( 139001 )  2024/02/14 12:54:04  
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作家で演出家の鴻上尚史さんが、問題の本質を「原作者と脚本家」ではなく、「出版社とテレビ局」に置くことを指摘しました。

彼は、出版社やテレビ局に忖度せず意見を言える立場の人が少ないため、問題の真相が表面化しないと述べています。

また、小学館と日本テレビには問題の経緯をきちんと説明する必要があると語っています。

彼は今後も問題の本質を理解し認識を広めていくことが重要であると訴えています。

(要約)

( 139003 )  2024/02/14 12:54:04  
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鴻上尚史さん 

 

いまだ収束の兆しが見えない『セクシー田中さん』問題。原作の提供や脚色の経験がある、作家で演出家の鴻上尚史さんのXでの投稿が注目を集めている。問題の本質は、「原作者と脚本家ではなく、出版社とテレビ局です」と鴻上さんは話す。その真意を聞いた。 

 

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*  *  * 

 

――なぜXにあのような投稿をしたのでしょうか。 

 

 ずっと心を痛めていたんですが、論点が原作者と脚本家の話、つまり、原作をリスペクトするべきかどうかとか、原作に忠実に脚本を書くことなどできないといったようなことがたくさん話されていて、この問題の本質からどんどん離れて行ってしまっているように思ったんです。Xで書きましたが、問題の本質は「原作者と脚本家」ではなく、「出版社とテレビ局」です。でも、一向にそのことを指摘する人が出てこない。だから、書きました。 

 

――どうして問題の本質に言及する人が出てこなかったのでしょうか。 

 

 私のように原作を提供したり、脚色したりする経験があって、なおかつテレビ局や出版社に忖度しないで意見を言える立場の人が少ないということが一因だと思います。漫画家さんは、小学館と関係がなければ言いやすかもしれませんが、連載していたら難しいですよね。脚本家さんはいつテレビ局からお呼びがかかるかわからない。こちらも意見を言うことが難しい。それに今ネットでは「脚本家=悪」という空気があるので、余計に発信しづらいと思います。私がXに投稿した後、知り合いの脚本家の何人かから連絡があって、「よく言ってくれた」と言われました。それだけ、出版社やテレビ局に関係のある漫画家や脚本家には言えないことなんだと思います。 

 

■「出版社とテレビ局」の問題という認識が広まってほしい 

 

――鴻上さんは問題の本質を「出版社とテレビ局」とおっしゃっています。 

 

 原作者の中には様々な理由から『テレビ局側にお任せします』という人もいれば、全部チェックさせてほしい、変更はしないでほしいという人もいます。一方で、脚本家もプライドを持って作品づくりをしています。場合によっては原作を変更する必要があるかもしれない。どれが良いとか悪いということではありません。 

 

 問題は、出版社が原作者の意向をどのようにテレビ局に伝え、それをテレビ局が脚本家にどう伝えたのか。そして、原作者の要望と違う脚本が上がってきたときに、テレビ局はその理由を出版社にどう伝え、出版社はどのように原作者に伝えたのか、原作者を守ったのか。考えるべきはここにあると思っています。 

 

――小学館と日本テレビはどのような対応を取るべきだと思いますか。 

 

 今回の問題で不安に思っている漫画家や、混乱している脚本家もたくさんいると思います。出版社もテレビ局も、これから先、漫画家や脚本家と友好な関係を築いていきたいのであれば、きちんと経緯を説明した方がいいのではないかと思っています。(このインタビューのあと、脚本家さんの文章が発表されました。その中に「私にとっては初めて聞くことばかりで、それを読んで言葉を失いました」という言葉があるのですから、テレビ局はちゃんと説明した方がいいと思います) 

 

――この問題は今後どうなっていくでしょうか。 

 

 テレビ局の対応次第でしょう。今回の問題はわかりやすい「犯人」が出てくるようなものではない。ネット上では「犯人」や「敵」を見つけることに躍起になっている人がいます。私のXの投稿にも、きちんと読んでくれて、問題は「出版社とテレビ局」という意見に賛同してくれる人もいましたが、「脚本家が悪いに決まってるじゃないか」などというコメントもたくさんありました。 

 

 とにかく、一人でも多くの人に、今回の問題は「原作者と脚本家」の問題ではなく、「出版社とテレビ局」の問題だという認識が広まってほしいです。それだけでも大きな変化だと思っています。 

 

(構成/AERA dot.編集部・唐澤俊介) 

 

 

 
 

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