( 145001 )  2024/03/02 22:16:07  
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兵庫県高砂市の男性校長がコンビニのセルフコーヒーマシンで、レギュラーサイズの料金でラージサイズの分量を入れたことで懲戒免職処分を受けた。

元校長は数千万円の退職金や教員免許を失い、大きな代償を支払った。

コンビニのセルフコーヒーでの量増しはよくあることで、故意や過失に関わらず問題だとされている。

元校長は窃盗容疑で書類送検されたが、不起訴となった。

しかし、県教育委員会は免職処分を下した。

一部からは処分が厳しすぎるとの意見も出ているが、窃盗行為が繰り返された場合は免職という過去の事例があるため、その判断が下された。

教師としての信頼を失った元校長は退職金も失い、影響が大きい状況となっている。

(要約)

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コンビニコーヒーのレギュラ―サイズ(右)とラージサイズ(左) 

 

「安い値段で多く飲め、悪いとは思いながらもやってしまった」。コンビニエンスストアのセルフコーヒーマシンで、レギュラーサイズの料金でラージサイズの分量を入れたとして1月、兵庫県高砂市立中の男性校長(60)が懲戒免職処分を受けた。定年まで1年あまり。「優しい先生」と慕われていた元校長は一杯70円の〝利益〟のために、数千万円という退職金や教員免許を失った。「厳しすぎるのではないか」との声もある今回の処分。元校長はなぜ、不正に手を染めてしまったのか。 

 

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■きっかけは「押し間違い」 

 

元校長が勤務先の中学からほど近いコンビニを訪れたのは、昨年12月21日の昼休み。県教育委員会などによると、元校長はコンビニでパンとコーヒーのレギュラーサイズ(110円)のカップを購入すると、店内の機械にセットし、ラージサイズ(180円)のボタンを押した。 

 

気づいた店員が、店を出て車に乗ろうとする元校長に声をかけると、不正を認めた。その後、この件以外にも同じ店で2回、ほかの店でも4回、同様の不正行為を繰り返していたことが判明した。 

 

きっかけは押し間違いだったという。元校長は「過去に誤ってラージボタンを押した際、コーヒーがカップからあふれずに入り、店員から指摘もなかったので、不正を繰り返すようになった」と説明している。 

 

■故意なら窃盗罪、自動認識する機械導入 

 

客は低料金でひきたてのコーヒーを楽しめ、店側も人員コストの削減につながるコンビニのセルフコーヒー。今や一般的になったシステムだが、故意や過失を問わず、量増しは後を絶たない。 

 

大手コンビニチェーンの関係者らによると、客がどのボタンを押したかは店員から分かるようになっているというが、「忙しいときなどは違うサイズのボタンが押されても気づかない。客の良心に頼る形になっている」。店側では、サイズやメニューを自動で認識する機械の導入も進めている。 

 

客から押し間違いが申告されることもあるというが、故意に多い量を入れた場合は窃盗罪にあたる。 

 

元校長も兵庫県警に窃盗容疑で書類送検された。その後、不起訴(起訴猶予)処分となったが、県教委は今年1月30日、懲戒免職処分とした。 

 

 

■「繰り返し窃盗行為をした場合は免職」 

 

令和3年4月から1年間、高砂市内の小学校の校長を務めた後、中学に赴任した元校長。中学の生徒からは「いつも元気にあいさつをしてくれ、授業もよく見に来てくれる優しい憧れの先生だった」「毎朝校門前で元気に声をかけてくれた。急にいなくなってさみしい」との声が聞かれる。 

 

本人も反省した様子で行為を悔やみ、差額分の金を持って被害店舗に謝罪に出向くなどしたというが、不正の代償は大きい。 

 

県教委によると、令和4年度の60歳定年退職者の平均退職金支給額は約2300万円。一般教員らも含まれており、元校長が順調に教員生活を終えていれば、同程度以上の退職金を受け取っていたとみられる。 

 

県教委には「厳しすぎるのではないか」との意見も寄せられているが、「繰り返し窃盗行為をした場合は免職」という過去の処分例を踏まえた判断という。 

 

スクール・コンプライアンスが専門の日本女子大の坂田仰教授は、子供たちに規範意識を教えて指導する立場にある教師で、さらに管理職であれば、ある程度の厳しい懲戒処分を受けるのは当然としつつ、今回は「極端に重すぎるのではないか」と指摘。「金銭的被害は軽微なのに対し、懲戒免職では教員免許も失効するし、さらに退職金の不支給となると、影響が極めて大きい」と話す。 

 

処分に不服がある場合、県人事委員会に請求するなどの措置も取ることができる。ただ、決定が覆る可能性は極めて低い。何より教え子たちを失望させたことは、取り返しがつかない過ちであることは間違いないだろう。(安田麻姫) 

 

 

 
 

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