( 145601 )  2024/03/04 14:32:18  
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北海道・ニセコでの物価高騰が話題で、多くの海外観光客が訪れる飲食店で高額な料金が設定されている。

しかし、現地住民は海外観光客のゴミ問題やマナーへの懸念を抱いている。

特に夜間の治安が悪くなったとの報告もある。

ニセコでは海外資本による投資やコンドミニアムの建設が進んでおり、地域全体がインフラ整備やビジネスの面で様々な課題に直面している。

(要約)

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盛り上がるニセコバブルの裏では… 

 

“ニセコバブル”とも称される北海道・ニセコでの物価高騰が話題になっている。冬のスキーシーズン中、多くの海外観光客が訪れる飲食店の看板には、「おにぎり1個1000円」、「天ぷらうどん2000円」などとある。ただ、現地住民はこうした値段設定よりも、海外観光客の出すゴミや素行の問題に頭を悩ませているようだ。盛り上がるニセコバブルの裏で何が起きているのか──。 

 

【ニセコ現地写真22枚】「チョリパン」1000円、「すしサーモンドッグ」1100円…、ニセコ価格で販売されるフード。一方で、路上にはたくさんのゴミが… 

 

 X(旧ツイッター)でニセコの情報発信を行なっている「もりりん」さんはニセコに住み始めて3年目。現地の状況についてこう話す。 

 

「最寄りの倶知安駅はごく普通の街並みなのですが、車を15分くらい走らせてニセコに入ると、雰囲気がガラッと変わります。お店の看板はほとんど英語だったり、歩いている人は全員外国人だったり。ほぼ海外という印象です。 

 

 また、飲食店が少なくて海外観光客の数に対応しきれないため、フードトラックがたくさん稼働している。半径1キロぐらいの中に60~70台くらいが密集しています。夜は海外観光客でごった返していて、ラーメン、牛丼、カツ丼、ピザ、うどん、そばなど、なんでも売られています。最近は、昔懐かしの石焼き芋の販売車も走り始めました。普通『いしや~きいも~』と音声がかかると思うんですけど、それを海外チックにアレンジさせた音を流しながら走っていました」 

 

 やはり、驚かされるのはそうした飲食業態の価格設定だ。もりりんさんが続ける。 

 

「値段はあり得ないほど高くて、僕が働いている日本食レストランでもラーメンは1900円くらいで売られています。ちなみに、石焼き芋の販売車の値段は見なかったんですが、フードトラックでは石焼き芋が1本1000円とかで売られていますよ。 

 

 でも、生活面では、物価の高さにはそんなに困っていません。バイトの時給も平均で大体1500円くらいですし、車を少し走らせれば、普通の価格帯で商品を売っているスーパーやコンビニ、飲食店がある。フードトラックで買うことはありませんから」 

 

 

 むしろ現地住民が頭を悩ませているのは、マナーや安全面の問題だという。 

 

「正直、物価よりもゴミ問題に注目してほしいです。海外は外でお酒が飲めない国が多いし、お酒の金額も日本は安いじゃないですか。なので、海外観光客はみんなコンビニでお酒買って、外で飲んで、その缶を道に捨てていく。道は空き缶だらけです。 

 

 それに加えて、治安も悪くなってきた印象があります。この前、僕の知り合いが深夜1時くらいにニセコの中心部を車で走っていて、酔っ払いがたむろしていた路地を抜けようと徐行しながら運転していたら、後ろからボンって車を蹴られたと言っていました。 

 

 日中、海外の観光客がそんなことをしているのはあまり見たことがないんですが、夜お酒を飲んで酔っ払っている人たちは思わず羽目を外しちゃうんでしょう。このままどうなっていくのか不安ですね」 

 

 國學院大學の観光まちづくり学部観光まちづくり学科の梅川智也教授は、ニセコの現状についてこう話す。 

 

「ニセコの物価高騰は人件費や燃料の高騰が原因だとよく報道されていますが、それ以外にも、海外の食事の価格設定を反映して値段を上げている面もあると考えられます。スキー場は短い冬のシーズン中に利益をあげなければいけないため、海外富裕層を相手に稼げる分だけ稼ごうとしているものと考えられます」 

 

 そもそも海外の富裕層相手の商売が成り立つのは、多くの海外投資家たちがパウダースノーで有名なニセコに注目し、よく訪れるようになったからだ。梅川教授が続ける。 

 

「世界の、特にアメリカのスキーリゾートビジネスはコンドミニアムの販売が主です。もともと日本のスキー場はリフト券収入が収益の大半を占めていたんですが、海外ではコンドミニアムをいかに売るかが勝負。コンドミニアムは、オーナーが使わない時に一般の方々に使わせる管理運営会社があって、そこにオーナーは管理を委託します。収益はオーナーと管理会社が半分に分ける仕組みとなっています。 

 

 ニセコのコンドミニアムに投資すると年10%ぐらいのリターンになるといわれており、海外投資家にとって悪い運用法ではない。自分がニセコに行く時は自分が使って、それ以外の時は人に貸すというスタイルがほとんどです。 

 

 純粋に旅行に来る富裕層だけでなく、投資家たちが自分の投資したコンドミニアムの様子を見るため、つまり自らの資産の状況確認のためにニセコに訪れるパターンもあります。そのような富裕層は食べ物の値段が多少高くても気にしません」 

 

 

 一見、国際リゾートとして大成功したようにみえるニセコだが、一方で大きな問題をいくつも抱えている。 

 

「国内のスキーリゾートであれほど海外資本に自由にやられてしまったエリアはないと思っています。例えば、昔からあったホテルやペンションが潰れ、狭い土地に大規模なコンドミニアを作っています。コンドミニアムが増えて車の出入りが増える一方、道路は拡張できず昔のままなので路上駐車が増え、交通渋滞も起きる。インフラ整備が追いつかない状態になっているのです。マスタープランがなかったことがその要因だと思います。 

 

 また、問題はインフラだけではありません。冬だけ海外から来て、税金も払わずに稼ぐだけ稼いで自国へ帰ってしまう業者も出てきているようです。スキーレンタルや、インストラクターなど、英語が話せない日本人にはなかなかできないビジネスです。本来は事業者登録をし、当然、税金も払ってやらなければならないことですが白タクのようにルールを守らない事業者もいると聞きます。 

 

 本来、地域にとって海外を含む多くの投資が入ることは素晴らしいことで、拒むことはないのですが、外国人や海外資本の受け入れに関しては様々な課題が発生することが懸念されます。共生社会を作るためには、地域独自のルールを作ったり、行政が条例を作ったりするなどして制度を整備、充実させていくことが、これからの課題になっていくでしょう。」(梅川氏) 

 

 ニセコのバブルの裏側で、大きな課題が浮き彫りになりつつあるようだ。 

 

 

 
 

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