( 141561 )  2024/02/21 14:15:48  
00

新型コロナウイルス禍で台頭した無人販売は、低迷している中、スイーツを扱う無人販売店「24」が急成長している。

スイーツは豊富な種類や見た目にこだわった新商品が次々登場し、ラインアップを柔軟に入れ替えられるため、スイーツが優位性を持っている。

24はリピーターづくりに力を入れ、SNSや口コミで評判のスイーツを提供し、消費者満足度が高いことで注目を集めている。

価格帯は400~1200円で、無人販売なのでコストが抑えられるため、価格優位性がある。

将来的には価格を下げる計画や商品開発を進める予定。

(要約)

( 141563 )  2024/02/21 14:15:48  
00

無人販売とスイーツ、この組み合わせがなぜ強いのか(写真提供/トゥエンティフォー) 

 

 ギョーザが盛り上がりをけん引した無人販売は、新型コロナウイルス禍が生んだ現代のビジネスモデルと言える。しかしアフターコロナを迎え、かつてほどの勢いはすっかりなくなった。そうした状況にあって急激に店舗数を増やしているのが、「スイーツ」を扱うある無人販売店だ。一体何が違うのか。 

 

【関連画像】現在の一番人気はショートケーキ缶。見た目のインパクトも大きい 

 

 帝国データバンクの調査によれば、ギョーザの無人販売店は2022年度に1282店舗あった。20年度の131店舗から約10倍に拡大したという。このギョーザを筆頭に、ホルモンや焼き芋など様々な無人販売店が登場している。 

 

 現在は特需が一服した感のある中で、勢力を急激に伸ばしているのがスイーツを扱う無人販売店「24(トゥエンティフォー)」だ。 

 

 1号店の五日市本店(広島市)は23年1月にオープン。その後FC(フランチャイズチェーン)店募集をスタートさせると加盟を希望する問い合わせが殺到し、およそ1年後の24年2月には78店舗まで急拡大した。FC店募集そのものは商品の供給体制を整えるため23年9月から停止していたが、24年2月26日に再開する予定だ。「24年は150店舗まで増やすのが目標」と運営元であるトゥエンティフォー(広島市)代表取締役の久保田翔也氏は意気込む。 

 

 以前の勢いを失いつつある従来の無人販売店を横目に、トゥエンティフォーがこのような快進撃を続けられるのはなぜか。 

 

 まず、そもそもの話として「スイーツ」を商材に選んだ時点で優位性が生まれている。スイーツには豊富な種類があり、味だけでなく、見た目にもこだわった新商品が次々に登場する。はやり廃りに応じて商品ラインアップを柔軟に入れ替え可能だ。 

 

 24の冷凍ケースにも日本全国の売れ筋スイーツが勢ぞろい。現在であれば一番人気はフルーツサンド専門店で有名な「纏(まとい)」(徳島県藍住町)の「ショートケーキ缶」で、23年12月は約2万5000個も売れた。ほかに「OSAKA OMUSUBI Cake」(大阪市)の「おむすびケーキ」や「フランダースフリッツ」(福井市)の「みたらし団子瓶」も人気商品だ。 

 

 一方でギョーザやホルモンなど特定ジャンルに絞った場合、スイーツのようにはいかない。ひとたび消費者に飽きられてしまえば巻き返すのは難しい。 

 

 また手堅いニーズを見込める点も大きい。スイーツを頻繁に購入するのは20~40代の女性で、24を支持しているのもまさにこの層だ。特に大都市圏の人気スイーツを手に入れづらい地方をメインに出店を進めていて、ニーズを確実にキャッチしている。ターゲットを深く絞らず、立地の良さや24時間営業といった利便性で勝負してきた従来の無人販売店とは一線を画す。 

 

 スイーツのニーズを手軽に満たしてきたのは王道スイーツを扱うコンビニだが、「そういったものをほとんど置いていないので、お客を取り合うことはない」(久保田氏)。それどころか、あえてコンビニの近くに出店し、24時間営業の“王者”の力を拝借。「コンビニへ行くついでに当店に寄ってもらうことも想定している」と言う。 

 

 

 こうしたスイーツそのものが持つ強みを背景に、24が最も力を注ぐのがリピーターづくりだ。同店で扱うスイーツはSNSや口コミの評判などを基に厳選しているため、来店者の購買意欲を強く刺激する。現時点で開拓した取引先は70以上あり、店頭には常に50~100種類のスイーツが並ぶ。 

 

 1回の来店では買いきれないほど消費者の選択肢は多いこともあって、次の来店につながりやすい。いつ訪れても「選べる楽しさ」と「新鮮な出合い」があるというわけだ。 

 

 「商品ではなく、店舗にリピーターをつける。ここに勝機を感じて、スイーツの無人販売ビジネスをスタートさせた」と久保田氏。模倣店対策も万全で、取引中のスイーツ店の半数以上と独占販売契約を結ぶ。今後も24オリジナルのスイーツを着実に増やしていくという。 

 

 こうした消費者の満足度が高い店作りを徹底する24には、強力な追い風も吹く。ターゲットの女性たちはインスタグラムなどで話題のスイーツに敏感で、自身も投稿する。「インスタで気になっていたスイーツを買えた!」。24で買い物をした客が投稿することも多く、「認知度の向上に確実につながっている」(久保田氏)。 

 

 また同社によるSNS広告も新規客の呼び込みに貢献し、リピーター客を増やす素地になっている。ただ、そのノウハウについては「明かせない」(久保田氏)とのことだった。 

 

 気になる価格はどうか。24に並ぶスイーツの価格帯は税込み400~1200円。取り扱うスイーツの平均単価は同約600円なので、コンビニスイーツよりは高く感じるかもしれない。ただ、24に並ぶスイーツの価格は実店舗と同等、もしくは高くても1割増しだという。1000円近い送料がかかることが珍しくない通販よりは価格優位性がある。「無人販売なので人件費を抑えられるのに加え、各店から卸価格で提供されているからこその値付けだ」(久保田氏) 

 

 課題は、精算方法の改善だ。現在はタブレット上で購入したい商品を選んでもらうようにしているため、押し間違いがあるなど必ずしもユーザーファーストになっていない。より簡単なバーコード読み取り方式を順次採用して、使い勝手の向上を図る。 

 

 ゆくゆくは商品価格も下げる考えだ。「無人販売店は固定コストを抑えやすい分、もっとお客に還元する余地がある。長期的なプランとして、各スイーツ店とのこれまでの関係性を生かして、価格訴求するプライベートブランドの開発を視野に入れている」(久保田氏) 

 

橋本 歩 

 

 

 
 

IMAGE