( 139283 ) 2024/02/15 00:27:19 0 00 JR新大阪駅前のタクシー(写真と本文は関係ありません)
京都大学大学院教授・藤井聡氏が警鐘
一般ドライバーが自家用車を使って有償で客を運ぶ「日本版ライドシェア」が4月から一部の地域などで部分解禁される。国交省は、2年更新が必要な国の許可制とすることなどを盛り込んだ制度案を審議会に示したが、タクシー業界は、拙速な検討は行わないよう要望している。京都大学大学院教授で地域公共交通が専門の藤井聡氏は、ライドシェア導入は「日本社会の秩序破壊をもたらす懸念がある」と警鐘を鳴らす。
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国交省は7日の審議会で、ライドシェアを国の許可制とし、出発地と到着地、客が支払う運賃は事前に確定させ、原則キャッシュレス決済とすることなどの制度案を示した。タクシー会社の管理を条件とするため、許可対象も会社となる。4月からの部分解禁を経て、6月には全面解禁に向けた法整備に関しても結論を出すとしている。
ライドシェアは安さや便利さを売りに、米国や欧州の一部、中国などで拡大した。
日本では全国の法人タクシーの乗務員数がコロナ禍で約2割減ったこともあり、菅義偉元首相や河野太郎デジタル相、小泉進次郎元環境相らが本格的な解禁を訴えている。
しかし、国交省でタクシー事業に関する審議会の委員も務めてきた藤井氏は「いま国交省が示している制度ならば大きな問題が生じる懸念は少ないが、仮に法改正を伴う全面解禁があるなら、人手不足対策としてのライドシェアは間違った処方箋だ。解禁すれば車の数も増え、結果的にタクシー運賃は激しく下落し、人手不足は修復不可能な状況まで深刻化するだろう。タクシー業界で離職が進んだ一番の理由は低賃金だ。人手不足解消に最も効果的なのは、政府が介入して、『賃上げ』と適正台数に基づく『減車』を行うことだ」と話す。
タクシー業界関係者からは「運転手の供給不足も現在は回復の兆しも見えてきている。人手不足が解消されたとしても、ライドシェアは導入ありきなのか」と疑問の声も上がる。
藤井氏は、海外での先行事例では、安全対策などの必要経費を削減した結果、ドライバーによる性犯罪や事故などのトラブルが多発していることにも言及する。
「運賃が安ければ安いほど安全は失われる。本格的に解禁されれば、いずれ外資系企業も日本で直接的にビジネスを展開する。中国資本などによるライドシェア企業が成長することは確実で、国内タクシー会社の倒産が拡大するだろう。日本のタクシーサービスの不足が加速すればデフレも加速する。ライドシェア導入がもたらすものは日本の秩序破壊だ」と指摘した。
先月、横浜市内で行われた神奈川県タクシー協会の賀詞交歓会には小泉氏も出席したが、ステージの両脇には「ライドシェアと称する白タク行為の断固阻止!」と大書された垂れ幕があった。同県関係者からは「ライドシェアが始まれば箱根や鎌倉の渋滞はさらに悪化するよ。これほど急ぐ理由は一体何か」と冷ややかな声も聞かれた。
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