( 140308 ) 2024/02/17 23:28:47 0 00 タイでもすっかり、日本の若者を見かける機会が減ったという(Getty Images)
いまの日本には多くの外国人観光客が訪れるようになったが、一方の海外では日本人、特に若い世代の観光客を見かける機会が減っているという。可処分所得が増えない状況で物価高が進み、くわえて昨今の円安トレンドで、海外旅行は完全に贅沢なものになっている。
【画像】200円で食べられるタイのラーメン
そうした状況を海外で実感しているのが、現在、タイに長期在住中のネットニュース編集者・中川淳一郎氏だ。中川氏曰く、「かつて日本人の若者が大量にいたバンコクで日本の若者をほとんど見なくなった」という。「若者の海外旅行離れ」の現状について、中川氏がリポートする。
* * * 私はいま、タイに滞在中です。そりゃあ日本人だっていますよ。でも、日本人をよく見かけるのは、駐在員とその家族が多いスクンビットや、駐在員男性が行くキャバクラ的な店や日本食飲食店が立ち並ぶターニャ通りです。かつてバックパッカーが大挙してやって来ていたカオサンロード周辺や、王宮を中心としたバンコク屈指の観光地から、めっきり日本の若者の姿が見えなくなったということです。
2月中旬現在、中国の「春節」にあたることから中国人観光客が多いことと、元々白人・インド人・イスラム系が多いことは理解していましたが、日本人よりも韓国人のほうが目立つ状況にあります。
その背景には、円安や物価高など、様々な要因があるのでしょうが、このような「日本人が海外旅行に行かなくなっている」といった記事が出ると、ネットでは以下のような反論や言い訳が来るのが、この10年以上定番でした。
「日本の方が海外より治安はいいし、食事はおいしいし、日本語が通じる。なんでこんないい国からわざわざ出る必要があるんだ? お前らはただの『海外厨』『海外出羽守』だろ(笑)。そして日本は英語を学ぶ必要もないぐらい日本語だけでキチンとカネを稼げる国なんだよ。東南アジアと一緒にするな!」
海外に日本人が行かないことを憂慮すると、このように開き直る方々がとにかく多い。そんな中、「アメリカではバイトの時給が5000円」といった記事も見かけるわけで、それなら1年間のうち、アメリカで11ヶ月で1400万円ほど稼いで節約生活をして、日本に1ヶ月帰って貯金を日本の銀行に入れる、というライフスタイルもアリではないかと思うのです(もちろん税金をしっかり払うのは大前提)。
先日、日本のGDPがドイツに抜かれ、4位に転落しました(1位はアメリカ、2位は中国)。それでも、長らく日本は世界2位の経済大国だったというプライドがあるため、今の状況をまだ受け入れられない人もいるのでしょう。
無駄なプライドを持つはやめなさい。もはや日本は「衰退途上国」です。築地やニセコでは、5000円の牛串やら8000円の海鮮丼、3000円のラーメンが、海外の人から「安い安い!」と買われているような時代です。もう、日本は観光立国として、金持ちの外国人様に傅く人生を本格的に考えなくてはいけないのです。
今私がいるタイでは、現状はまだ日本人を(きちんとカネを払っている)ホテルでは上客として扱ってくれているし、物価水準も地元の人が行くような店では日本と比較しても割安です。写真のラーメンはこれだけチャーシューやワンタンが入っていても200円です。ところが、マクドナルドやKFC、バーガーキング、スターバックスといったグローバルチェーンは、もう日本よりも高い。バーガーキングでセットを頼んだら1200円ですよ。欧米人が多数来るような飲食店では日本より高いのはザラ。
これを高いと感じる私を含めた日本人は、東南アジアでも飲食店等では上客扱いされなくなってきます。そうしたことから「若者の海外旅行離れ」が確実に進んでいるわけです。もはや日本のフツーの若者がアメリカやEUに旅行するのは、かなりキツいでしょう。
この現状をさっさと認め、反骨心をもって国を発展させなければならないのです。「若者の海外旅行離れ」という一言で「キーッ!」と沸騰するような人は、いい加減に現状を直視してほしい。日本は一部の富裕層を除き、貧乏国家なのです。
【プロフィール】 中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など多数。最新刊は『日本をダサくした「空気」』(徳間書店)。
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