( 146081 )  2024/03/06 00:07:19  
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コンテナホテルが増えている理由は、立地、需要の捉え方、部屋の設備、価格帯などが影響している。

コンテナホテルはビジネスパーソンをメインターゲットに据え、ニーズに合わせた工夫(寝心地の良いベッド、部屋に電子レンジや空気清浄機)を取り入れており、立地は駅チカではなく郊外のロードサイドを選択している。

また、個室内の設備にこだわりつつ価格帯を設定し、地元の需要を取り込んでいる。

さらにコンテナホテルは災害時の避難所や仮設住宅としても活用されることから、自治体との災害協定を締結している。

今後は、国内外からの注目を浴びており、将来的には海外展開も視野に入れている。

(要約)

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コンテナホテルがじわじわ増えている理由は? 

 

 日本各地に、コンテナを並べたビジネスホテル「コンテナホテル」が続々と誕生している。2018年12月、栃木県に1号店をオープンした「HOTEL R9 The Yard(ホテル アールナイン ザ ヤード、以下:R9)」は、24年2月末時点で77店舗2696室まで拡大している。 

 

【画像】コンテナホテルの部屋を見る(全7枚) 

 

 使用しているのは建築用に開発された専用のコンテナモジュールで、ドアを開けると、ベッドやデスク、風呂、トイレが付いた住空間が広がる。 

 

 立地はいずれも郊外のロードサイドで、ほとんどのお客がクルマで訪れるという。開業当初こそ手探りだったが、出店を重ねるうちに需要をつかみ、スピーディーに拡大。今のところ閉店は一つもなく、近年は毎月2店舗ペースで出店している。 

 

 ブランド誕生から5年が経過した現在、稼働率は約80%(開業1年以上が経過した店舗のみの集計)、リピート率は約40%にのぼるという。 

 

 R9を運営するデベロップ社(千葉県市川市)の専務取締役 楠原誠二氏に、ビジネス戦略と展望を聞いた。 

 

 デベロップ社は、07年の創業以来、トランクルーム向けのコンテナ事業やエネルギー事業を拡大させてきた。その後、さらなる成長を目指して17年にホテル事業に参入。主力はコンテナホテルだが、リゾートホテルやカプセルホテルも運営する。 

 

 全国的に広がるR9は、1店舗につき40~50のコンテナが並び、一つひとつが独立した個室となる。各部屋のすぐそばには駐車場が設けられている。 

 

 縦にいくつも積むことが難しいコンテナをホテルとして展開するにあたり、「駅チカではなく郊外のロードサイドを立地に選んだ」と楠原氏は話す。 

 

 「駅チカのビジネスホテルなどは、縦に伸ばして100~150室を備えるところが多いのですが、R9はそういった仕様が難しく駅チカはコストに見合いません。そこで、40~50の部屋の需要はあるけれど取り残されている場所として、ロードサイドに展開することにしました」 

 

 立地を決めるにあたり、同社が主な指標としているのは、各自治体の全体の就業者数(そのエリアで働く人口)と飲食やホテルなどのサービス業に従事する就業者数のバランスだ。全体の従業員数に対して、サービス業の従業員数が同社の指標よりも少ない場合、ホテルが不足している可能性が高いという。 

 

 そういった地域のインターチェンジを軸として、工業団地などの産業集積地への導線を考えながら立地を選定しているそうだ。 

 

 

 R9が選ばれている理由は、立地だけではないようだ。出張で訪れるビジネスパーソンをメインターゲットに据えていることから、体を休めたいニーズを満たす工夫を多く取り入れ、それらが好評だという。 

 

 1人での利用者が多いが、部屋は全体の8割ほどがダブルルームで、残りをツインルームとしている。 

 

 寝心地を重視して、ベッドはラグジュアリーホテルでも多数導入されている「シモンズ製」を導入。「寝心地がいい」「寝返りが打ちやすい」と利用者に喜ばれているそうだ。 

 

 レストランや共有設備はないが、各部屋に電子レンジが設置されているので、コンビニなどで弁当を購入しても、すぐに食べられるようにしている。また、十分なサイズの冷蔵庫に空気清浄機もある。 

 

 各部屋が独立しているため、周囲の部屋の音が気になりづらいメリットも。さらに、フロント棟でチェックインした後に部屋に向かう際や外出する際に、エレベーターを使わずに移動できる点も利用者の満足度につながっているそうだ。 

 

 個室内の設備にこだわりつつも、価格帯はビジネスホテルの中央値よりもワンランク下の1人1室6200円~とし、お得感をもってもらえるようにしている。 

 

 R9の利用状況を見ると、立地によって多少事情が異なるが、ビジネス目的の利用者が大半を占め、平日はほとんどが1人で宿泊する。週末になると観光目的のカップルや夫婦、家族など2人以上で泊まる人が増えるという。 

 

 コンテナホテルを運営してみて、意外なニーズも見えてきている。 

 

 「思っていた以上に、地元の方が宿泊するケースが多いです。飲み会の後にクルマを置いて宿泊する、ゴルフに行く前日に宿泊するなど」 

 

 例えば、鹿児島県伊佐市の店舗は隣町が栄えているため、それほど需要はないと考えていたが、地元民を含め利用者が多く、部屋数を増やしたそうだ。また、周囲に工場が多い三重県いなべ市の店舗も期待以上のニーズがあり、オープン直後に満室に。増室して対応すると、そのうち周囲に飲食店ができ始めたという。 

 

 「地方のホテルにおいては、宿泊者の約3割が地元の方だという統計があります。これまではホテルがなかったので、泊まりたくても泊まれない人が多かったのだろうと。その需要が取り込めていると思います」 

 

 

 R9の強みは、他にもある。「移動しやすい」というコンテナの利点を生かして、災害時の避難所や仮設住宅、診察室としても活躍するという。これが全国の自治体から注目され、24年2月末時点で135の自治体と災害協定を締結している。 

 

 さかのぼると、11年の東日本大震災の際に、デベロップ社は自社コンテナを使って仮設住宅とホテルを建設した歴史がある。その出来事がきっかけで、同社の岡村健史社長は、ホテル事業への進出を本格的に考え始めたそうだ。 

 

 その後、さまざまな試行錯誤があり、17年に国内初のコンテナ型モジュールによるホテルとして、「Casual Resort COFF Ichinomiya(カジュアルリゾートコフイチノミヤ)」を開業。翌18年に「HOTEL R9 The Yard」のブランドで、本格的にコンテナホテル事業を開始した。 

 

 展望を尋ねると、24年は月2店舗ペースでの開業を予定しており、30年まで同様のペースで出店したいという。順調にいけば、30年までに約270店舗に拡大する見込みだ。 

 

 国内のみならず海外からも注目されており、台湾やタイなどアジアでの展開も検討しているとか。コンテナの可能性は、どこまで広がるのか。 

 

(小林香織) 

 

ITmedia ビジネスオンライン 

 

 

 
 

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