( 138591 )  2024/02/12 23:10:51  
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過去10年間で国内の酎ハイ市場は2倍に拡大し、ストロング系酎ハイはかつて40%以上占めていた市場シェアが26%まで縮小した。

健康意識の高まりなどが要因で、アサヒビールも新しいストロング系の商品を発売しない方針を決めた。

この動きについては、他の大手企業も適正飲酒の啓発活動を強化しているが、アルコールに関する規制が日本は緩いため、ストロング系の市場は影響を受ける可能性があるという見方もある。

アサヒビールはグローバル化を進めており、海外の視線にも配慮していると指摘されている。

(要約)

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シェアが縮小しているストロング系酎ハイ 

 

国内の酎ハイ市場の売り上げは、去年はおよそ5300億円と、この10年間で市場規模はほぼ2倍に拡大しました。このうち、アルコール度数が8%を超えるいわゆる「ストロング系」が占める割合は、かつては酎ハイ市場の40%以上を占めていましたが、去年は26%まで縮小しました。「安くて短時間で酔える」と人気を集めてきたストロング系は、なぜシェアが減ったのでしょうか。追跡しました。 

 

 

横浜市にあるスーパー「アピタ」。酒売り場に向かうと、売り場で目立っていたのは、アルコール度数3~5%の商品を集めた低アルコールコーナーです。キャッチコピーは「かわいくて、甘くて、いろいろ飲みたい」。しかし、このスーパーをWBSが8年前に訪れたときには、アルコール度数が8%を超えるストロング系の商品が売り場の半分以上を占めていました。 

 

一時は酎ハイ市場の40%を占めたストロング系だが、現在は26%と減少 

 

この8年で一体何があったのでしょうか? 

 

「ストロング系の商品の売れ行きはどうですか」(角谷暁子キャスター) 

 

「ピーク全盛期に比べるとかなり減少しています。店に占める割合でいうと4~5割くらい。皆さん健康を意識してなのか、無糖だったりとかそういう商品が売れる」(「アピタ長津田店」の岩田渉食品副店長) 

 

このスーパーではコロナ禍で消費者の健康意識が高まったことを背景に、ストロング系の売り上げが減少。売り場も縮小していったのだといいます。 

 

低アルコール飲料を求めに来た客に話を聞くと「(アルコール度数が高めの商品は)手に取らないです。あまり強いと。9%はやっぱりきついですね」「若い時は飲んでいたが、最近は健康とか考えると飲まない」と、やはり健康を意識しているとの声が上がります。 

 

こうした中、アサヒビールはストロング系の缶酎ハイについて、今後は新商品を発売しない方針を決めました。一体なぜなのでしょうか。 

 

「ストロング系の缶酎ハイを今後新しく発売しない理由は?」(角谷キャスター) 

 

「グローバル、SDGs、健康にいいことをしようという動きの中で、飲酒問題がやはり取り上げられている。ローアルコール、ノンアルコールの方に戦略的にシフトすることを考えている」(「アサヒビール」マーケティング本部の梶浦瑞穂本部長) 

 

アサヒビールがいま力を入れているのが、ノンアルコールの分野です。去年9月には、東京・渋谷にノンアルコールカクテルなどを楽しめるバーを開業。ノンアルを新たな経営の柱と位置付けています。 

 

「アルコールがたくさん入っていなくても、十分楽しめるような商品を次々に展開したい」(梶浦本部長) 

 

2010年にストロング系市場に参入したアサヒビール。2020年には79種類のストロング系を展開していました。しかし、その数は急激に減少し、現在は一部の店舗で流通する1商品のみとなっています。 

 

今回の決定について業界関係者からは「アサヒは健康リスクを理由に撤退することで、ストロング系の市場をリードするサントリーやキリンを牽制する狙いがあるのではないか」との声もあります。 

 

アサヒビールがストロング系の新商品の発売をやめることについて、街で聞いてみると「時々飲むぐらいだが、自分の中の選択肢が1個消えるのはちょっと寂しい」「たくさん飲んでいたので悲しい。良さは、すぐ酔えるところ」との声があがりました。 

 

 

アサヒビールに追随する動きは? 

 

アサヒビールに追随する動きは出るのでしょうか。 

 

ストロングゼロを販売する「サントリー」スピリッツカンパニーの高橋直子RTD部長は「現時点で決まっているものはない。今後も客のニーズに対応できるマーケティング活動、適正飲酒の啓発活動、いずれの活動もしていきたい」と話します。サントリーでは、企業の新入社員向けに適正量の飲酒を呼び掛けるセミナーなどを開催しています。 

 

一方キリンもLINEを活用して、日々の飲酒量の記録などができる法人向けの支援サービスを展開しています。キリンビールマーケティング部の松村孝弘さんは「今後の商品展開は現時点で決まっていない。引き続き適正飲酒の啓発を強化したい」と話します。 

 

サッポロビールは「アルコール度数8%以上のRTD新商品の発売は行わない」と今後は新商品を発売しない方針だと明かしました。 

 

アルコールの健康問題に詳しい筑波大学医学医療系の吉本尚准教授は、ストロング系酎ハイについて次のように指摘します 

 

「『9%を1本買うより、7%を2本買って』と言った方がメーカーはいいと思う。コスパのいい商品を出すのは業界の首を絞める部分も若干ある。経営という意味でもプラスになる。そういう選択につながればありがたい」 

 

2023年のラグビーW杯では看板が「スーパートライ」に 

 

アサヒビールの動きについて、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は、背景にグローバル化があると指摘します。 

 

「アサヒビールはいま、かなりグローバル化を進めていて、売り上げの半分が海外。株主も大体4割が外国人だと言われている。だから海外の目が気になる」 

 

「一方、日本は実は世界で最もアルコールの規制が弱い国の一つだ。コンビニでも購入でき、路上飲みもできる。これは普通の先進国ではあり得ない。このギャップを理解することが大事で、実際、去年のラグビーのワールドカップでアサヒビールはスポンサーだったが、スタジアム内でスーパードライという看板を出せず『スーパートライ』にした。ステークホルダーのプレッシャーに応えるためにも、事業も難しくなってきた局面なので、そういった(ストロング系の缶酎ハイの新商品の発売をしない)決断を促す側面もあったのではないか」 

 

※ワールドビジネスサテライト 

 

 

 
 

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