( 143536 )  2024/02/27 13:34:28  
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大阪万博の2億円かかるデザイナートイレ問題に対し、元プレジデント編集長の小倉健一氏が取り上げ、問題について議論を提起している。

万博のトイレ建設費の問題やデザイン性に対する疑問、その他の論点について触れ、大阪維新のダブルスタンダードについても言及している。

(要約)

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AdobeStock 

 

 大阪万博の2億円かかるというデザイナートイレが物議を醸している。この問題を提起した、作家で元プレジデント編集長の小倉健一氏に真相を聞いた。フェアさをうたってきた大阪維新のダブルスタンダードが見え隠れするーー。 

 

ーー小倉氏は、大阪万博のトイレの建設費が2億円近くかかるものがあるとして、ネットメディア上で、問題提起をしました。この記事は、多くの反響を生んで、万博大臣や府知事などが釈明に追われています。この問題に取り組んだきっかけはなんですか。 

 

(小倉健一) 

 

 そもそも「万博リング」の設置が話題になったとき、議論の終着点が「かっこいいからいいんだ」という形で終わってしまったことにちょっとしたモヤモヤがあったのですよね。 

 

 大地震のあった能登町に、イカキングという巨大モニュメントがあることは、みなさん、よく知っていると思います。あのときは「イカキングは6億円の経済効果があるからいいんだ」というので、詳しく調べてみたら、経済効果はデタラメの算出をしていたことがわかり実際にはほとんどゼロに近いのではないのか。 

 

 そして、イカキングの関連事業で12億2100万円もの税金支出があって、さらに維持費、修繕費の費用などを考慮すると、むしろ地域経済を疲弊してしまう現実があることがわかったんです。イカキングは2740万円の総事業費のうち2500万円は新型コロナウイルス対応として国が地方に配った2020年度の地方創生臨時交付金で作られているので、当初、批判を受けました。しかし、一方で、経済効果6億円に比べれば、2740万円など安いものだという受け止めがあったのです。でも、実際は違った。 

 

 万博リングについても、万博を是が非でも進めたい勢力がいる以上、変なことが起きているのではないかと考えたのが、きっかけですね。大阪万博は大阪維新の構想した壮大なプロジェクトの一部で、ここがコケると、IRも一緒にこけてしまう。だから維新関係者は必死で万博の成功に動いているように見えます。ダイヤモンドの記事で触れたので詳しくは述べませんが、現在世間で出回っている<万博の経済効果>なるものは、ほとんどが万博の開催関係なく発生するものを足し合わしたもので、しかも、マイナスの経済効果については一切触れていないものです。 

 

ーー整理したいのですが「2億円トイレ」問題は、何がダメだということですか。 

 

(小倉健一) 

 

 いくつか論点があると思います。 

 

 まず、イカキングと一緒で、トイレだけにお金がかかっているわけではなく、万博リング、休憩所などありとあらゆるものにデザイン性を求めていること。 

 

 

 次に、半年で役目を終えるトイレは、通常のトイレと同等以上の金額をかける必要があるのかということ。 

 

 3つ目、公衆トイレの建設費が高騰しているのは、東京都の渋谷区を中心に、自治体が競い合うように公衆トイレをデザイン性の優れたものにしていることが背景にあり、そもそもそんなものを税金で作る必要はないこと。 

 

 4つ目が、万博にそのようなデザイン性に富んだものが必要なのかということ。市役所や公立学校のトイレで十分だと考えるのが一般人の感覚だと思います。X上で、ある女性が「野外音楽フェス」と同じトイレでいいのではと、発信していました。野外音楽フェスでは、仮設トイレ、もしくはちょっと豪華な仮設トイレが使用されています。本当にその通りだと思いました。被災地の能登に、私自身足を運びましたが、まだ上下水のインフラが復旧されず、みな、仮設トイレを使っています。 

 

 しかし、この被災地の仮設トイレですが、清掃が行き届いてるために、匂いも汚れも一切ありませんでした。快適に使っていましたよ。 

 

 5つ目、集客のために素晴らしいトイレが必要で税金を積極的に投入すべきだというのなら、万博で赤字が出た際には、リーダーは、きちんと責任を取るべきと思います。その責任については曖昧なままです。運営費を黒字にすればということではなく、当然、トイレ建設費も含めた事業全体で黒字にすべきです。 

 

 以上の論点をすべてクリアするのはおそらく不可能であるのが現実だと思いますが、だったら、誘致してきた関係者は、万博が終わるその日まで、税金を負担させられる国民、特に大阪府民に、謙虚に謝り続けてほしいと思います。 

 

ーー橋下徹氏や吉村洋文大阪府知事が、2億円トイレ批判を打ち消すべく、X上で積極的に発信しています。 

 

(小倉健一) 

 

 そうですね、興味深く見守っています。例えば、2月21日19:52に、橋下氏が「万博トイレが6ヶ月で廃棄するなら、一般の公衆トイレと単価比較するとコスト的には圧倒的に高くなってしまう。コスト論ではなく意義を!」と投稿しました。この意見に、私は100%同意します。 

 

 

 おかしいのは、それを受けた吉村知事の投稿(同日21:50)です。「万博トイレは廃棄ではなく、会期後のリサイクル等も考慮して仕様を決定することになっています。/ただ、仰る通り、コスト論ではなく、その意義が重要です…」、長文なので、まず冒頭からいきます。これは橋下氏が投稿したことを受けての返答なのですが、答えになってません。リサイクルをするからといって、コスト的には圧倒的に高くなってしまうことは、何も変わりません。支離滅裂です。 

 

 さらに、続けて「万博トイレは、万博の意義を考え、若手建築家が考え抜いて挑戦しています。/万博の批判は全部僕が受けますが、若手建築家には批判に負けず、挑戦して欲しいと思います」「万博トイレは、万博の意義を考え、若手建築家が考え抜いて挑戦しています。/万博の批判は全部僕が受けますが、若手建築家には批判に負けず、挑戦して欲しいと思います」「トイレは会場に生理的に必要なものですが、万博トイレは、目的ではなく手段と捉え、ある意味、若手建築家の小さなパビリオンと捉えています。」「万博を登竜門として、この若手建築家、日本から、世界的建築家が生まれる契機になるかもしれません」としています。 

 

 読んだの多く人は非常に感情的な文章だと感じるのではないのでしょうか。一見して、その通りと思ってしまうかもしれませんが、これまで橋下氏が府知事、市長在任中にやってきたことと違いがあることに気づきませんでしょうか。 

 

 周囲が「魂を込める」といくら説得したところで、そんなものは要らないと、バッサバッサと補助金や誰かに偏る優遇政策を切ってきたのが、橋下改革だったわけです。非常にフェアな判断でした。しかし、万博では、若手が魂を込めた事業なら、税金の支出をすることをオッケーとしてしまうのでしょうか。 

 

 橋下氏は大阪市長時代に、世界遺産ともなっている人形浄瑠璃「文楽」の補助金をバサっとカットしましたが、若手が魂込めて演じた文楽から、世界的な認知を受けることもあるかもしれません。 

 

 

 2022年に、京都市役所がエレベータードアを500万円かけて漆(うるし)塗りに改修したことを、吉村知事は「京都市はエレベーターに500万円もする漆塗りの扉を設置した。財政難と訴える市になぜ漆が必要なのか」(5月14日)と訴えています。この京都市役所の漆塗りエレベータードアが若手工芸家が魂込めた作品だったら、吉村氏はOKなのでしょうか。 

 

 万博トイレが「恐ろしく低コストで清潔で匂いもない」という設計に奔走し、若手行政マンが魂込めてつくったのなら、「ジャパンクオリティ」として世界的な認知を得るのではないのでしょうか。 

 

 吉村知事が感情的になるのは、政治家ですから仕方がないとしても、発言の前提に税金をつかってやっているという認識が希薄なのは残念です。フェアな判断をすべきです。橋下氏とのそんなやりとりを見るにつけ、かつての大阪は、維新がすごかったのではなく、橋下氏が一人で頑張り、周りはその本質がよくわからないままに応援していた結果なのかなと思わざるを得ません。大阪で、なぜか行政が米配ってますけど、あれも若手農家が魂込めた結果なのですかね。 

 

小倉健一 

 

 

 
 

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