( 144221 ) 2024/02/29 13:43:46 1 00 玉城デニー知事は、米軍普天間飛行場の辺野古移設工事の中断を求めているが、政府は移設を進める姿勢で、対立が続いている。 |
( 144223 ) 2024/02/29 13:43:46 0 00 玉城デニー氏HPより
---------- 「県民の民意を受け止めてほしい」。2月17日、木原稔防衛相との会談で玉城デニー知事はこう訴え、米軍普天間飛行場の辺野古移設工事の中断を求めた。一方の木原氏は「辺野古移設が唯一の解決策」と強調、議論は平行線をたどった。1月末、林芳正官房長官との会談に次いで、折り合いがつく気配は一切なかった。こんなやり取りが何年もの間にわたって続いている。
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玉城氏を筆頭に移設反対を続ける「沖縄の民意」と、強硬な移設を進めようとする「政府」。日々のニュースではこうした構図が定番になっており、ネット上でも「基地移設を受け入れるべき」「政府こそ計画を撤回しろ」と双方の意見が飛び交っている。
だが、現実はそこまで単純ではない。沖縄問題を取材する記者の目から見ると、一枚岩のはずだった反対派に「異変」が起きているというのだ──。 ----------
辺野古上空(photo by gettyimages)
昨年末、肺炎での入院を経験し、体調が心配されていた玉城デニー知事だが、2024年に入ってからは精力的に活動を続けている。フィリピンやシンガポールを訪問するなど、フットワークも軽い。
だが、内心穏やかでないのは間違いないだろう。2024年は、玉城氏にとって政治生命の正念場を迎えることになるからだ。
自民党政権と対峙し続け、国政野党の支援を受ける玉城氏。その公約の一丁目一番地は、市街地のど真ん中にある米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を阻むことだった。しかし今年に入り、玉城氏が阻止してきた大部分の埋め立て工事に、ついに政府が着手した。玉城氏にとっての最後の防衛ラインが破られ、公約は「無効化」されてしまったのだ。
そして6月には、現在1議席差で自民など野党に迫られている「県議会の改選」が待ち受けている。過半数を失えば玉城氏は「死に体」となり、着々と進む辺野古工事を尻目に、自身の率いる「反対派」の政治勢力は力尽きることになる。大いなる政治決戦だが、勝算は立っていない。
普天間飛行場の名護市辺野古移設──90年代から続くこの問題は、沖縄以外の国民にとって関心が大きいものではなくなりつつある。
民主党政権が県外移設を掲げながら断念するなど迷走。移設の是非が繰り返し選挙で争点化され、心の底では「本当は基地はない方がいいに決まっている」と考える県民の間でも狭い地域社会で分断が進み、やがて「辺野古疲れ」「諦め感」が醸成されて久しい。
玉城デニー氏HPより
そうした空気の中で、今年1月に辺野古問題はついに「終わった話」になった。年末年始を挟み、政府はこれまで県の拒んできた工事の承認を「代執行」し、工事を開始した。玉城氏は自身が移設反対の民意を受けて当選したことを踏まえて、「県民の民意は決して揺らぐことはない」と語気を強めたが、万策尽きてしまっているのが実態だ。
海底で発見された軟弱地盤の存在から防衛省は「設計変更」を余儀なくされたうえに、玉城氏の強い意志によって辺野古移設工事は停滞を続けていた。埋め立てを予定する海域に投入する土砂の大部分を占める「大浦湾側」の工事は、知事の承認なしでは進められない。
ところが、国には「奥の手」があったのだ。政府は「代執行」で押し通し、現在も着々と石材の投入が進められている。紆余曲折を経て一度決まった国策の方針は、簡単には覆らない。中国の習近平国家主席が軍拡を進める中、日米安保を強化したい政府にとって、間違っても工事の中断で先方に誤ったメッセージを発することなどできない。
もっとも、着手に至る政府の手法が問題だらけなのは確かだ。代執行は地方自治法で定められた合法的な手段だが、かつての地方分権改革で国が都道府県に委ねた権限を、国が取り上げる側面も持つ。玉城氏は県民に選挙で選ばれた。玉城氏が、2019年には辺野古問題に絞った県民投票で反対が多数を占めたことを根拠に、「対話に応じない国は強権的だ」と非難するのには一定の理がある。
ただ、結果的に政治家・玉城氏が公約の一丁目一番地に掲げてきた「移設阻止」は、これで無効化された。移設に反対する姿勢は断固として崩していないが、今後、目に見える形で工事が進めば、玉城氏ら「オール沖縄」勢力が一層細っていくことは明白だ。
そもそも「オール沖縄」は、自民党の重鎮だった故・翁長雄志氏が知事に当選し、保守勢力や支援企業も巻き込んで結成されたものだ。辺野古反対のワンイシューでまとめられ、「県民の意思」が演出された。
当時、翁長氏に対峙する首相官邸の窓口は安倍晋三首相や菅義偉官房長官だったが、玉城氏が上京しても首相や長官や出てくることは今やなくなった。翁長氏の後継候補として知事に就いた玉城氏の求心力は、2018年の当選直後と比べて陰りを見せ、現実的に「辺野古移設を阻止できる」と考えている支持者は少ない。
さらに玉城氏を支える「オール沖縄」の結束力も弱まっている。翁長氏を支えた経済界はすでに離脱し、共産党主導が強まった。政党の間でも不協和音が響き、県民の無党派層にも「ただ反対しているだけ」との不信感を与えている。
ネット上で「反基地」「親中」「左翼」などと非難されるが、そもそも実際の玉城氏の政治信条は「革新」ではない。日米安保や自衛隊の存在を容認、長く自民党に在籍し、在職中に急逝した翁長氏の保守路線を継いだ。自身も衆院議員時代、小沢一郎氏と行動をともにしてきた。
しかしそうした点は、県民にあまり重視されていない。2022年に再選を果たしたが、1期目の後半は、全国でも東京や大阪に並ぶ規模で感染者が拡大したコロナ禍の対応に忙殺され、基地問題の比重は自然と下がっていた。タレント出身の発信力を持ち味に、「何となく『頑張っている』ように映っていた」。玉城氏の支持・不支持を問わず、選挙に関わった関係者は口を揃え、「デニー人気」の根強さを語っていた。
裏を返せば玉城氏は「政策」が評価されたり、「思想」に共感する人が多かったから当選したとは言い切れないのだ。再選を果たした後も、県民が「辺野古反対」の一点で選択したとみる者は沖縄政界ではほとんどいなかった。
翁長氏がまとめあげた「オール沖縄」は弱体化し、玉城氏の求心力も低下し続ける。それを象徴するかのように、2021年から2022年にかけ、重要選挙と位置付けられた衆院選や市長選で、玉城氏の支持する候補が次々に自民系に敗れている。なんと玉城氏の地元、自身の後継が現職だった衆院沖縄3区までも、自民に奪還された。
知事選を除き、唯一オール沖縄がその座を守ったのが2022年7月の参院選だった。事実上の一騎打ちとなった両陣営が双方とも27万票を超えた全県選挙でありながら、その差は2888票差、「首の皮一枚」での勝利だった。
70歳の革新系現職・伊波洋一氏に迫ったのは、38歳の元キャリア官僚・古謝玄太氏。官僚が縁のない地方の選挙に出馬することは全国では珍しくない。
この総務省官僚は沖縄県出身だったが、全県で選挙運動を担う市町村議員や町村長などの動きが鈍かった。保守系と言えど「ウチナーンチュ」色の薄いエリート候補に、少なからず拒絶反応があったからか、当選を果たすことはできなかった。
ただ、政治経験がない上、「内地」で長く勤務した若者によるこの善戦は、玉城氏ら辺野古反対派に衝撃を与えた。「オール沖縄・玉城氏」と自公、「辺野古阻止」と「諦め」がついに拮抗するに至ったことを如実に示したからだ。
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『「辺野古」反対派は高齢化、「共産党」に支配され…玉城デニー知事を支える「オール沖縄」内部崩壊寸前の「悲惨すぎる現状」』に続く…
田仲太郞
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