( 143036 )  2024/02/25 23:12:35  
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EVの充電インフラに関する最新情報を取材しました。

現在の充電器は、出力150kW程度で頭打ちになる可能性があるとされています。

急速充電器の出力が高いほど充電時間が短縮されますが、出力の上限は実質的には150kW程度が限界とされています。

政府は充電インフラの設置目標として急速充電器で3万口を掲げ、補助金も増加しています。

新たな参入事業者が増え、競争が激化しています。

EV普及に向けて、充電インフラの拡充が重要であり、利便性を向上させる必要があるとされています。

(要約)

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「充電インフラって、これからどうなるの?」 

  

 すでにEVのユーザーになっている人も、EV購入をこれからか考えようかと思っている人にとっても、大いに気になるところです。 

  

 そんな充電インフラの最新情報について、EV業界各方面への取材を通じて探ってみました。 

 

【画像】これが日産の「高級軽」です。豪華内装の画像を見る!(30枚以上) 

 

EVの充電インフラどうなる? 

 

 まずは、充電の出力について触れます。 

 

 どうも、日本では出力150kW程度で、当分の間は頭打ちになる可能性がありそうなのです。 

 

 EVやプラグインハイブリッド車(PHEV) 向けの充電方法は、大きく3つあります。 

 

 ひとつが、出力6kWていどの普通充電。 

 

 自宅や会社、またホテルやショッピングモールでよく見かける比較的小型の充電器です。 

 

ふたつめが、出力3kW前後で一般的な電気のコンセントを使ったもの。 

 

 そしてみっつめが、出力50kW前後かそれ以上の急速充電器。 

 

 日本の場合、CHAdeMO (チャデモ)規格を採用しています。 

 

 そのほか、テスラが採用し、近年はノース・アメリカン・チャージング・スタンダード(NACS)と呼ばれるようになった急速充電できるシステムがあります。 

  

 こうした充電器の出力が高ければ高いほど、充電時間は短くなります。 

 

 単純な計算をすると、搭載するバッテリー容量が50kWhのEVに、出力50kWで急速充電すれば、「50kWh ÷ 50kW = 1h(1時間)」。 

 

 ただし、現在自動車向けに使用されているバッテリーは様々なタイプのリチウムイオン電池で、安全性や耐久性などを考慮して満充電の約8割で充電器の出力を絞る制御が働きます。 

 

 そのため、単純計算した充電時間よりは若干時間が長くかかります。 

 

 また、現在のルールでは、急速充電の1回の使用は30分単位。 

 

 もし、自分が充電中に充電待ちの人が入れば、続けて充電できずに充電器を譲らなければなりません。 

 

 また急速充電は、高速道路のSA・PA、道の駅、自動車ディーラーなどに設置されている場合が多く、移動中の「経路充電」という考え方です。 

 

 ユーザーとしては、できれば充電器の出力を上げてもらって、充電の一枠である30分間で可能な限り多く充電したいと思うものです。 

 

 そこで、直近では大手充電インフラ事業者のeモビリティパワーが中心となり、これまで主流だった出力50kWから最大で90kW、または最大で150kWを可能とした新型急速充電器の設置が進んでいる状況です。 

 

 また、ドイツのフォルクスワーゲングループとしての試みとして、日本国内のアウディとポルシェの正規ディーラーで出力150kW急速充電器を整備するようになりました。 

 

 では今後も、急速充電器の出力がさらに上がっていくのでしょうか。 

 

 結論から言えば、NOです。 

 

 現在発売されているほとんどのEVと充電器が、電圧400V対応で設計されているからです。 

 

「電圧(V)x電流(A)=出力(W)」ですので、400Vで150kWを出そうとすると、 

「150kW (150000W) ÷ 400V = 375A」となります。 

 

 現在流通している急速充電器は、ベースの電流を250Aていどとしており、その上で短時間ならば電流をより多く流すことが可能な設計になっています。 

 

 いわゆる、ブーストモードと呼ばれる仕組みです。 

 

 電流が上がると、ケーブルなどの熱対策として冷却装置をつける必要があるなど、コストが上がる要因となります。 

 

 ならば、一部のドイツメーカーのように、電圧を800Vに上げれば、電流を抑えて高出力の急速充電が可能となります。 

 

 そもそも、ポルシェは出力350kW・電圧800Vの急速充電を想定して「タイカン」と、兄弟車であるアウディ「e-Tron GT」を企画しました。 

 

 同プロジェクトが立ち上がった当時、筆者はドイツでプロジェクトリーダーから直接、その経緯を聞いています。 

 

 また、日本メーカーでは日産がメディア向けの電動車関連技術説明会の際、将来的には電圧800Vへの対応を検討するとの考えを示しています。 

 

 しかし、電圧800V化となると、急速充電器の設置要件などで各種法令・法律の見直しや改正が必要という手続き上のハードルがあります。 

 

 さらに、急速充電器のコスト自体も、電圧400V対応と比較するとかなり高いのが実状です。 

 

 そのため当面の間、急速充電器は電圧400Vを維持する可能性が高いものとみられ、そうなると結果的に出力150kWが実質的な限界値となります。 

 

 しかも、前述のように出力150kWは一時的に可能であるだけで、実質的な出力は90kW程度がベーシックな性能になるでしょう。 

 

 

 直近で、国は充電インフラの設置目標として、急速充電器で3万口、また普通充電器で27万口、あわせて30万口を掲げています。 

 

 それを実現するために、充電インフラに関する国からの補助金も、2022年度が65億円、2023年度が175億円、さらに2024年度には360億円という案を示しており、補助金はハイペースでの増加傾向にあります。 

 

 潤沢な補助金制度を背景にして、2023年から充電インフラサービス事業への新規参入が目立つようになり、事業者間の競争が激化している状況です。 

 

 そうした中、EV充電インフラ事業を展開する、ENECHANGE(エネチェンジ)は、政府のEVインフラ政策に対する課題と提言を公表しています。 

 

 それによると、例えばEV充電区画にEV以外が駐車していることが場所によっては珍しくない状況にあるため、EV優先車室及びコーン設置の義務化が必要だとしています。 

 

レクサスはオーナー専用の急速充電ステーションを各地に展開し始めている 

 

 そうしたことも加味して、充電インフラ拡充で最も重視すべきは充電インフラの稼働率だと指摘します。 

 

 現状で稼働率は各事業者から独自発表がベースですが、将来的には充電器の通信・制御の仕様を標準化することで、充電インフラの稼働率の見える化が可能となり、補助金の実質的な効果が上がるとの見解を示しました。 

 

 EV普及に向けては、EVが先か、充電インフラが先という「鶏と卵」の関係と表現されます。 

 

 そのためにも、充電インフラが今後、EVユーザーの利便性を重視した方向でしっかりと拡充が進むことを期待したいと思います。 

 

桃田健史 

 

 

 
 

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