとに安全技術を強化している。最新モデルでは、自動ブレーキシステムや衝突回避支援システムなど、ドライバーの誤操作を助け、事故のリスクを低減することを目的とした先進安全技術を搭載している。 

 

 特筆すべきは「急アクセル時加速抑制機能」である。これは、ドライバーが誤ってアクセルペダルを強く踏み込んだ際に、車両の加速を抑制することで、誤発進や急発進による事故を未然に防ぐことを目的としたシステムである。これにより、特に高齢ドライバーに発生しやすいアクセルとブレーキの踏み間違いによる事故の減少が期待される。 

 

 さらに、高齢者向けに運転支援システムの導入や教育プログラムの充実も検討されている。日本では、高齢ドライバーの安全運転意識向上を目的とした特別講習が義務付けられている。これらの講習では、高齢者特有の運転リスクや、新しい自動車技術への適応方法などが教えられている。 

 

 結局のところ、プリウスが事故に関係する頻度は、ドライバーの技量と注意力にかかっている。もちろん、高齢者やプリウス所有者のすべてが危険なドライバーというわけではないし、プリウスでの強引な運転や事故が話題になると 

 

「またプリウスか……」 

 

と思われることを不快に感じる人も多いだろう。そうした固定観念を拭い去り、「プリウスミサイル」という言葉を過去の遺物にするためにも、ドライバーひとりひとりが慎重な運転を心がける必要がある。 

 

木村義孝(フリーライター) 

 

 

 
 

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