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福島県双葉町で復興支援員をしている中国出身の郭航さんは、中国で学び、福島大学院で修士号を取得した後、日本に移住し、正しい情報を提供するために尽力している。

彼は処理水の海洋放出についての誤解を払拭し、中国語や英語で観光案内を行っている。

外国人観光客も増え、郭さんは自分の目で状況を確認し、情報を正しく伝えようと努力している。

(要約)

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キャンドルを作る双葉町復興支援員の郭さん(福島県双葉町で) 

 

 中国・遼寧省出身で、福島大大学院で学んだ郭●航(かくしこう)さん(26)が、昨年7月に福島県双葉町の復興支援員となり、外国人観光客らに福島復興の正しい情報を伝えようと尽力している。福島第一原発の処理水の海洋放出を巡っては、SNSなどで不確かな情報が国内外で広まっており、郭さんはインスタグラムなどでの発信にも取り組んでいる。(河野圭佑) 

 

【写真】「処理水は何も心配しなくていいと伝えたい」…台湾メディア、福島のPR動画撮影 

 

 郭さんは旧双葉駅舎にある案内所に常駐し、日本語のほか、中国語や英語で観光案内する。「訪れる人は中国や韓国、イギリスやオーストラリアなど様々です」。東日本大震災のときは中学生で、中国で塩の買い占めが起きた記憶が残る。大連の大学で日本語を学んで2018年に来日。新規就農者の移住・定住をテーマに大学院で修士号を取得した。 

 

東京電力福島第一原子力発電所 

 

 福島の農産物の風評被害などを学ぶ一方で、処理水のリスクについてはあまり深く考えていなかった。大学院修了後の昨年4月、資源エネルギー庁の担当者の講義を受け、「中国のメディアやSNSをスマホで見て、危険なのかもしれないと感じていた。私を含む多くの中国人は大変な誤解をしている」と意識した。 

 

 その後、「私にできることは何だろう」と考え、大学院の友人の紹介もあり、処理水放出を1か月後に控えた昨年7月、町の復興支援員に着任した。 

 

 双葉町は原発事故後、町のほぼ全域が帰還困難区域に指定された。現在は町全域の約15%が居住可能で、約100人が暮らしている。一方で、郭さんによると、外国人は多い日で1日約40人訪れる。「ネットの情報じゃなくて自分の目で見たい」と考える若い中国人も多いという。郭さんは「『核汚染水』という言葉を使う中国人には、より丁寧に説明している」と話す。町内の東日本大震災・原子力災害伝承館などを案内し、「処理水の本当のことがわかった」「印象が変わった」との反応があると、手応えを感じる。 

 

 同僚の復興支援員、加藤奈緒さん(25)は「翻訳アプリを使う文章でのやり取りだと、時間がかかり、正確に伝わっていたか不安だった。郭さんが来てからは、外国人の表情も明るく、安心して対応できている」という。 

 

 

 郭さんは4月以降、中国語で福島の復興を発信することを検討している。「中国内になかなか情報が届きにくい」との課題はあるが、「実際に来てもらって、処理水の安全性を知ってもらう。その人が身近な友人にまた話をする。地道だけど、こうやって広げるしかない」。2月末の週末には、震災13年に合わせて駅舎周りに追悼の火をともすキャンドルナイトの準備を、地元住民や観光客らと行った。 

 

 復興支援員は1年更新の任期制で、大学院修了の同級生と比べると給与や待遇は見劣りする。それでも郭さんは「家賃6万円で2LDKと、広々と一人暮らし。都会じゃできません」とはにかむ。情報発信をしながら、動画やチラシ作成の腕を磨くなど、あと数年は経験を積みたい考えだ。 

 

 

 
 

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